ライブレポート

ねぐせ。【TOKYO CALLING 2021】【ライブレポート】

TOKYO CALLING 2021
2021/9/19 @下北沢Shangri-La
ねぐせ。

TOKYO CALLING 2021、初出演にして下北沢最大級のライブハウスである下北沢Shangri-Laに大抜擢、なんと入場規制もかかるほど急激に勢いをつけている名古屋のねぐせ。がやってくれた。彼らの結成はコロナ禍真っ最中の2020年夏。結成から僅か1年での現状に「ねぐせ。はとんとん拍子でいいな」なんて声も聞く。いや違う。ねぐせ。がここに立っていることは、表には見せないだけで、藻掻いて苦しんで掴んだものなのだ。そんなねぐせ。はTOKYO CALLINGの直前にバンド史上初のワンマンライブを経験している。それが大きかったのか、勿論プレッシャーもあったと思うけれど、ステージに登場したメンバーの表情が明らかに変わっていたのだ。とくにVoのりょたちはまるで精神と時の部屋から出てきた孫悟飯のように見違えていた。それはきっとフロントマンとしての自覚だったり、自分の歌が届いていることに対する自信であったり、そんな経験や体験がねぐせ。を着実と前に進めているのは火を見るより明らかだ。

この日のねぐせ。は今のバンドの状態や勢いをそのまま表したかのような攻めのセットリスト。ライブは「スーパー愛したい」からスタートした。ねぐせ。のアイデンティティともいえるスーパーラブソングだ。加入したばかりの708のギターが加わることで恋愛中のハッピーさがより曲に落とし込まれた「スーパー愛したい」をなんとも幸せそうな顔で聴き入るオーディエンス。その表情を見ているだけで幸せな気持ちになる。708のギターは「猫背と癖」でも炸裂しており、りょたちと笑い合いながら見つめ合いギターを弾くシーンも。しかし「スーパー愛したい」「猫背と癖」と続けて聴くと本当に幸せな気分になる。こんな風に想われたら、こんな風に愛されたら、なんて42歳の筆者ですら思ってしまう。「猫背と癖」じゃないけど、古着屋デート、したいな。なんて。

愛し合うふたりの何気ない日常を綴った「彩り」で歌われる「日々を彩るのは君と僕のバカみたいなやり取りと夜中にコンビニで買うアイス」という歌詞にはライブを観ながら崩れ落ちそうになった。今日のセットリストの中で唯一スローテンポの曲ということも相まってそのエモーショナルは下北沢Shangri-Laにしっかり浸透していくのが分かる。結成1年とか、初出演とか、ここまで散々言ってきたけど、そうじゃなくて、彼らの音楽は年齢も性別も問わず、キャリアなんて関係なく、音楽として、聴く者の心を優しくしてくれる何かがある気がする。その強さ、説得力、勢いが何なのか、その答えは次に演奏された「死なない為の音楽よ」に隠されていると思う。こんな時代に生まれたバンドが死なない為に、生き抜く為に叫ぶメッセージ。刺さらない訳がない。ねぐせ。史上一番早いBPMで放たれるこの曲は、状況の変化の中で潰されないように音楽と向き合って向き合って向き合って生まれたバンドの決意の曲のようにも聴こえた。

「僕は話すのが下手で、だけど伝えたいことは曲に全部ぶっ込んでるので、ありがとうの曲を歌います。」とりょたちが語り「最愛」に。ワンマン以降、りょたちは「最愛」の前に口下手ながらしっかり気持ちを伝えるようになった。これはバンドにとっても大きなことで、今日初めて下北沢Shangri-Laでねぐせ。を観た人にもきっと彼の人となりや、だからこそ生まれる音楽が届いたんじゃないかと思う。上手に言うことよりちゃんと届けること。今のりょたちはそれを無意識にやれている気がする。口には出せないけど想っていること、思っていることは「最愛」にも落とし込まれていて、不器用なりょたち。の気持ちが綴られたこの曲を聴きながらオーディエンスの真っ直ぐにステージを見つめる表情が印象的だった。そしてラストは「秋の終」。りょたちがひとりで歌い上げ、そこにバンドが一斉に音を重ね、バンドに応えるかのようにフロアの手を挙げる。この光景、この景色、今この場で起きている出来事、その全部が奇跡みたいなことだけど、奇跡なんかじゃなくてねぐせ。が歩んできたことの先に確実に起こり得た事実だ。TOKYO CALLING 2021を直撃した台風の目はもしかしたらねぐせ。だったのかもしれない。そしてその台風を吹き飛ばしたのも。

text by 柴山順次
photo by Aoi

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