ライブレポート

【ライブレポート】2021.04.10 「Packing」at K.D JAPON

世は依然としてコロナ禍。当たり前が当たり前じゃなくなって随分経ち、それは真っ先に矢面に立たされたライブハウスや音楽に携わるものの生活を一変させてしまった。もはやライブハウスで音楽を楽しむために人が集まることが御法度かと思うくらい価値観ごとひっくり返ってしまったこの国で、じゃあ我々はどう音楽を鳴らしていくか、どう音楽を受け取るのか。価値観ごとひっくり返ってしまったのであればこっちだってひっくり返してやればいい。いつだってカウンターカルチャーはそうやって生まれてきたのだと思う。

2021年4月10日、KADOMACHIがK.Dハポンで開催したイベント「Packing」に足を運んだ。出演者はKADOMACHI、もりあさひ(suisei)、The Shiawaseの3組。普段のライブと違い、この日はなんだかバンドもスタッフもソワソワしている様子。そう、この日のライブは主催であるKADOMACHIのメンバーである細川がライブを観ながらその場でライブレコーディングし、ライブ後にミックスした音源を終演後に販売するというのだ。この日のイベントタイトル「Packing」とはそういう意味も含まれていたのかと納得した。さっきまで目の前で鳴っていた音楽を真空パックして持ち帰れるなんて、まだ始まってもいないのにライブ後のことを想像してワクワクしてしまう。映画館で映画を観た後、パンフレットを買って帰るあの感じをライブハウスで体験出来るなんて画期的だし面白い。会場であるハポンに続々と人が集まりバンドがセッティングに入ると最初に演奏を始めたのはイベントの主催であるKADOMACHIだった。

 

今日のイベントでは出演バンド3組のライブをリアルタイムでライブレコーディングしてミックスする作業が細川にはあるので必然的にKADOMACHIがトップバッターでの出演となったのだが、これがまた功を成していたというか、主催イベントのトップを主催者が飾ることでよりイベントの主旨趣向が伝わったのではと感じた。洗練されたポップスを連打するようなKADOMACHIのライブは「嬉しい楽しい」が蔓延する空間を作り上げる魔法を放っているよう。ふと周りを見渡すと1階席も2階席も笑顔でいっぱいになっていた。この後に大仕事を控えた細川だが、KADOMACHIがKADOMACHIである所以を発揮したライブを見せつけバトンを繋いだ。

Suiseiは事情により急遽バンド形態からもりあさひの弾き語りへ変更しての出演ではあったが彼女の本来の魅力である歌の本質的な部分を存分に堪能することが出来た。3ピースではなくキーボードを迎えた大所帯での出演となったThe Shiawaseはインプロ的な要素やユーモアを交えながら会場を盛り上げていた。KADOMACHIが今回の企画にsuiseiとThe Shiawaseを誘ったのは、パッケージされたときのおもちゃ箱感やバリエーションも意識してのことだと思うが、見事に三者三様のライブをハポンのナイスロケーションで楽しむことが出来て非常に濃い時間を過ごすことが出来た。

ライブが終わり、賑わう物販やハポン名物のカレーを食べる人の姿に目を配りながら今日のライブのことを思い出していた。さっきまでの目の前の光景がCDになる不思議。持って帰ることが出来る不思議。それって絶対に嬉しいことだな、ライブの度にライブレコーディングをしてくれたら嬉しいな、なんて考えていると「終わったぞー!!」の声と同時に細川がフロアに戻ってきた。そう、物販にもいない、カレーを食べている訳でもない、細川はライブが終わったその瞬間からミックス作業を行っていたのだ。音源化されたCDはパッケージに封入され、そのまま会場のオーディエンスの手に次々と渡っていった。その光景に本当にドキドキした。ライブが思うように出来ない、観れない時期が続き、ライブハウスを取り巻く環境も日々変わっていく中で音楽を愛する我々も確実に変わってきたと思う。稀だった配信ライブも今ではポピュラーなものになったし、有り得ないと思っていた無観客ライブだってひとつの手段として大いに威力を発揮している。となれば、考えたこともなかったことである「ライブを持ち帰る」という新しい楽しみ方もあって然るべきだし、それを実行したKADOMACHIのアイデアや行動力にはただただ拍手である。

会場を後にし、出来立てほやほやのCDをカーステレオにセットする。車内に広がったのはついさっきまで体感していたライブの風景だった。まだ頭の中に余韻が存分に残っている状態で、さらにおかわり出来るなんて本当に贅沢なことだなと感じた。そして僕達は、このCDを広めていくことで、ライブハウスで何が起きているか、ライブハウスの真実とは何かを伝えることが出来るのだ。パッキングされたライブの思い出は封を開けることでその場をライブハウスに変えることが出来る。配信ライブやストリーミングも素晴らしいと思う。だけどこうやってライブを持って帰るというフィジカルな経験はこれまで味わったことのない、新しい価値観だ。ひっくり返された価値観に対するカウンターとしてひっくり返し返したKADOMACHIの戦い方。それをパッケージした「Packing」という在り方。こうやって音楽は、音楽の楽しみ方は、進化していくのだと感じたイベントであった。

Packing
K.D Japon
2021年4月10日
KADOMACHI
もりあさひ(suisei)
The Shiawase

photo by タケダゼンタ/みかん
text by 柴山順次

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