ライブレポート

pinfu【TOKYO CALLING 2021】【ライブレポート】

TOKYO CALLING 2021
2021/9/19 @下北沢 Daisy Bar
pinfu

TOKYO CALLING 2021、下北沢Daisy Barのトリを務めたのは令和ロックンロールの救世主、pinfu。噂は聞いていたし音源はチェックしていたけど、ここまでとは。懺悔します。正直、ぶっちゃけ、ライブレポートを放棄して何も考えないで、ただひたすらpinfuのライブに夢中になっていた。それほど衝動が滅茶苦茶に掻き立てられたのだ。「こんな時代です、こんなご時世です。」そんなことを言い分けにただ溜まるうっぷんを、苛立ちを、どう吐き出せばいいのかすら忘れて次第に心が病んでいく。で、SNSにポエム投稿。終わってる、ああ、終わってる。何が足りない?今、何が足りない?ずっと考えてた。ここ数年ずっと。そして今日、TOKYO CALLING 2021で沢山のヒントを貰いながら、下北沢編、自分が最後に観たバンド、pinfuのライブで頭に雷が落ちた。

メンバーがステージに現れ楽器を手に持つ。耳を劈く轟音のフィードバックノイズが全身を走る。一瞬で何かが弾けた。過去に何度もライブハウスで経験したことのあるこの感じ。理屈じゃなく身体が反応するこの感じ。ライブの1曲目が終わる頃にはメモを取るためのiPhoneはポケットの中だった。これまでなんとなく、世界の終わりを想像したりはしたけれど、2021年現在、僕たちの知っている世界は終わってしまった気がする。この1年半、ずっとそのことを憂いていたし悩んでいた。ライブハウスのステージからpinfuが叫んだ「行こうぜ、その先に」という言葉。色んなところでもう何度も聞いた言葉だ。それなりの経験をしてそれなりの人生を歩いてきたつもりの42歳筆者はいつもだったら何処か冷めた目で見ているかもしれない。だけど、本当に不思議なんだけど、pinfuが叫んだ「その先」に、本当に行けるかもしれないと直感で感じたのだ。彼らだけじゃなく、今ライブハウスで彼らのライブを全身で受け止めているオーディエンスも、みんなが居たら何か変わるかもしれない。そんな気がしてならない。

日々に、この時代に足りないものを圧倒的な熱量で叫ぶ「ロマンがたりない」も新曲(と言ってた気がする)「透明になって」も10代の頃に聴いていたらその後の人生に大きな影響を受けてしまうほど歌にも演奏にもライブにも食らいまくった。しかし捻じ曲がって真っ直ぐな思春期ととんでもない爆音ってなんでこんなに相性がいいのだろう。勿論、GOING STEADY、銀杏BOYZの功績というかなんというか、それは本当に大きいと思う。時代的にも、その遺伝子を継いだバンドがちょうど今開花する頃で、それぞれ過ごした思春期をそれぞれの音楽に落とし込んで爆発させている2021年、世の中は真っ暗かもしれないけど、明るい未来だってちゃんと見えている。「sweet sixteen」なんて涙なしでは聴けなかった。彼らが今何歳なのか分からないけど、朝が怖くて眠れない夜の生命線がイヤフォンジャックだって歌詞を聴いて16歳の頃からずっと一緒だよ、40代になっても一緒だよって涙を流しながらステージを眺めていた。結局いつの間にか大人になって、大人にならなきゃと思って、変わったつもりでいるけど何も変わってないというか、あの頃からずっと地続きなんだ。10代で出会ったパンクロックに今でもずっと夢中だし、眠れない夜にはひとりでTHE BLUE HEARTSを聴くんだ。やばい、ちょっとポエムみたいになってきたから軌道修正する。ライブ終盤に演奏された「街」も素晴らしかった。というか思いっきり共感した。「下北沢を歩いていると映画の主人公になった気分になる」と語る石ノ森けんぢろう。街の風景の一部である人が、誰もがみんな主人公で、その映画の主題歌だってきっとそれぞれあるんだろうな。自分ならばeastern youthの「街の底」かな。石ノ森けんぢろうのMCを聴きながら妙に納得してしまった。

あっという間にラストナンバーを迎えたpinfuのライブ。最後の曲は「たとえば君が死んだら」だ。バキバキのノイズ、ゴリゴリのベース、ヘロヘロの単音ギター、全てが完璧だ。曲中で全部は聞き取れなかったが、ロックンロールとか、ブルースとか、パンクとか、サイケとか、フォークとか、ヒップホップとか、アイドルとか、もっと沢山あったけど色んな音楽を挙げ、最後の最後で「全ての音に幸よあれ」とガサガサの声で石ノ森けんぢろうが叫んだとき、膝から崩れ落ちそうになった。コロナで起きてる分断も差別も音楽の前では意味なんてないんだ。僕らを侵すのはウィルスじゃなくてくだらない思想だ。全ての音に幸よあれ。全ての人に幸よあれ。その通りだ。この曲の中で彼らは「平和と書いたら俺らがピンフ」って歌っていたけど、あながち間違ってないんじゃないかって、ライブを観終わった後は本当に救世主に出会った気持ちで下北沢の街を歩きながら考えていた。

text by 柴山順次
photo by 中山優瞳

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