ライブレポート

南無阿部陀仏【TOKYO CALLING 2021】【ライブレポート】

TOKYO CALLING 2021
2021/9/18 @新宿club SCIENCE
南無阿部陀仏

TOKYO CALLING2021、初日新宿編。あいにくの台風模様。そんな中でサーキットをしていると傘を持ってアロハシャツを着て楽器を背負った集団を見かける。来てるけどこの場所は晴れてる、それもそう全員アロハだ。何処かアンバランスで面白いなと思ったが目は合わせないようにしようと思った。直感で。そんなこともすっかり忘れ、TOKYO CALLING 2021をしっかり楽しんでいる中、あちこちで「絶対観た方がいいよ」と薦められた南無阿部陀仏を観に新宿club SCIENCEに足を運ぶ。ステージに現れたのは先程のアロハ集団。2時間振りの一方的な再会だ。正直、本当に正直に書くとちょっとだけ期待が薄らいだ。そしてその3分後、期待も何も、拳を上げている自分に気付き「俺の馬鹿馬鹿!」と頭を叩いた。

「ヨイショ!」の掛け声で始まったライブは最後の最後まで本当にあっという間だった。忘れるもんかと思っていた大切なことが沢山あったけど、大人になって、いつの間にか記憶の奥の奥の奥の方に追いやってしまっているものが沢山ある。そんな思い出や経験が、大切にしていたものが、南無阿部陀仏のたった30分のライブを観ただけでドバドバに溢れ出てきたのだ。まだ半信半疑で観た「星の鍵」でいきなりのファーストインパクト到来。シンガロング多めの勢いのあるライブを展開する中で飛び込んできたVo.まえすの「後悔と選択の中で自分を見失って夢を見失って居場所を見失った」という言葉。この瞬間に勝手に抱いていたバンドの印象が180度変わった。

「よっしゃいくぞー!」とフロント3人がモニターの上に立つ姿に抑えきれない感情でいっぱいになる。「今日はどんな常識が僕を責めてくるのかな」と歌う「アドベンチャークルージングパーティー」は今のライブハウスを取り巻く環境にもリンクする。今目の前で起きていることは誰かの常識では非常識なのかもしれないけれど、音楽が、ライブが、どれだけ人を救ってるか、そしてどうしようもない奴もいるけれど、どれだけ考えて対策してやってるかってこと。ありもしない常識や正義を振りかざす前にTOKYO CALLINGに来てみなよって本当に思う。そんなことを考えていたら客席のひとりひとりをしっかり見ながら今にも飛び出してきそうに歌うまえすとバッチリ目が合った。彼らはライブハウスにいる全員に本気で届けようとしているし、それが届いた結果、さっきまで疑っていたような人間をここまで熱い気持ちにさせるんだから凄い。

「ONE LIFE」でメンバーが叫んだ「俺たちがいれば大丈夫!」という言葉の説得力だって南無阿部陀仏のライブを観たことがある人なら分かるはずだ。自分も今、身を持って体感しているけれど、いつか南無阿部陀仏がこの暗い世界を明るくしてくれるんじゃないかなって、割と本気で思ってしまっている。まだ出会って数分だけどこういう予感は鋭いほうだとも思っている。まえすがギターを持ち歌い上げた「5時のチャイム」も心のずっと奥の方に突き刺さった。「ずっとずっとずっとずっと君が大好き」「ずっとずっとずっとずっと そばにいようよ」と顔が真っ赤になってしまうほどストレートに気持ちを伝えるラブソングを書いたのはバンドのリーダーでもあるベースの阿部清流。ベースラインも素晴らしいがこんなにもロマンティックな歌を書くなんて素敵な恋愛をしているんだろうなと思ったけど、まえすのMCによると阿部は最近振られたとのこと。「ずっとずっとずっとずっと君が大好き」が哀しく響く。そんな阿部に送る曲かどうかは分からないが「ミサンガ」の「あなたが悩んでいるのならそばで歌うから」と歌うまえすの横でベースを弾く阿部は少し嬉しそうに見えた。不安な夜も辛い夜も決して無駄じゃなかったと思わせてくれる強くて優しい歌。ふと阿部を見るとベースを抱きしめながら思いっきり歌っていた。良いバンド過ぎる。

「自分がやりたいことはやり続けたい。元気に毎日正しく生きて行きます。」と宣言しての「若者よ、耳を貸せ」は間違いなく今日のハイライトだ。メンバー全員、4人が横並びになってアカペラで歌った「見えない景色に飛び込むことは新たな一歩を踏み出せるのさ」という丸裸のメッセージ。見えない景色に飛び込むことは怖い。だけどその一歩を踏み込めるかどうかは本当に大きい。最後の最後の最後の最後は自分を信じれるかどうか。自分を信じて、夢を信じて、食らいついていって欲しい。何目線だよって気持ちでライブのラストナンバーである「若者よ、耳を貸せ」の最後を「僕、少し大人になったよ」と締めくくった南無阿部陀仏が愛しくて仕方ない。忘れていたもの、こと、しっかり思い出せた新宿の夜だった。

text by 柴山順次
photo by清水舞

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