ライブレポート

ビバラコーリング!大阪編 【ライブレポート】

ビバラ コーリング!大阪編
2/4(Fri)梅田CLUB QUATTRO
日食なつこ / 黒子首 / Hakubi

せーの!なめんなコロナウィルス!

「いきなりなに?ライブレポートを読みに来たんだけど?」って方、ごめんなさい。でも、でもね、ずっとずっと思っていたのに声に出すのどうなのって風潮に掻き消されていた思いを、マスク越しかもしれないけど、声は出せないかもしれないけど、今こそ強い気持ちで叫ぶときな気がしているんです、ライブハウスから。だからってわけじゃないけれど、この日、梅田CLUB QUATTROに集まった愛すべきミュージックラバーたちを観ていたら「ビバラコーリング!」って名前がイベントのタイトルじゃなくコードネームというか作戦名というか、前に進むための合言葉に思えてきちゃって、そしたらみんな仲間じゃんって思えてしまったんですよね。

あ、でも、違うんです。「音楽でひとつになろう」とか「隣の人と肩を組もう」とかそういうことが言いたいんじゃないんですよ。誰一人置いていかないのがライブハウスだって言うのならば、ひとつになれない人だって尊重したいから。そうじゃなくて、今この状況下でライブハウスに足を運ぶ選択をしたひとりひとりの、いや、来ない選択をした人も含めて、ビバラコーリング!の名のもとに集まった沢山の人のひとりひとりの気持ちをその表情から読み取ろうと会場をウロウロしていたら、これはもう仲間以外の何者でもないなって思ってしまったんです。勝手に。

出演者もお客さんも関係ない。同じ時代に生きて、音楽が好きで、ライブが好きで、同じ場所に集まってるんだもん。そんな僕たちが音楽を以って前に進むために動いてくれたのがVIVA LA ROCKとTOKYO CALLING。1月9日の名古屋公演に続き、僕たちの3日間戦争2日目となる大阪公演が梅田CLUB QUATTROにて開催されたのだ。

日食なつこ

最初にステージに登場したのは日食なつこ。名古屋公演に続き、この日もkomakiをドラムに迎えたピアノ+ドラムのツーピースでの演奏だ。

ビバラコーリング!でライブを観るまで日食なつこをパブリックイメージとしてもっと無機質なアーティストだと思っていた。それは何処かストーリーテラー的な要素のある楽曲展開から感じていたことでもあるのだが、いやいや滅茶苦茶体育会系的パッションを秘めていることをツアー2本目にして実感する。「名古屋公演に出演した小林私さんも含めた4組で」と何度も口にしていた日食がこのツアーで芽生えた感情こそコードネーム・ビバラコーリング!を体現しているような気がした。

小躍りするようなピアノの上でロックンロールの持つ得体の知れないパワーを叩きつける「水流のロック」からライブはスタート。逃げるんじゃなく身を捩って前に進むことが今の僕らには大事なんだよな。そんなとき、ロックンロールは滅茶苦茶力を貸してくれることを力いっぱい歌ってくれる日食に背中が真っ赤になるほど叩かれる。

そんな気持ちも束の間、「99鬼夜行」を「何故百鬼じゃないんだろう」って考えながらライブを観ていたら最後のひとりが自分なんじゃないかって思い鳥肌が立ってしまった。いつの間にか世界に引きずり込まれているのも日食なつこのライブの中毒性のひとつだ。

大阪公演直前にまたもやコロナウィルスの感染拡大のニュースが世間を騒がしていた。だからこそ「大停電」で日食が歌う「大停電の夜にこのままじゃダメだと知ったんだ」という言葉が刺さる。前に進まなきゃ。溜め込んだ知識が腐る前に、チャイムが鳴ったらよーいドンだ。行進曲「ワールドマーチ」でも前に進むことを意識させる一説があった。ライブハウスでは今、身動きすら取り難いけれど気持ちだけは行進していたいし、そうやってライブハウスを更新していきたい。「数えたくないものが増える中、音楽を数えてくれてありがとう」と語り披露した「LAO」も「愛すべき音楽馬鹿に」と告げ歌った「音楽のすゝめ」もコードネームを共有するオーディエンスたちに向けた日食の大きな愛を感じずにいられなかった。

夢を見ること。だけど現実もしっかり見ること。その上で、その上で夢を後先もなくかき集めること。それってライブハウスで起きてることだよなって「音楽のすゝめ」をライブハウスで観る度に思うけど、このツアーでより強くそう思うようになった。「また馬鹿な僕らで会おうぜ」なんてかっこよすぎるよ、日食なつこ。ラスト「ログマロープ」に突入する直前に「Hakubi、黒子首、あとは頼んだぞ!」と叫んだ瞬間の心の揺れ方は僕のボキャブラリー全部使っても「ぶわっ!」って言葉が一番適切な気がする。「じゃあね!」と言い放ちステージを後にする姿まで込み込みで日食なつこ、完璧過ぎた。

黒子首

2組目は黒子首。雪辱を晴らすべく気合い充分の彼ら、それもそのはず、先月の名古屋公演では新型コロナウィルスの影響によりライブをキャンセルせざるを得なかったのだ。しかしその結果生まれたのが小林私、日食なつこ、そして急遽参加したHakubi片桐による「Champon」のカヴァーだった。これを鹿野氏は「Champonトリビュート」と呼んでいたがこの出来事もビバラコーリング!の絆を強固なものにした要因のひとつであることは火を見るより明らかだ。

堀胃あげはの意思が宿ったかのような優しくも力強いアコースティックギターにバンドインした瞬間の世界の広がり方がなんとも素晴らしい「エンドレスロール」からライブが始まるとさっきまでとは全く違う空間に誘われたような感覚を覚える。悲しみの向こう側にある真実の愛を真っ直ぐ前だけを見つめて歌う堀胃あげはの表情に最初に感じた力強さを感じる。

しかし、しかしだ。「エンドレスロール」の余韻に浸る間もなくドラムの田中そい光が突然エフェクトかけまくりの声で「楽しんでるかーい!」と叫ぶもんだから、いっせーのーせでひっくり返される。きっと彼には怖いものなんて何ひとつないんだろう。だけどそんな田中そい光の、いや黒子首の、遊び心やバンドとしての在り方に「チーム子ども」を聴きながら気付かされた。やっぱりライブを観ないと分からないことが沢山あるな。黒子首、まだまだ掘り甲斐滅茶苦茶あるぞ。

ライブを観るまではクールなイメージがあったけど「時間を溶かしてお願いダーリン」なんてキュートなネオアコソングだし視界がパッと広がるような「magnet gum」もライブを華やかにしていて黒子首のポテンシャルの高さを感じる。みとのベースがうねる「Driver」には自然と身体が反応してしまう。80年代っぽさをまとった堀胃あげはの歌も素晴らしい。ディスコナンバーをロックバンドにこの手法で落とし込む黒子首、どれだけ引き出しがあるんだ。

呼吸をするのも忘れるほど夢中になったのは「胎の蟲」だ。なんだこの曲。リズムと言葉遊びも凄いし、何とも形容しがたい怖さもあるし、なんだこの曲。「胎の蟲」をもう一度聴く為だけにライブに行きたい。カウベルもワウも場末のスナック感も、全部不思議。もう一回言っていい?なんだこの曲。

そしてここでビバラコーリング!のある意味課題曲ともいえる「Champon」を披露。「倒れたことで何を言われても仕方ないと思っていたけど許すどころか愛を与えてもらった」「イベント自体がかっこいいイベントに初めて出会った」と語り最後は「静かな唄」。黒子首が歩む道は未完の物語だからこそライブハウスで歌い続けるんだろう。その物語をずっと追っていきたい。そう強く思わせるライブだった。

Hakubi

トリを飾ったのはHakubi。偶然なのか必然なのか、出演予定のなかった名古屋公演でも片桐がピンチヒッターとして参加したことでストーリーがしっかりと出来上がった彼らがどんなライブをビバラコーリング!で見せてくれるかと期待に胸を膨らませていたが、その期待をとんでもない熱量で上回ってきたもんだから驚く。

「最高の1日を作ります」と宣言して「光芒」を歌い上げる片桐。僕たちが思い描いた未来ってどんなんだっけ?こんなんだっけ?どうやったら強くなれるんだろう。分からないけど、分からないけれど、「いつかは」って世界に中指を立てる僕たちの指針になるのがHakubiなのかもしれない。

「選んだ道をただ進んでゆけ 生きてゆけ」と歌う片桐の目に迷いは一切感じなかった。「悲しい事ばかり起きるけど目を合わせることを忘れずにいたい」「何が正しくて何が正しくないかじゃなく、私たちには音楽があって、誰にもその権利を邪魔も否定もされたくない」と今この状況下でライブをすることであったり、ライブに来ることに対する気持ちを吐露する片桐。その思いは「サーチライト」からも「在る日々」からも溢れかえっていて、彼らの思いが強くリンクした音楽の純度に魂が震えるのが分かる。

「サーチライト」で片桐が歌うように、いつからこんなに悲観的になってしまったんだろう。寝る前に毎日思う。「何も出来ず今日も終わる」って。そんなことを考えながらライブを観ていると曲の最後に片桐が「夜が明ける」「見つけ出して」と連呼する。そうか、夜が明けるんじゃなくて、夜を明けることが大切なのか。その為に僕たちは何かを見つけ出しにライブハウスに来てるんじゃないか。そうやって一歩ずつ歩き出すことを「アカツキ」でも後押ししてくれる。「私たちは、ライブハウスで生きてる。生きてるぞ!」と叫ぶ片桐。一斉に挙がる拳。ライブハウスに希望が射したように感じた。

コロナウィルス感染拡大により毎日のようにイベントキャンセルのニュースが届く。ライブハウスを取り巻く環境も依然として厳しい状況が続く。「誰も悪くない。誰かが謝っている姿を見たくない。愛のある人たちが否定されるのが嫌だ」と叫び「毎日が愛に溢れますように」と希望を込めて歌った「悲しいほどに毎日は」でライブは終了。状況を打破するためのコードネーム・ビバラコーリング!におけるHakubiなりの戦い方を見せつける圧巻のライブだった。

1月の名古屋公演時より新型コロナウィルスによる感染状況は酷くなっているように感じる。もう何回も言われた。言われ続けた。「そんなときに音楽?」と。だからこそ言いたい。根性論じゃなくて、感情論じゃなくて、だけど、だからこそ、そんなときの音楽だ。僕たちは疲弊している。「みんな」って言葉は凄く曖昧で抽象的だから使いたくないけど、みんな疲れているのは顔を見たら一目瞭然だ。

でも僕たちには音楽がある。なんでこの状況下でビバラコーリング!なんて言ってツアーを回っているかって、VIVA LA ROCKもTOKYO CALLINGも出演者も、集まったみんなも、音楽に突き動かさたときの自分の力を信じているからでしょ。もうはっきり言うけどコロナ以前のようには完全に戻れるとは思っていない。戻れるわけない。起きたことをひとつだって無しにはしたくない。だったらもう全部忘れないように全部抱えて前に進むしかない。大停電の夜を越えて、あっかんべーで淀んだ世界と手を繋いで、例え何も変わらなかったとしても立ち止まらないように前に進むのだ。もう分かってるでしょ。コードネームはビバラコーリング!。

僕たちの大作戦は2月10日、東京に続く。

text by 柴山順次
photo by ハヤシマコ

関連記事

ONLINE SHOP