ライブレポート

アイビーカラー【TOKYO CALLING 2021】【ライブレポート】

TOKYO CALLING 2021
2021/9/19 @下北沢Shangri-La
アイビーカラー

TOKYO CALLING 2021、2日目。下北沢Shangri-Laに極上のポップネスを届けたアイビーカラー。今年で5年連続出演となる彼らだがバンドを取り巻く環境は年々変化しており、下北沢最大級のライブハウスである下北沢Shangri-Laにはアイビーカラーの音楽を求める多くのファンが集まっていた。2016年の結成以来、ノスタルジックピアノロックバンドとして良質の音楽を作り続け着実にステップアップしてきた彼らが今年のTOKYO CALLINGでどんなライブを観せてくれるか。期待で胸が高まる。ステージにメンバーが登場し川口彩恵が叙情的なピアノの旋律を弾き出すとベースの碩奈緒とドラムの酒田吉博が激しいリズムを刻み出す。なんとライブはアイビーカラーのパブリックイメージを大きく覆した新機軸ともいえる「L」から始まったのだ。アップテンポの中で佐竹惇が歌う意味深な情事。アイビーカラーの新しい顔を覗かせる印象的な曲に発表当時は驚いたがしっかりオーディエンスにも浸透しているようで一斉に腕が挙がる。完全に新しい武器を手に入れたアイビーカラーの強さをライブ冒頭から思い知る。

続く「東京、消えた月」は大阪の彼らが東京で歌うとこんなにも威力が増すのかとまたもや驚かされる。優しく温かい佐竹惇のイントロの歌からバンドインをきっかけに一気に疾走感を増すと、その勢いをピアノがさらに助長する。アイビーカラーの真骨頂である。いつの間に青き日々に終わりを告げたのか、自覚がないまま大人になってしまったけど、あの頃の記憶は鮮明で、月を見たり、風が吹いたり、アイビーカラーのライブを観たり、そういう瞬間にふと思い出すことが記憶の奥に沢山あって、普段は開かないように鍵をしているのだけれど、不意に溢れでてしまうから困る。アイビーカラーのライブを観ているとそういうことが多々あって、困る。だけどそうでもしなければ二度と触れられないこともあって、だからアイビーカラーのライブに足を運んでいる自分もいることに気付いてもいる。「東京、消えた月」から打って変わってポップを連打するような「魔法をかけて」ではまるで下北沢Shangri-Laに虹がかかったかのようなキラキラが降り注ぐ。弾けるように、ステップを踏むように、駆け上がっていく楽曲のポップさとライブの楽しさ。目が合っただけでその日一日5センチくらいは浮いていそうになってしまう片思いの一番楽しい時期を歌った「魔法をかけて」は「東京、消えた月」とは違った意味で、戻れない日々を思い出してしまう。でも戻れないことが悲しいんじゃなくて、こんな感覚が自分にもあったことが嬉しいし、まさに今片思いしている人にとっては心から共感出来る曲だと思う。ライブで観るとポップさがより増して、それもまた滅茶苦茶楽しい。

続く「short hair」から感じる幸せな時間を更に増幅させるように楽しそうに演奏する4人の表情も印象的だった。「君と過ごせる僕に願い事は今いらなかった」って歌詞にはオーディエンスもため息が出るほどうっとりした様子。こんなこと歌われたらそれはもう。そして幸せなムードは「オルゴール」に繋がっていく。この日のライブのハイライトと言っても過言ではないほど下北沢Shangri-Laに幸せな空気が広がっていく。感情移入したり、登場人物になったり、曲に自分を重ねながら眼の前で演奏する4人を眺めながら頭の中で浮かんだ顔に「ありがとう」や「ごめんね」や「ただいま」や「おかえり」を伝える。「星となる日がきても僕が眠る横で笑っていてね」という歌詞に不意に涙してしまう。「今日も滅茶苦茶幸せです。日々をビクビク過ごしていると音楽が嫌いになりそうなこともあります。そんなとき、戻してくれるのはライブです。またみんなと歌いたいです。」と語り最後に披露したのは「夏の終わり」。夏の儚さ、切なさを詰め込んだようなこの曲をこの季節にライブで聴けたんだからTOKYO CALLINGに感謝しなくちゃ。思えば今年も花火大会には行けなかったけど、来年には花火大会も、ライブも、TOKYO CALLINGも当たり前のようにいけたらいいなと思った。アイビーカラーのライブは色んな感情を呼び起こしてくれたり、気付かせてくれたり、その上で音楽を存分に楽しませてくれる。そんなことを改めて実感したTOKYO CALLINGでのライブだった。

text by 柴山順次
photo by Aoi

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