ライブレポート

Live!Livee!Liveee!2021 vol.4【ライブレポート】

TOKYO CALLING presents “Live!Livee!Liveee!」2021
vol.4”2021/08/14(SAT)
渋谷スターラウンジ
ねぐせ。 / moon drop/ アメノイロ。/ プッシュプルポット / Atomic Skipper / ドラマチックアラスカ

日本最大級のサーキットフェスTOKYO CALLINGによるライブ企画「Live!Livee!Liveee!2021」第4回目が渋谷スターラウンジにて開催された。今回はこれまでの下北沢シャングリラから渋谷スターラウンジに会場を変え過去最大数の出演者数でライブが展開。次世代を担うバンドからライブハウスシーンの第一線で活躍し続けるバンドまで6組が出演し会場を盛り上げた。TOKYO CALLINGが仕掛けるこの「Live!Livee!Liveee!2021」という企画には1本の大きな道筋と回ごとのテーマがあると感じている。今回の「Live!Livee!Liveee!」にはシーンを賑わしている所謂若手バンドからどんどんとバトンを繋いでいくような、まるでリレーを観ているような印象だった。若手はぐんぐん追い上げてくる。先輩だってまだまだ負けていられない。コロナ禍を戦い続けてきた出演バンドの気迫を大いに感じたライブをレポートする。

1組目に登場したのは名古屋の若手要注目バンド、ねぐせ。だ。結成から弱冠1年ながら大型フェスやサーキットも出演や1周年記念のワンマンライブが10分でソールドアウトするなど今最も勢いのあるバンドである。この日のライブはまだ音源化されていないにも関わらずライブの定番曲として人気の「スーパー愛したい」からスタート。ワンマンで得た自信や経験が演奏にもメンバーの表情にも出ていて短期間で成長してきたバンドのポテンシャルを見せつけられた。「猫背と癖」では先日正式メンバーとしてねぐせ。に加入したばかりの708の浮遊感のあるギターとりょたちの歌の絡みが心地よさを助長する。

新曲「愛煙家」も既に浸透しているようで一斉にフロアの手が挙がる。「彩り」で歌う「初めてあった日のこと覚えているかな」という歌詞が耳に飛び込んできたが、ねぐせ。がこの先どれだけバンドとして大きくなったとしてもこの1年のことは「彩り」を聴く度に鮮明に思い出すだろうな。この時代を生き抜くために彼らが叫ぶ「死なない為の音楽よ」は渋谷スターラウンジに集まった音楽ファンにきっと真っ直ぐ突き刺さっただろうしラストの「最愛」では口下手なりょたちがしっかりと今の思いを話してから歌った姿が印象的だった。僅か1年でここまで成長を見せたねぐせ。が「Live!Livee!Liveee!」に抜擢された意味がよく分かるライブだった。

2番手はねぐせ。と同郷である名古屋のmoon drop。浜口飛雄也が伸びやかな歌声で「花束のかわりに」を歌い上げライブが始まるとライブハウスに一気に花が咲いたような、そんな空気が流れる。突き抜けるような飛雄也の歌をしっかりと支えるバンドのバランスこそがmoon dropの魅力であるがお互いがお互いを支え合いながら大シンガロングを魅せる「シンデレラ」のアンセム感といったら凄かった。「負けないように思いっきりやって帰ります!」と「シーブリーズと君の匂い」に雪崩れ込むと心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらい渋谷スターラウンジに集まったオーディエンスが高揚しているのが分かる。懐かしさと温かさが」同居した「オレンジ」ではライブハウスがオレンジに染まったかのような錯覚も。飛雄也の歌は風景に色を付ける不思議なパワーがある。

ライブ終盤になり、これぞmoon dropな変化球ラブソング「僕といた方がいいんじゃない」を披露。飛雄也が低音で思い出を噛みしめるように歌い出すと涙を流すファンも。この曲の凄く良いところは未練がしっかりあるところ。あとツンデレなとこ。離れてしまった恋人に対する気持ちは「ex.ガールフレンド」でも歌われているが「忘れたいことの大半は忘れないほうがいいな」というメッセージにはライブ中に泣き崩れそうになった。moon dropが綴っているのは何気ない日常の足跡。自分の過ごしてきた日々を思い返しながら観るmoon dropは非常にエモーショナルだった。

アメノイロ。がステージに登場すると渋谷スターラウンジの空気が一変。アメノイロ。というバンドの持つ世界感や空気感が視覚を通しても伝わってくる。雨の持つ優しさも切なさも繊細さも激しさもアメノイロ。が紡ぐ歌詞やバンドのアンサンブルには表れていて、彼らの音楽が透明の雨の色を付けてライブハウスに降り注ぐような、そんな感覚を覚える。ライブは「あとがき」からスタート。力強いアルペジオの中で感情を静かに爆発させる寺見幸輝の歌声が響き渡る。バンドインと共にその感情はさらにブーストする。

「あとがき」から「朝惑」そして「インスタントカメラ」の流れで記憶の奥の奥の奥にしまっていたはずの顔が浮かんでしまって焦る。アラームなんて無視して好きな人と何をするでもなく過ごすあの時間とか、そういえば机にしまってある写真とか、ああ、顔が浮かんでしまう。「水彩の日々に」だってそうだ。もう会えない誰かの笑ってる顔がちらついてしまう。ライブを観てるはずなのにどうかしてる?いや、それだけ世界に入り込んでいるということか。「パステルブルー」で飛び込んできた「ずいぶん時間が経った」「忘れたい過去なんてもうないよ」という歌詞なんて今その瞬間の自分の気持ちが言葉になって漏れてしまったかと思った。アメノイロ。の音楽はいつだってそうやって記憶の隅を突いてくるのだ。もう止められないこの感情を「メリープ」の疾走感がさらに助長する。走り出したくなる感情をグッと堪え、だけど気持ちはもう走り出してしまって、今夜は枕を濡らすことになるだろうなと思いながらアメノイロ。のライブを思いっきり堪能してる自分に気付き照れ笑いなんかしてみたり。映画のような、とはよく言うけれど自分が映画の主人公になったと思わせてくれるライブだった。

4バンド目はプッシュプルポット。彼らが1曲目に演奏した「13歳の夜」に全ての感情を持っていかれた。ライブが始まり岩手県出身の山口大貴が歌う「突然すべて失ったこと あなたはありますか?」という問いかけに言葉を失う。言うまでもなく「13歳の夜」は彼が13歳の頃に体験した2011年3月11日の、あの日の歌だ。「ずっと笑って欲しいって思える人があなたにはいますか?」「無責任の”大丈夫 ”がやけに頭を駆け巡った」という言葉の重さ。「受け入れるしかなかったし」「受け入れるしかなかったよ」「受け入れたんだよ」と曲が展開していくごとに変っていく表現。生きる力、生きてく強さを叩きつける覚悟を持った人間にしか歌えない言葉の数々にライブ1曲目にして涙が溢れ出てしまったけれど、彼らを前に泣くことはとても失礼な気がしてその生き様を、その真っ直ぐなライブを正面から受け止めることにした。

言わずもがな、やはり「影」でも気持ちを持っていかれたけれど、「13歳の夜」のアンサーソング的な印象を受けた「こんな日々を終わらせて」のような希望の大シンガロングソングも彼らの武器のひとつであって、今は大きな声で歌えないけれどライブハウスでみんなで歌える日、笑える日を信じていたいなと強く思った。ああ、思えば「snooze」も「傷跡」もちゃんと前を向いてるんだよな。こうやって歌にすることで、ライブをすることで、歌を歌うことで、歌で前を向こうとしているんだな。笑顔を守ろうとしているんだな。ライブ後半、全力で歌い上げる「愛していけるように」「笑って」はライブハウスに集まったオーディエンスのケツを思いっきり蹴り上げたことだろう。経験したことが体験になってその全てを受け入れて希望を歌う。プッシュプルポットのライブ、絶対に観て欲しい。

5バンド目はAtomic Skipper。「Live!Livee!Liveee!」初開催となった昨年10月の配信ライブにも出演した彼らが、あれから約1年かけて追い求めてきた「本物」とは何か。それを証明するようなエネルギーに満ちたライブを見せつけたライブだった。いや、見せ合ったライブというのが正しいのか。本物を求めているのはバンドだけじゃなく、集まったオーディエンスも、ライブハウスも、そこにいるみんなが求めあって高め合ってひとつのライブを作っていく。今日のライブを観るまでは、シンガロングを最大の武器とするAtomic Skipperにとってオーディエンスが声を出せないライブは致命傷かと思っていた。しかし目の前で展開されたライブを観てそれが余計な心配だったことを思い知らされた。

もう何度も色んなところで書いているが、当たり前が当たり前じゃなくなってしまった今の世の中。ライブハウスでライブをすること、ライブを観ることだってどうにか自分を肯定する理由を無意識のうちに探していたりする。そんな中、「Live!Livee!Liveee!」というド直球なイベントで彼らは「ロックバンドなら」で「大事な人に歌いたい 目を見て歌いたい」と叫ぶのだ。「幸福論」「コアビリーフ」ではそれぞれ違う角度からバンドの確固たる信念をオーディエンスにぶつけ、「スーパーノヴァ」「人間賛歌」ではバンドのアイデンティティを見せつけ、「シグネイチャー」では彼らが歌い続ける理由をライブを通して投げかけてくる。シンガロングを封印した状態でこれだけキャッチボールが成立するライブをするAtomic Skipperがその伝家の宝刀を抜いたとき、どんなことになってしまうのだろう、なんと。そしてこれもまた余計な心配だったのかもしれない。とんでもないパワーをもらった。やっぱりライブだ。

大トリを務めたのはドラマチックアラスカ。コロナ禍ど真ん中、今聞きたい言葉がこれでもかと曲に落とし込まれていて、まるで2021年のこの瞬間のために書かれたかのように、眼の前にいるオーディエンスに届く音楽たち。もうはっきり言ってしまうけどドラマチックアラスカは希望だ。それもただの希望じゃなくちゃんと絶望した上での希望だ。現実だってちゃんと見てる。でもそれ以上に夢を見てる。そんなバンドが歌い続けてきたこと、そしてこれから歌っていくことはやはり一貫していて、今日もヒジカタナオトは照れくさそうにこんな状況の中でライブに来てくれた人への感謝であったり、このご時世に誰一人キャンセルもなく集まった出演者への労いを語りながら目は鋭く真っ直ぐ前を向いて歌う。「デビュー曲であり、これぞドアラ!」な「リダイヤル」、軽快なリズムでフロアを沸かせた「無理無理無理」と「ライブバンド、ドアラ」を見せつける。

「まだまだ走れる 息は切れてない」と歌う「ジュブナイル」や「戻らない 今しかないとわかっているから」と歌う「東京ワンダー」は最初に書いた今聞きたい言葉だ。ここで披露された新曲「CODE:RED」もオーディエンスにしっかり届いた様子。「強がりの先に未来はあったんか」と自問自答しながらメッセージをはっきりとしっかりと届けようとするヒジカタの表情が印象的だった。ラスト「ファイナルフラッシュ」はまさに希望。絶望の先の希望。何回も「死にたい」と連呼したあとの「死にたくはない」に涙腺が崩壊する。無数に伸びるオーディエンスの手が、もおう本当に希望の光に見えた。アンコールではまさの2021年ど真ん中のメッセージソング「人間合格」を披露。光を、希望を求めるドラマチックアラスカというバンド自身が光であり希望であることを確信させる素晴らしいライブだった。

喜びも悲しみも優しさも身勝手も、その全部がライブハウスにはある。「Live!Livee!Liveee!」にはその全部がある。このご時世、ライブハウスでライブをする意味も理由も理解なんかされないかもしれあいけど、ライブハウスでなる見えない「音」に命を救われてる人は確実にいる。感情が、心臓が、拍動が止まらないのがライブハウスだ。「Live!Livee!Liveee!」を通して感じたこと、再確認したこと、沢山あった。本当に沢山あった。TOKYO CALLINGによる「Live!Livee!Liveee!」というシリーズはそれぞれが1本ずつ独立したイベントでありながら、ライブハウスの灯を繋いでいく大きな大きなひとつのストーリーでもあった。今日も全国各地のライブハウスで鳴っている音を、今は鳴らせないけど水面下でグッと耐えてる音を、しっかりキャッチして心の中で「Live!Livee!Liveee!」と叫びたい。

text by 柴山順次
photo by プリティ桜子

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