ライブレポート

かりゆし58【TOKYO CALLING 2021】【ライブレポート】

TOKYO CALLING 2021
2021/9/20 @渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
かりゆし58

TOKYO CALLING 2021、渋谷はduo MUSIC EXCHANGEで行われたかりゆし58のライブが本当に素晴らしかった。2005年、沖縄での結成から現在に至るまで、バンドサウンドに生まれ持った沖縄音階を持ち寄り、ロックやレゲエといったサウンドをチャンプルーしたサウンドと真っ直ぐ過ぎるほど真っ直ぐな前川真悟の歌で全国各地にかりゆし58の音楽を届け続ける4人。TOKYO CALLINGでもお馴染みの彼らがこのコロナ禍のサーキットライブで見せたのは日常を歌うかりゆし58だからこその音楽が、ライブが、日常にあるという光景だった。そんなかりゆし58の音楽に触れようと会場のduoには続々とオーディエンスが集まる。中には他会場に出演するバンドマンの顔も沢山見かける。彼らが永年に渡り音楽ファンから愛されていることがよく分かる。30分という時間の中に凝縮された彼らのメッセージやライブに対する姿勢を感じながらかりゆし58のライブを堪能させてもらった。

「歩みを止めないTOKYO CALLING。俺たちも音楽を止めません。東京の色んなライブハウスから色んなバンドが今日は発信しています。」と語りライブはかりゆし58の代表曲のひとつでもある「電照菊」からスタート。彼らが生まれ育った沖縄の農家の文化である電照菊をテーマに歌ったこの曲は、沖縄ならず田舎や故郷を離れて暮らす人にとって共感する部分も多いだろう。実際にライブを観ながらフロアでは涙を拭う姿も見受けられる。かく言う自分も始まったばかりから堪えられず先が思いやられる。かりゆし58のライブを観るときはいつもそう。悲しい涙ではなく、かといってうれし涙でもなく、ただ心が揺さぶられ涙が溢れてしまう。duoの照明が電照菊の光に見えて涙は加速するばかり。なのに次に彼らが演奏したのが「流星」だからもう涙を拭くことすら辞めにした。長く生きていれば失ったものも沢山あるし、思い出だって沢山ある。時間が止まればいいのにって思ったことも何度だってある。だけど時は過ぎていき、誰かと別れ、誰かを見送り、また誰かと出会って今日まで生きてきた。張り上げるように歌う前川真悟の歌が色んなことをフラッシュバックさせるけど、それ以上に前に進もうって気持ちになるから凄い。duoに集まったオーディエンスもきっと自分と向き合いながらこれからの自分を見据えていたんじゃないだろうか。そんなことを思いながらステージを眺めていた。

ライブ中盤、「生きてるうちに歌手デビューしたいという72歳の母、前川正枝がデビューすることになりました」と前川真悟が語り出す。この流れの通り、一番聴きたくて一番聴きたくない(号泣するから)「アンマー」だ。少しだけ自分の話をさせてもらうが「アンマー」のリリースされた2006年当時、僕はレコード屋で働いていた。店内で流した「アンマー」を初めて聴いたとき店のフロアで涙を堪えることが出来なく泣いた。なんとか涙を拭いて持ち場に戻ろうとしたとき、同僚も同じ顔をして泣いていた。母への愛を綴った「アンマー」はその後日本全国に瞬く間に広がっていき日本有線大賞新人賞を受賞し国民的母への愛ソングとして愛され続けている。2021年、あれから15年、「アンマー」のイントロが流れるとduoには大きな拍手が巻き起こる。そういえばあの当時、今はもう亡くなった母親に「アンマー」のシングルをプレゼントしたなって思い出してしまったから大変。ライブを観ながら涙と鼻水がドバドバ出てくる。だけどきっと大丈夫。会場のオーディエンスもきっとみんな同じ気持ちだったはずと言い聞かせる。自分の子供がいつか「アンマー」を聴いたときに母親(妻)を想って涙出来る子に育って欲しいなと強く思った。

ライブ終盤、力強いバラード「バンドワゴン」で前川真悟が歌った「最大の絶望は痛みに慣れたこと」という言葉が突き刺さる。当たり前が当たり前じゃなくなって、いつの間にかコロナが当たり前になってしまった今、孤独を感じている人も多いはずだ。例えば今日、TOKYO CALLINGに来る為に、もしかしたら会社に嘘をついて来てる人もいるかもしれないし、家族に内緒にして来てる人もいるかもしれない。そんなとき、孤独を感じてしまうと思う。そんな孤独を抱きながらライブハウスに来ている人だっていると思う。分かり合えない誰かの意見から感じてしまった孤独をどうしたらいいかって、今目の前でかりゆし58が「分かち合うことくらいは僕らにも出来るよ」と優しく手を伸ばしてくれている。ライブハウスは危険な場所です。そんなのコロナ前から危険な日は危険だった。じゃあ来て欲しい。来て確かめて欲しい。かりゆし58のライブを観て欲しい。きっと手と手を、その手と手を取り合えると思うんだ。かりゆし58のライブを観ながら感情的になり過ぎたけれどラストナンバー「オワリはじまり」がまた救ってくれた気がする。たった30分。たった30分だけどかけがえのないない時間を胸に刻み込めた今日のライブをきっと一生忘れないと思う。命を燃やして生きていこう。そしてまたライブハウスで会おう。そういう場所をずっと作り続けているのがライブハウスだし、バンドだし、TOKYO CALLINGだ。

text by 柴山順次
photo by 石村 燎平

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