ライブレポート

ゆうらん船(IMAIKE GO NOW)【ライブレポート】

誰が呼んだか「今池に今、行け」を合言葉に、名古屋のディープタウン「今池」で開催されたサーキットイベント「IMAIKE GO NOW 2022」ClUB UPSETでのゆうらん船のライブをレポートする。

text by 柴山順次
photo by ニイミココロ

今から8年前、内村イタルがまだ10代の頃、ライブを観てインタビューをしたことがある。その頃活動していた内村イタル&musasavibandを経て彼が結成したのがゆうらん船。彼らが2020年にリリースしたアルバムには『MY GENERATION』と名付けられてた。それだけでもうグッときてしまった。ゆうらん船のライブを観るのは初めてだった。そこにはあの日の内村イタルがいたし、そこから進化した内村イタルもいた。ステージにメンバーが登場すると各々がチューニングを始め、そのチューニングが合ってきたタイミングでそのままライブが誘われるように「山」に流れていく。「俺は今奮い立って大きなお茶碗で飯を食っている」という歌い出しとその音像に昭和を感じて少しにニヤケてしまう。内村イタル&musasavibandを初めて聴いたときに感じたものと同じ感覚を覚え嬉しくなる。そして2曲目「Chicago、IL」でいきなり驚かされた。フォークを基調としながら後期ビートルズのような曲の佇まいと「友達は塞ぎ込んで僕は黙り込んでしまった」という歌詞が描くものに言葉を失う。そして印象的なピアノに乗って「Waltz」が始まると最初のドラムの入り方に腰を抜かしそうになる。内村イタルのセンスに注視しがちだけどメンバー全員がとんでもないぶっ込み方をしてくるのがゆうらん船の凄さだ。っていうか「Waltz」の世界観、凄すぎないか。

ライブが始まって数分でもう既に何度も驚いているけど、「Bridge」にも驚かされた。シューゲイザー、ノイズ要素が内村イタルのイノセントな歌声とクロスオーバーしたときの唯一無二感といったら。静かに、だけど激しく曲が進む中での祈りのように歌われた「歌声をあたえてくれ」という言葉が今も頭の中で鳴っている。メンバー全員がゆっくり呼吸をするかのように演奏して、その上で内村イタルが歌う。それだけで、それだから、そこに青春の群像が重なってライブを観ながらUPSETの壁にもたれて隠れて泣いた。「パラシュート開いた」と連呼する「Parachute」だって勝手な解釈と受け取り方で涙が溢れてしまった。「鉛の飛行船」のチルウェイブ感も素晴らしかった。気が付いたら腰あたりまでどっぷり浸かっている。

「サブマリン」ではゆらゆら海で音楽に溺れるようにライブを観る。43歳の僕にだってユースと呼べる時代があった。忘れてしまったこと、忘れたくないこと、忘れられないこと、忘れたいこと、ある。「サブマリン」を聴きながらその全部が頭をよぎって、波で流してくれたらいいのになと思った。だけど流れてしまったら必死に探すのかなとか。感情がいったりきたりしながらゆうらん船のライブに没頭していたらあっという間にラストの曲「来週のテーマ」で最後の最後でまた救われた気持ちになる。「来週のテーマはどうでもいいことさ」という言葉の安心感たるや。ゆうらん船のライブを観ながら自分の生活をふと考えたら日々に追われながら「疲れた」ばかりを口にして「俺たちはどこへ行くんだろう」なんて思っている。でも、だけど、奮い立って大きなお茶碗でご飯を食べてひとまずお茶を飲んで、そうやって生きていく生活のBGMというか、生活の供の音楽がゆうらん船なのかもなって、なんとなく思ったりした。個人的には、あれから8年経って目にした内村イタルが当時の仲間たちと音楽を鳴らしていることに何より感動した。音楽って凄い。

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