ライブレポート

HIGH FIVE 2022(ハンブレッダーズ / 04 Limited Sazabys)【ライブレポート】

HIGH FIVE 2022
2022年1月15日
Zepp Nagoya
ハンブレッダーズ / 04 Limited Sazabys

少年漫画を観ているような気分だった。目の前で起きた全てに興奮したし感動した。これがまた純然たるフィクションであることに震える。こんなことが繰り広げられるんだからライブハウスって面白い。2022年1月15日、この日のZepp Nagoyaのステージに立っていたのはハンブレッダーズと04 Limited Sazabys。「なにこの組み合わせ?」と思った人もいるはず。この対バンが実現したのは他ならぬ「HIGH FIVE 2022」だからこそだ。この日の名古屋公演を皮切りに大阪、札幌、横浜、福岡の全国5ヶ所のZeppにて開催されるこの「HIGH FIVE 2022」というイベント。これがもうその企画からして少年漫画要素満載なのだ。まずイベント側からは新進気鋭の次世代を担うアーティストをヘッドライナーとして指名。そして彼らが今一番共演したいアーティストをスペシャルゲストとして迎え対峙する。ほら、もうワクワクするでしょ。ドラマが生まれる予感しかないでしょ。そして、このとき感じた予感は本物でしかなかった。名古屋公演のヘッドライナーに指名されたのはハンブレッダーズ。そして彼らが対バン相手として迎えたのが04 Limited Sazabys。この日のZepp Nagoyaで何が起きたのか。もう一度言う。少年漫画を観ているような気分だった。そして、目の間で起きたこと全てに興奮したし感動した。

04 Limited Sazabys

先陣を切ったのは地元名古屋の04 Limited Sazabys。よくよく考えたら名古屋での「HIGH FIVE 2022」開催において地元を代表する04 Limited Sazabysを指名するハンブレッダーズの「強い相手こそワクワクしちゃう精神」、凄くないか。だって相手は04 Limited Sazabysだぞ。今や名古屋を背負って日本を代表するバンドとして活躍する04 Limited Sazabysだが彼らだって順風満帆だったわけではなく、ひとつずつ壁を壊しながら山を越え谷を越え僕らの町の絶対的ヒーローになったのだ。そんな04 Limited Sazabysだからこそ、このイベントに呼ばれた意味をしっかり汲み取った圧巻のライブを見せつけてくれた。果敢に挑んできたハンブレッダーズに対する最大限の礼儀は手加減なしにぶっ潰すこと。その表れか、ライブは「swim」からスタート。こんなの戦いが始まった瞬間にかめはめ派を撃つようなものだ。なのに「信じろ 未来を」なんてメッセージも放っちゃってるんだから憎い。「My HERO」ではハンブレッダーズの少し先に立っている先輩バンドとして「あの頃と同じ」だと歌っているようにも感じてグッときてしまう。コロナ禍コロナ禍言い飽きたけど、こんなときだからこそ立ち上がる以外方法はないという力強いメッセージが心を打つ。GENがMCで話していたように、戻るんじゃなく進むことが大事なんだ。そんなことを考えていると、戻るんじゃなく進んだことを逆説的に表現したかのような「message」がZepp Nagoyaに鳴り響く。ハンブレッダーズが名古屋での「HIGH FIVE 2022」に04 Limited Sazabysを選んだのは地元である名古屋で04 Limited Sazabysがどんなライブをするか観たかったからだと思うのだが、活動初期の04 Limited Sazabysが名古屋の小さなライブハウスで日夜戦っていた頃の彼らの武器である英語詞のメロディックパンクをそのままレベルだけグンと上げた状態で披露した「message」はハンブレッダーズに対する何よりのメッセージになったと思う。しかし容赦ないな04 Limited Sazabys。

この日、GENは「生きる力を与えたい」とか「世界は不安で溢れてるけど、それに打ち勝つのが俺たち」と頼もし過ぎる言葉を放っていた。しかもサラッと。彼らだって生きる力を沢山音楽にもらってきたはずだし、日々不安と戦っていると思う。例え環境や立場が変わっても変わらないことだってあるはずだ。だけどGENは、04 Limited Sazabysは、アジテーションする立場として自らを奮い立たせ、後輩からの対マンを正面から受け止め、しっかり先輩の役目をステージで果たしている。強くなったな、なんて言うと偉そうだけど、本当に強くなった。名古屋のライブハウスで名古屋を背負って立つ4人の姿は紛れもなく英雄に見えた。「今に全てを賭けてもいい」と言い放ち「Just」「monolith」を叩きつけライブは終了。ハンブレッダーズからの挑戦状に対するスクールカーストでいう上層部からの返答ともいえるライブに、胸がパチパチするほど騒いでいる自分に気付いた。

ハンブレッダーズ

圧倒的なライブを見せつけた04 Limited Sazabysの先制攻撃に対し、先に啖呵を切ったハンブレッダーズがどう応戦するか。ここでビビるようだったらこの戦いはここまでだが果たして…。なんて思っていたらちょっと待ってくれ。ハンブレッダーズ、凄まじいぞ。「スクールカーストの最底辺から」なんて言っているけど、最底辺だからこその火事場のクソ力というか、怖いもの知らずパワーというか、とにかく持てる武器全部装備して突進する姿に感動すら覚えてしまった。04 Limited Sazabysに対するカウンターパンチともいえる「弱者の為の騒音を」からライブは始まり、「泣き言混じりのシュプレヒコール」を体現した大合唱とか「頭の悪いギターで鳴らしてやるよ」を体現したギターソロとか、等身大なんていうありきたりな言葉の何倍もの等身大をぶつけてくる。それもこれも音楽が世界を変える魔法だと分かっていて、その魔法にハンブレッダーズ自身がどっぷりかかっているからだと思う。今やCDやレコードなんて時代遅れのガラクタかもしれないし、家でスマホで何でも観れる時代にわざわざ足を運んでライブを観るなんて意味が分からない人もいるかもしれない。もうそれはそれとして仕方ない。全然わかる。だけどそういう声をシャットアウトするのが音楽だ、CDだ、レコードだ、ライブだ、ライブハウスだ。マイノリティ上等、見渡せば「HIGH FIVE 2022」のフラッグの下にこんなにも音楽ファンがいる。もうその事実とハンブレッダーズが歌っていることだけで充分だ。ムツムロが「世界を変えるために必要なものがひとつだけある」と語り披露したのは「ギター」だ。今回の04 Limited Sazabysとハンブレッダーズの対バンを「陽キャVS陰キャ」だと笑っていたが、陰キャが陽キャに向かっていく姿だったり、もしかしたら倒しちゃうんじゃないかってドキドキに興奮するわけで、その武器がギターだなんて、少年漫画として100点過ぎる。僕が編集者なら即連載開始だ。

04 Limited Sazabysが地元名古屋でYON FESを開催していることに対し「いつか地元大阪でフェスを開催したい」と語るムツムロ。「まあ、YON FESには行ったことないんですけど」なんていちいち好戦的なのも最高だ。「自分のやり方で、自分の言葉で、心躍る音楽をやってる」という言葉にはそのままハンブレッダーズというバンドのやり方や在り方が表れていて心のずっと奥の方まで突き刺さる。「友情 努力 勝利」が原則の少年漫画とは真逆の青春を過ごしてきたであろうハンブレッダーズが、音楽で、ギターで、バンドで、全部ひっくり返す様を歌った「DAY DREAM BEAT」に共感した者が集まるライブハウスの光景。これまでのロックバンドのそれとは何かが違う一体感。きっとみんな、ずっと戦ってきたんだろうな。抗ってきたんだろうな。「再生」で耳に飛び込んできた「僕の感動とお前の「エモい」を同じにすんな」なんて、戦ってるバンドにしか歌えないよ。抗ってきたリスナーだから届くんだよ。そんな彼らにとって今日の対バン相手が04 Limited Sazabysだったことはやはり偶然なんかじゃなく必然だったんだと思う。ハンブレッダーズも04 Limited Sazabysもその在り方を提示した上でぶつかり合った素晴らしい1日だった。

事件が起きたのはハンブレッダーズがアンコールの「ライブハウスで会おうぜ」を歌おうとした瞬間だった。ステージに突如GENが現れムツムロに耳打ちしたのだ。ざわつく会場とキョトンとした表情でGENとムツムロを見つめるメンバー。ムツムロが耳打ちされながら復唱する。「4月2日か3日、空けておいて?」会場に歓喜のどよめきが起きる。声を出せなくたって空気で分かる。何も言わずステージを去るGEN。まだ何も分かっていないムツムロ。そう、既にアナウンスされているが、今年のYON FES出演を公開オファーしたのだ。

ライブ前半のムツムロの発言を思い出して欲しい。「まあ、YON FESには行ったことないんですけど」だ。それに対する04 Limited Sazabysの回答がYON FESオファーなのだ。こんなにかっこいいオファー観たことある?こんなにかっこいい先輩からの誘い観たことある?最後の最後で全部持っていくGEN。これがスクールカースト上層部のやり方か。こんなことが起きてしまうのがライブハウスだし、その可能性を持っているのが「HIGH FIVE 2022」だ。ドラマ、在りすぎでしょ。初対バンだったハンブレッダーズと04 Limited Sazabysのストーリーの始まりを観ることが出来た「HIGH FIVE 2022」の功績は大きいと思う。そして終演後、楽屋では慌ててスケジュール調整をするハンブレッダーズのマネージャーの姿を見ながら思った。これは純然たるフィクションだと。

text by 柴山順次(2YOU MAGAZINE)
Photo by 新保勇樹

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