ライブレポート

ビバラコーリング!名古屋編【ライブレポート】

〈ライター柴山順次が見た、初日名古屋編。コロナに負けたからこそコロナを超えた、この日だけの「4組」によるライブドキュメンタリー 〉

ビバラ コーリング!名古屋編
1/9(Sun)名古屋CLUB QUATTRO
小林私 / 日食なつこ / 黒子首(キャンセル)/ 片桐(Hakubi)

だから言ったでしょ。音楽・イズ・ノットデッドなんですよ。新型コロナウィルス感染症とかいつまで新型とか言ってるんだよ。この2年間、コロナウィルスが偉そうにふんぞり返っている間に、音楽は、ライブハウスは随分前に進んだぞ。「あの頃に戻りたい」「あの頃はよかった」なんてもう全然思っていない。そりゃライブハウスを取り巻く環境は大きく変わったし、良くない方向にBボタン押しっぱなしで全速力もしたけれど、だけど、もう前に戻りたいなんて思わない。考えてもみて欲しい。こんなことにでもならなかったらVIVA LA ROCKとTOKYO CALLINGがドッキングすることなんてなかったでしょ。「ビバラ コーリング!」という悟空とベジータで「ゴジータ」みたいなネーミングにワクワクすることだってなかったでしょ。この2年間で確実に前に進んでいるんですよ、アーティストもライブハウスもオーディエンスも。言葉は多少汚くなりますが、あれからずっと思ってますよ、。なめんなよコロナウィルスって。いつまで言ってるのって思うかもしれないけれど、いつまでだって言うよ。

VIVA LA ROCKが、TOKYO CALLINGが、僕ら音楽ファンが、願うのはライブハウスシーンの再建と活性化。そんな思いから始まったビバラ コーリング!ツアー初日名古屋。しかし開催前日に届いたのは黒子首の出演キャンセルの報だった。まただ、またコロナウィルスだ。バールのようなもので頭をぶん殴られたような感触。いつまで僕らは姿の見えない敵と戦い続けなきゃいけないのだ。そんなことを思っていると今回のビバラ コーリング!の責任者である鹿野淳がステージに現れ口を開いた。語られたのは黒子首のキャンセル、そして名古屋公演には出演の予定がなかった片桐(Hakubi)の緊急出演。「結果的に今日は、今日だけは4組揃いました」と語る鹿野氏の言葉の意味はライブが進む度に説得力を増していった。

片桐(Hakubi)

1組目は緊急参戦となったHakubiより片桐のソロ。

当日、たまたま名古屋で別の仕事をしていたということで、そのままライブに駆けつけて急遽歌うことになるなんて、彼女が登場したときの救世主感はとんでもなかった。そしてこの日、たまたま名古屋にいるなんて、偶然なのか必然なのか、はたまた運命なのか。

急なことだったので小林私のギターを借りステージに現れた片桐がまず披露したのは「大人になって気づいたこと」だった。大人になって随分経つけれど、大人になって気づいたことはいいことの方が少なかった気がする。だけど大人になったから気づけたことだってある。ありもしない「自分らしさ」とかありもしない「正しい選択」とか、そんな幻のイメージを僕らは音楽で掻き消すことが出来る。そんな大いなる勘違いを信じさせてくれるのが音楽だって気づけたのは大人になったからだと思っている。「見渡す限りに光は見えない」とこの曲で歌ってはいるけれど、ピンチヒッターで駆け付けた片桐の歌う姿なんて僕から見たら光そのものだった。

急遽駆け付けたにも関わらず片桐は黒子首の「Champon」のカバーも披露した。淀んで黄ばんだ世界に対してあっかんべーする「Champon」はまさにこの日の状況を予想して掘胃あげは(黒子首)が描いたかのように聴こえる。「優しい歌を」とオーディエンスに告げ歌った「Sommeil」の包容力と力強さには息を飲んだ。「もう大丈夫」というラストのメッセージは黒子首にしっかり届いたはず。短い時間でしっかりとその役目を果たした片桐に会場からは大きな拍手が送られたのは言うまでもない。

小林私

空気を一変させたのは小林私。いや、一変どころか、ちゃぶ台をひっくり返した空気感にしてくれた。

登場するや情報量多めのMCをして「笑って透明人間」「光を投げれば」と立て続けに披露。楽曲とMCのギャップに目が点となるが、セオリーなんて一切無視したライブ展開に早くも虜になっている自分がいる。楽曲とは関係ないことを縦横無尽に節操なく話すもんだから何を言ってるか本当に分からないけれど、急いで記録したメモには「スマブラ」「矢場とん」「こばやしゆきお」と書いてあったことだけ記しておく。

そんな調子で喋りまくっているのに曲が始まるとその世界観に没頭というか、何かが憑依するかのように入り込むのが凄い。冷めた気持ちを温め直すことがどれだけ難しいか思い知らされる「スープが冷めても」に共感しまくり、場末のスナック感満載の「HEALTHY」に痺れているところにまたもやマシンガントーク突入。ここでのメモには「ウィンカー」「お弁当」「パルコで人生が完結する」「雪でスリップ」と書いてある。深くは追求しないことにするが怪我無く名古屋に来れて良かった。ようこそ名古屋へ。

先ほどHakubi片桐にギターを貸したことで「チューニングが狂ってる」と吹っ掛ける小林私。笑いのためなら対バンに牙を剥くことだってなんのそのだ。だけどそんな彼にも人を想う気持ちがちゃんとある。ライブ後半では片桐に続き黒子首の「Champon」をカバー。何も言わないでさらっとやればかっこいいのに曲の前にちゃんぽんの話を沢山するもんだから何となく気づいてしまったけど、それでも小林私の「Champon」は片桐のカバーとはまた違った小林私節も織り交ぜた素晴らしいものだった。

ラストはアニメ「トリコ」の話でオーディエンスを見事に突き放したところで「生活」でフィニッシュ。僕にとって生活の一部に在り切っても切り離せない存在を考えたときに真っ先に浮かぶのがライブハウスだ。ライブハウスで音を鳴らすことすら許されなかった時期を仕方ないなんて言葉ではとても片づけられなくて、目の前で歌っている小林私を見つめながらあの時期のことを考えていた。ビバラ コーリング!の掲げるライブハウスシーンの再建と活性化は今日も全国各地のライブハウスから始まっている。喋らなかったら100点だけど喋ったら喋ったでちゃんと120点を叩き出す小林私のライブ、しっかり堪能させてもらった。

日食なつこ

ラストは日食なつこ。ビバラ コーリング!出演の4組は全員見事にバラバラな個性を放つ所謂スタイルウォーズ的なイベントだ。その中で自分のキャラクターと自分の音楽と自分の世界観を最初から最後まで惜しみなく出し切った100パーセント日食なつこなライブを見せつけた彼女にオーディエンスも釘付け。この日はドラムにkomakiを迎えたピアノ+ドラムのセットで演奏した日食なつこ。1曲1曲がミュージカルのようでその物語にすっと引き込まれてしまう。

もうずっと大停電みたいな日が続いているけれど、そこで何を考え何をするかだと思う。「大停電」のピアノが鳴らすチャイムの音階は何かの合図に聴こえた。このままじゃ駄目だよね、やっぱり。だからビバラ コーリング!が生まれたんだよね。握った拳に力が入る。黒子首に生霊を飛ばしつつ「今日は4組揃った」と語る日食。もう本当にその言葉通り、彼女もまた黒子首の「Champon」のカバーを披露した。これが3組とも偶然だったのが本当にグッとくる。鹿野氏はこれを「Champonトリビュート」と呼んでいたが、最高のちゃんぽん、ご馳走様でしたの気持ちでいっぱいだ。

きっと黒子首のファンも来ているこの日のライブに対し日食は「アーティストをステージに立たせてくれているのはあなた」と語っていた。音楽にはきっと本当に魔法があって、それがきっと3回のどんかぶりChamponを生んだし、音楽を通したアーティストとオーディエンスのコミュニケーションだってライブハウスの魔法によるものだと思っている。この2年間ずっと思っているけれど、やっぱり音楽を止めちゃいけないと思う。止めてしまったら奴らの思う壺だ。もう不幸を数えるんじゃなくて幸せを寄せ集めようと語り披露した「音楽のすゝめ」で改めて音楽を、命を絶やしてはいけないと確信した。「音楽のすゝめ」則ち「音楽よ進め」だ。音楽を、夢を、希望を、なんて書くと薄っぺらく聞こえるかもしれないけれど、そういった光のようなものを、後先もなくかき集めたい。ライブハウスで。

TALK SESSION

終焉後に行われた鹿野氏と出演者によるトークセッションでは口を揃えるようにみんな言っていたし、スタッフも、オーディエンスもみんな同じことを思っていたと思うが、新型コロナウィルスの影響により出演を断念せざるを得なかった黒子首はHakubi片桐のステージにも、小林私のステージにも、日食なつこのステージにも確実に居たと思う。これは別にスピリチュアルな話でもなんでもなく、しっかり存在を感じることが出来たのだ。ビバラ コーリング!は各箇所3組ずつの出演のため、様々な偶然が重なり結果的に4組が揃ったのはツアー初日である名古屋だけなのだ。これを音楽の、ライブハウスの魔法といわず何という?ツアー初日から起きた奇跡に期待は高まるばかりだ。さあ、バトンは大阪梅田編へ。こうやっていつまでもライブハウスで起きることにワクワクしたい。

text by 柴山順次
photo by ながいたかゆき(twitter : @n_takayuki1219)

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