ライブレポート

THE NOVEMBERS【ライブレポート】

THE NOVEMBERS
2022年5月19日 名古屋クラブクアトロ
Tour2022–歓喜天-

text by 柴山順次
photo by タカギユウスケ

約3年ぶりとなる全国ツアー「Tour2022–歓喜天-」真っ最中のTHE NOVEMBERS、名古屋はクラブクアトロ公演に足を運んだ。ツアータイトルに歓喜天と名付けられているようにオルタナティブとエレクトロが抱擁した今のTHE NOVEMBERSはまさに双身像のよう。よくライブを「1本の映画」と例えることがあるがライブの流れを含め、物語が進んでいくような時間の流れは、丁寧かつ大胆にひとつのストーリーを作り上げている印象を受けた。なんせ流れが完璧なのだ。THE NOVEMBERSの作り出す霧のかかったような世界に身を任せリズムに合わせ音楽を楽しむ。この体感こそ体験だ。ループするリフに優しいノイズが混ざることで会場に天使たちの姿が見えるような感覚の中、静かにライブはスタート。いや静かといってもそこで鳴っているのは轟音であったり、空間を彩るようなギターのエフェクトに踊らされたり、静かに燃えるものが確かにあって、耳に入る音や目に飛び込んでくるものが世界に色を着けていく感覚。なぜ僕らはライブハウスに足を運び音楽を聴くのか。それは音楽という美しいものに僕らがどっぷり魅了されていて、これまで何度も救われてきたからだ。

音楽を聴きながら自分を重ねることはよくあると思うけれど、THE NOVEMBERSのライブを観ていると過去の自分や過去の自分と関わった人が顔を覗かせることがよくあって、逆に言えばもうそこでしか会えない人もいて、そういう人に脳内で会えるのも僕がTHE NOVEMBERSの音楽を必要としている要素のひとつだったりもする。それはTHE NOVEMBERSの音楽が心のずっと奥の方まで届いている証拠だと思っていて、言葉に、音に、掻き立てられた想像が色んな絵を見せてくれるのだ。コロナ以降、足踏みすることも多いけれど、それでもまだ好きなものに夢中でいたいし会いたい人に会いたい。そう思わせてくれるのも音楽が、ライブハウスがそこに在るから。命で命を燃やすような音楽をTHE NOVEMBERSが奏でているから。その美しい旋律と歪んだ音と大地のリズムが命の鼓動に聴こえるから。そうやって繋いできたライブの展開として小林祐介がハンドマイクで歌う中盤からの流れも素晴らしかった。表現をアップデートし続けるTHE NOVEMBERSの音楽欲求には感銘を受ける。ギターを置くことでシンガーとしての魅力が倍増した小林祐介がエレクトロの中でシャウトする姿はまるでアリーナクラスのステージで歌っている姿に見えるから不思議だ。

ダンスミュージックの要素を取り込んだことでバンドが確実に新しいフェーズに突入したことはこの数年のTHE NOVEMBERSから感じていたが実際にライブで体感すると想像以上にフィジカルなものだった。それはバンドだけじゃなく観客も含めてだ。物凄く抽象的な言い方になってしまうけれど、例えば狩りをするのに歌を歌うことや雨乞いの為に歌を歌うことに近い感覚をTHE NOVEMBERSのライブから感じたのだ。民族音楽であったりヒーリングミュージックであったり本当の意味で生活と密着した音楽をTHE NOVEMBERSの楽曲に落とし込むことで魂ごと踊らせる音楽に昇華している感じ。もはやライブでありレイブである。

後半はダークな世界観でありながらバンドがその感覚を全開放してライブハウスを爆音で震わせる。それに応えるように観客も全身で音楽を受け止める。ステージの上ではバンドが、フロアでは観客がそれぞれの表現で音楽を体感する。音楽を以って生きていることはそれだけで表現なのだ。その表現を確かめ合うようなライブをTHE NOVEMBERSのライブで実感させられた。そんな中、ラストには言葉のひとつひとつが心に染みわたるような新曲を披露。まるでライブのエンドロールかのようなその楽曲に今日のライブが走馬灯のように浮かぶ。きっとまだまだTHE NOVEMBERSは進化する。その進化に身を委ねて音楽に溺れたい。音楽で世界が変わるその瞬間に立ち会いたい。ツアーは7月11日のZepp Hanedaまで続く。そしてその先もきっと音楽を突き進めていくTHE NOVEMBERSをこれからもずっと観ていたい。

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