ライブレポート

ねぐせ。【ライブレポート】

コロナ禍真っ最中の2020年夏、名古屋にて結成されたねぐせ。というバンド。結成から僅か1年、しかし本当に濃い1年を過ごしてきた彼らは、2枚のデモ音源のリリースやライブを経て大型フェスやサーキットイベントにも出演するなど、彗星の如くシーンに登場し順風満帆に突き進んでいるように見えるかもしれない。だけどねぐせ。がこの1年で歩んできた道のりは決して平坦なものではなかった。メンバーの脱退も経験した。急激に注目されるが故のプレッシャーもあったと思う。その不安や葛藤はライブ中のメンバーの表情に表れてしまうこともあった。それでも彼らは歌い続けた。そんな彼らをファンのみんなが支え続けた。そして2021年8月8日。ねぐせ。とファンのみんなが求めあいながら、支え合いながら、共に作り上げたワンマンライブが名古屋は新栄ハートランドにて開催された。ねぐせ。にとっては初となったワンマンライブをレポートする。

この日のライブは一部、二部を分けた二部制での開催となった。チケットは販売開始より10分でソールドアウト。会場には運よくチケットを手に入れることが出来たファンが開場前からグッズを求め列を成している。みんなそれぞれ思い思いのねぐせ。Tシャツを着て今か今かと並んでいるその姿にはグッとくるものがある。新型コロナウィルス対策で様々な制限があるとはいえライブハウスにこの光景が少しずつ戻ってきたこと。そしてそれは会場と出演者と来場者のライブハウスを守りたいという意識の賜物だということ。ライブが始まる前からもう既に胸がいっぱいだ。

開場が暗転しSEが流れメンバーがステージに表れる。客電が点くとそこにはねぐせ。を待ちわびたファンの顔、顔、顔、顔と、本当に素敵な表情でメンバーに視線を送るファンのみんなの顔で埋め尽くされていた。そんなファンに向け、ねぐせ。が初のワンマンの1曲目に選んだのは「花束が似合う君へ」だった。この1年で積み重ねてきたことを噛みしめるように、優しく、丁寧に、力強く歌うりょたち。まるでファンと共に歩んできた時間がそのまま会場を覆うような優しい時間が流れる。ワンマンの1曲目にこの曲を選ぶことがとてもねぐせ。らしいなと感じた。そのままねぐせ。の代表曲ともいえる「恋夜」で会場のテンションも一気に上がる。さらに一斉に挙がる手にはメンバーも喜びを隠し切れないようだ。失恋ソングでありながら希望も歌った「恋夜」はねぐせ。というバンドのアイデンティティが凝縮されている曲だ。そしてそのアイデンティティを別角度から表現したのが「スーパー愛したい」でもある。活動初期から演奏されてきたこの曲のりょたちの恋愛観には思わず溜息が出てしまうほど。彼女の存在を公言しMCやSNSでも彼女の話をするりょたちだからこそ歌えるリアルなスーパーラブソング。これがねぐせ。の強さなのかもしれない。生き辛い世の中を生き抜くための「片手にビール」、オーバーサイズの服を着る女の子の可愛さが炸裂した「スウェット」と続き、配信リリースされたばかりの新曲「愛煙家」を披露。バンドのアンサンブルが素晴らしく、ねぐせ。がバンドとして縦のラインも横のラインも大事にしてきたことが見事に楽曲に表れている。

夏真っ最中に聴く「秋の終」も良かった。イントロで歌い上げるりょたちの歌から一気に疾走する展開に走り出したくなる。そしてライブでは何度も演奏してきた未音源曲「日常革命」がハートランドに響き渡ったあと、MCで次々とメンバーが「関係ない話」をし始めた。この緩さがねぐせ。の持ち味である。水を飲もうとして鼻に水が入ったなおとの話とか、せっかくのワンマンで全然関係ない話をするなあなんて聞いていると、しょうとが「全然関係ない話してもいい?」と口火を切り、全然関係ない感じで「708さん、本メンバーです」とさらっとサポートメンバーである708のバンド加入を発表。突然の発表に708の加入を拍手で歓迎するファンのみんな。発表の手段は滑ってい…この瞬間に立ち会えて本当に良かったと思う。

708を正式メンバーと迎え披露した「猫背と癖」「彩り」はこれまで何度もライブで聴いてきたはずなのに全く新しく聴こえた。「これからこの4人でやっていく」という意思がライブにも音にも溢れまくっているのだ。悲しいことが多すぎる世界を遊園地みたいなハッピーな世界に変えることが出来る、そんな魔法をねぐせ。の4人は、その歌で、その演奏で、そのライブで、ファンのみんなにかけているのかもしれない。涙を流しながらも笑っているファンの姿がとても印象的だった。そして特筆すべきはねぐせ。の新境地ともいえる「死なない為の音楽よ」だ。もう本当に痺れた。りょたちが叫ぶ言葉ひとつひとつが突き刺さる。死なない為の音楽。生きる為の音楽。そんな音楽がきっとりょたちにも、しょうとにも、708にも、なおとにもあって、そして今、目の前でねぐせ。のライブを観ているファンのみんなにとってはそれがねぐせ。であって、そうやって音楽は回り回って誰かの生活を、誰かの命を救っているのだ。

そしてライブは「最愛」でエンディングを迎える。きっと誰しもが聴きながら最愛の人の顔を思い浮かべたのではないだろうか。「愛してるって思いながら過ごしているお互いなかなか口には出せないよね」という歌詞にハッとして今すぐ帰って子供たちを抱きしめたくなったのは内緒だけど、アンコールで再び演奏した「スーパー愛してる」が代弁してくれた気がするからまあ良しとする。それにしても愛で溢れてるな、ねぐせ。のライブは。

結成から僅か1年でワンマンをソールドアウトさせたねぐせ。だが、彼らがライブで何度も語っていたようにバンドだけじゃここまで来れなかったのかもしれない。ワンマンのステージを見渡せばそれがよく分かる。大きく掲げられたバックドロップはファンがサプライズでプレゼントしたものだ。ステージ後方のブースでは彼らを支えてきたPAがねぐせ。の音を作っている。スタッフTシャツを着た仲間のアシストも心強かっただろう。楽屋には700mlのコーラ100本をはじめ数えきれないほどの差し入れが届いていた。そしてこの状況下、会場に来れなかったファンの気持ちだってSNSを通してしっかり届いている。そうやってみんながみんな、それぞれの愛の形で8月8日を迎えたのだ。そしてそれを作り上げたのは紛れもなくねぐせ。の4人で、こうやってバンド初のワンマンをバンドとファンと関係者で作り上げることが出来たことをどうしても文字にしておきたかった。いつかねぐせ。が武道館に立った夜、このライブレポートを読み直してどんな気持ちになるだろうか。そんな未来を考えながら、いや、あながち近い将来にあるんじゃないかなんて思う自分がいる。

2021年8月8日 新栄ハートランド
1 year anniversary ワンマン

SET LIST
1.花束が似合う君へ
2.恋夜
3.スーパー愛したい
4.片手にビール
5.スウェット
6.愛煙家
7.秋の終
8.日常革命
9.猫背と癖
10.彩り
11.死なない為の音楽よ
12.最愛
En.スーパー愛したい

text by 柴山順次
photo by タカギユウスケ

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