ライブレポート

THE BOOGIE JACK 「新栄町、涙腺衝動」11月6日 新栄APOLLO BASE【ライブレポート】

THE BOOGIE JACK
新栄町、涙腺衝動
2021年11月6日 新栄APOLLO BASE

昨年2020年、結成20周年イヤーだったTHE BOOGIE JACKは様々な計画をしていた。アルバム『銀河台ディスカバー』を引っ提げ全国各地に訪れるはずだったツアーには「DIAMOND STORY」というタイトルが付けられており、11月に開催予定だったツアーファイナルは活動再開以降のTHE BOOGIE JACKが「この日のために」と続けてきたNAGOYA ROCK METEO 2020をダイアモンドホールで行うことも決まっていた。その日のNAGOYA ROCK METEOには副題として「希望の大合唱」という言葉も並んでいた。しかし2020年、新型コロナウィルスの影響で全ての予定が白紙となってしまった。結成20周年を盛大に祝う予定だったTHE BOOGIE JACKにとってひとつひとつの決断が重くのしかかったのは火を見るより明らかだ。そして先の見えないまま2021年突入。混沌とした世の中で悲鳴をあげるライブハウス、音楽シーン。その中で「何も出来ない」と頭を抱えるTHE BOOGIE JACKヒライシュンタ。もうはっきり書くが、本当にギリギリのラインを超えそうだったことを知っている。2020年11月に新栄RAD SEVENで開催された無観客配信ライブ「THE BOOGIE JACK is HOPE」、2021年8月に四日市CLUB CHAOSで開催された無観客配信ライブ「CUSTOM」と2本のライブはあったものの、有観客でのライブは完全に途絶えてしまった彼ら。THE BOOGIE JACKはその間に水面下では何度もバンド存続の危機を迎えていたという。バンドのフロントマンであるヒライシュンタもSNSの更新を止め、THE BOOGIE JACKとしての発信はほぼ無くなってしまった。そんなとき、彼らに届いたのがTHE BOOGIE JACKのホームともいえるライブハウス、新栄APOLLO BASEの閉店だった。この知らせにヒライシュンタは頭を殴られたような衝撃を受けたという。動かないと終わってしまう。このまま終わらせてなるものか。すぐさまAPOLLO BASE野口氏にコンタクトを取ったヒライシュンタ。そして実現したのが、実に1年9ヵ月振りの有観客ライブ「新栄町、涙腺衝動」だ。

「新栄町、涙腺衝動」というタイトルはそのままTHE BOOGIE JACKとAPOLLO BASEを表しているような気がする。涙腺衝動とはTHE BOOGIE JACKが2002年にリリースしたデビューアルバム『ナミダ流星群』のCDの帯に書かれていた言葉だ。18歳だった彼らが胸を躍らせ新栄の町で、新栄のライブハウスで歌っていた日々は、活動を止めたあの日も、再始動したあの日も、メンバーが去ったあの日も、メンバーが加わったあの日も、全部が全部今に繋がっていて、順風満帆とは言えないかもしれないがそれでも目の前だけを見ようともがいてきたTHE BOOGIE JACKの軌跡となっている。舞台はいつだって、ぐるっと回って新栄町だった。消えそうになっていた彼らの火に着火剤を投げ込んだAPOLLO BASEの閉店。そのステージに立ったTHE BOOGIE JACKの魂のライブ。歌え歌え歌え。鳴らせ鳴らせ鳴らせ。ヒライシュンタが静かに歌い始める。新栄の町がTHE BOOGIE JACKに魂を吹き込むようにライブが始まった。ライブは「プラネットホーム」でスタート。「宝人」「君ヘカケル」「背中並木の君」と当時APOLLO THEATER(現APOLLO BASE)で何度も歌ってきた同級生のような楽曲で畳みかける。閉店が決まっているAPOLLO BASEで観る「永遠ギミック」や「あなたの鼓動が止まらぬように」と歌う「片隅の唄」は胸に刺さるものがあったし活動再開後のTHE BOOGIE JACKをAPOLLO BASEに観てもらうように披露した「Discover!!」や「彼方のラブソング」も彼らが彼らなりに前に進んでいることを感じることが出来た。「コスミックツイスト」のようなレア曲が聴けたのもAPOLLO BASEでのワンマンという特別な日だったからだと思う。ハイライトのひとつでもあった「生きてこそ」では何度もライブで聴いてきたはずなのに今この瞬間のヒライシュンタの気持ちがそのまま歌になっているように感じた。「僕らはこの一瞬の足音が響くように 生きているだろう 年をとるだろう 今ここに残れと日付踏みながら」とAPOLLO BASEのフロアを真っ直ぐ見つめて歌うヒライシュンタの表情は、しっかりとAPOLLO BASEに刻まれただろう。

「涙のドーナツ」「ライフワゴン」と休止前のナンバーが続き、ここで活動再開後のTHE BOOGIE JACKを象徴する代表曲「STARRY ROAD」を披露。「君との最果てが朝も来ない荒野でも一緒がいいなってそんなこと思ってるんだよ」という丸裸な言葉も今夜はAPOLLO BASEに歌っているように聞こえる。THE BOOGIE JACKがAPOLLO THEATERで活動していた頃、彼らは当時のシーンごと「青春パンク」と呼ばれていた。あの頃そう呼ばれていたバンドたちはその言葉を嫌っていた印象もある。しかし時が経ち、青春時代を過ぎた今、THE BOOGIE JACKが青春に向き合って歌う「MaroonRed」は青春が目の前にあることを大きな声で叫んでいる。APOLLO THEATERやAPOLLO BASEが青春時代を象徴するライブハウスかもしれないけど、2021年現在目の目で青春が走り続けていることを「MaroonRed」で叩きつけられる。生涯青春宣言ともとれるメッセージが込められた「MaroonRed」を純度100パーセントで歌うには純度100パーセントのTHE BOOGIE JACKでなければならない。そう思うとコロナ以降のTHE BOOGIE JACKはやはりライブが出来る状態ではなかったのかもしれない。じゃあ誰がTHE BOOGIE JACKを動かしたかって、もうそれは絶対的にAPOLLO BASEだ。「朝焼け」で歌う「目を閉じた僕に永遠に消えない火をつけた」とは紛れもなくAPOLLO BASEのことだし「オーイエイ」で歌う「ありがとう」の対象だってきっとAPOLLO BASEだ。そんなAPOLLO BASEのことを、そこで鳴った音楽のことを歌った本編ラストの「新栄町」がAPOLLO BASEに鳴り響く光景、目撃した人は絶対に忘れないことだろう。

この日ヒライシュンタはMCで涙した。APOLLO BASEを想って、ライブハウスを守れなかった(守れなかったわけではないと思う)自分に対して、ステージの上で涙した。ライブハウスの最前線で歌い続けてきた彼らも年を重ね環境も状況も変わり昔のような活動は出来なくなった。それはバンドと一緒に年月を重ねてきたお客さんも一緒でライブハウスに来ることが日常だったあの頃と比べ足を運ぶことが特別になっているかもしれない。でも、だから、特別な日をTHE BOOGIE JACKは作り続けてきたし、それが年に1回だって、数年空いたって、そういう場をライブハウスとTHE BOOGIE JACKが作っていることはこの日集まった全員が分かっているはずだ。アンコールが「Start Up!!」で始まったことだって「まだまだここから!」という気合いを感じたし「クレーターストーリー」を聴く度にTHE BOOGIE JACKは無敵だって思うし、ラストの「終列車」だってまた会うための約束だ。APOLLO BASEの閉店が決まったことが再び動き出したTHE BOOGIE JACK。彼らはまだやり残したことがある。そう、名古屋大合唱だ。2022年3月26日、新栄APOLLO BASSE、名古屋大合唱。ついに、やっと、本当に開催される。しかもAPOLLO BASEの閉店1日前。最後の最後までケツを蹴り上げられた彼ら。やっぱりTHE BOOGIE JACKはバカ野郎だ。

text by 柴山順次
photo by TERU

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