インタビュー

ヤジマX(モーモールルギャバン)【インタビュー】

モーモールルギャバンのゲイリー・ビッチェによるソロ名義ヤジマXがリリースしたソロデビューアルバム『レッド』が素晴らしい。モーモールルギャバンの活動と並行して神出鬼没な活動を2008年頃から行ってきたというヤジマX。ソロ活動が本格化したタイミングでコロナ禍に突入するもライブ活動を精力的に行ってきた中で「ライブハウスで会いましょう」は各地でアンセム化。この曲に限らず、ヤジマXが吐き出したかのような心情を綴った歌詞世界にはつい涙してしまう。ソロアルバムを完成させ7月からツアーを開始するヤジマXに話を訊いた。

interview by 柴山順次

2YOU:ヤジマXとしての活動はいつ頃から始めたのですか?

ヤジマX:どうだろうなあ。記憶にあるのが2008年とかですかね。

2YOU:あ、そんな前からやっていたんですね。モーモールルギャバンと並行して活動されていたのですか?

ヤジマX:たまにですけどね。めちゃくちゃ覚えてるのは2008年にモーモールルギャバンが名古屋の名大祭に呼んでもらったんですけど、当時大人気だった竹内電気とYum!Yum!ORANGEの間にモーモールルギャバンが挟まれていて、MCで「この間にトイレとか行くんじゃねえぞ!」ってMCをしたんですけど、その名大祭のオープニングアクトがヤジマXだったんですよ。だから2008年にはもう活動していますね。

2YOU:その日の名大祭、僕も行きました。ヤジマXは観てないですけど。

ヤジマX:でしょうね(笑)。お客さん5人くらいしかいなかったので(笑)。

2YOU:ヤジマXとしての活動が本格化したのはコロナ以降ですか?

ヤジマX:そうですね。2020年からです。でもコロナはそこまで関係なく、モーモールルギャバンのメンバーの体調があまり良くなくてしばらくライブが出来ないから活動出来る場を増やそうと思ったんですよ。それがたまたまコロナと時期が被ったっていう。

2YOU:アルバムを聴くとここ1、2年の心情が吐露された作品だなと感じたのですがいつ頃から制作していたのですか?

ヤジマX:活動が本格化した頃から並行してアルバムの為に曲作りを開始したので2020年くらいからですね。京都のホテルが死ぬほど安かったので基本的に京都でレコーディングしたんですけど、原点回帰という意味でモーモールルギャバンの元メンバーのズーミーと一緒に曲を作っていたんです。それで曲も溜まってきたからアルバムを作ろうかなって。

2YOU:アルバム全体を通してまずはズーミーさんのギターが入っていることでヤジマさんの音楽の印象が凄く変わるなって。

ヤジマX:そうですよね。音楽のアイデンティティですよね。ギターかキーボードかって。

2YOU:ズーミーさんと一緒に作業するのはかなり久しぶりだったんじゃないですか?

ヤジマX:めちゃくちゃ久しぶりですね。そもそも彼がいた頃のモーモールルギャバンではレコーディングをしていないので、ズーミーとレコーディングをするのは今回が初めての挑戦だったんです。あ、でも挑戦なんて大袈裟なものじゃなく、非常に楽しくやらせてもらいましたけど。

2YOU:アルバムの中で最初に出来た曲は?

ヤジマX:「ライブハウスで会いましょう」ですね。あの曲はコロナ直前に出来た曲なので。

2YOU:当時、ライブハウスが槍玉に挙げられたこともあったので、それを受けての曲かと思いきや。

ヤジマX:それが違うんですよ。奇しくも時代と合ってしまったんです。またやっちまったなっていう。またって、別に以前何かあったわけじゃないですけど(笑)。でもこの曲がファンの人たちの間でテーマソングみたいに捉えてもらった部分があったのかなって気はします。ライブハウスで「この曲、すごく良かった」って僕に言ってくる人が沢山いたので、コロナ禍でずっとライブをする中でしんどいこともあったけどやりがいがあるがあるなって思える日々を過ごせました。

2YOU:「歌うのが怖い夜があった」という歌詞が突き刺さったのですが、モーモールルギャバンのライブで裸でパンティと叫んでいるあの姿の裏側をその言葉に見た気がしました。あのライブと隣り合わせにそういう気持ちがあったんだなと。

ヤジマX:ああ、それはめちゃくちゃ隣り合わせにあると思います。むしろパンティの言い方が分からなくなってた時期もありましたからね。「どうやってパンティて言ってたっけ?」とか。何十回、何百回と言い方が分からなくなりながらも言い続けていたので。でもさらっと言えるようになった瞬間は「やばい、俺プロになったかも」と思いました(笑)。

2YOU:パンティを求められることに対する葛藤とかってありました?

ヤジマX:葛藤というか、やっぱり割と多くの人が「パンティの人」っていう短絡的な結びつけ方をして、音楽リスナーに音楽として真面目に聴いてもらえないなっていうのは葛藤としてありましたね。

2YOU:そういったパブリックイメージと真逆にあるのがモーモールルギャバンでありヤジマXの音楽の本質的な部分であったりしますからね。

ヤジマX:ありがとうございます。でもパンティも自分でやってることですからね。そういういたずらをしちゃう部分が自分にはあるのかなと思います(笑)。

2YOU:だからこそ刺さる部分も大きいかと。「夢から醒めた憐れな野獣だな、まるで」はコロナになるまでのことが全部夢だったんじゃないかってくらい本当に食らってしまって。

ヤジマX:ありがとうございますと言うか、すみませんと言うべきか。でも本当に人として丸裸にされちゃったし、「これが現実か」みたいなことになった時にやばいと思って書いた歌詞というか日記のような曲なので。

2YOU:丸裸にされたというのはコロナ以降のことですか?

ヤジマX:まあ、そうですね。我々みたいなポジションの人が割とまともに食らったんで。矢面に立たされた部分があったじゃないですか。それで夢から醒めてしまった感じがあったんですよね。

2YOU:当たり前に続くと思っていたことが当たり前じゃなかったことを思い知らされた時期だったと思うのですが、あの時に感じていたずっとモヤモヤしている気持ちが「あれ」にも出ているなと。

ヤジマX:モヤモヤしてますよね(笑)。まあ、アルバム全体通して基本的には俺のモヤっとした気持ちの日記なので、そういう意味では非常に赤裸々なものが出来たと思っています。「From FUTON to EVERYWHERE」を作っていた頃とかは個人的には一番やばかったですからね。

2YOU:僕はコロナで3週間ほど布団から出られなかった時期があるので、この曲は凄く共感というか、あの頃の恐怖がフラッシュバックしました。

ヤジマX:3週間はきついなあ。俺はコロナになってないけどそうなりましたからね。いや本当にしんどかったなあ。

2YOU:だから今作って本当にドキュメント性が強い作品だなと。具体的に「コロナ」とかそういう言葉が出ている訳ではないですが、10年、20年経って聴いたときに2022年を知れる側面も持っているなと。

ヤジマX:そうなってくれたら嬉しいですね。単純にどんな時でも当てはまるような書き方は意識しているし時代を選ばないものにしたいので「こういう気持ちになる事ってあるよね」っていう割と普遍的なものとして形にすることは意識しました。直接歌ってなくても、それとして伝わる部分があったらいいなって。まあ、でも今聴いてくれている方は10年後にこの時代を思い出すんじゃないですかね。分からないですけど。

2YOU:「永遠に続けば、とか」はライブハウスを居場所として生きてきたことを色々と考えながら聴きました。

ヤジマX:ライブハウスから色んなことを学んだし、色んなものを貰ってきた人生ですけど、じゃあ「お母さんを安心させる何か」とか「人様に説明できる何か」なんて特にないし、俺は俺で楽しくやってきたけど、周りから見たらきっとよく分からない人が楽しそうにやってるなくらいにしか映らないと思っていて。勿論、そういう生き方をしてきた自覚はあるし、そう見られることは逆に光栄なので胸を張って生きてる部分はあるんですけどね。でも蓋を開けてみたら何もないなっていう。いや、何もないことはないんですけど。でも何を積み重ねてきたか自分で分からなくても周りの人が教えてくれることがあるので、そういう意味では周りに助けて貰っているなと。ボブ・ディランが「音楽なんて元々無価値なもの」と言ってるんですけど、そこに価値を与えてくれる人がいるから俺が作った音楽がゴミにならずに済むみたいなことは絶対あるので。本当にありがたいことです。

2YOU:それだけファンの方に寄り添った音楽と活動をされているからだと思いますよ。歌ってくれることで元気をもらっている人は多いはずです。

ヤジマX:ドンマツオさんとかクリトリック・リスとかジョニー大蔵大臣とか、居てくれるだけで元気をもらいますからね。

2YOU:今名前の挙がった方たちと同じ列に思いっきりヤジマXは並んでますけどね。

ヤジマX:それと同じようなことをみるきーうぇいの香織ちゃんが「クリトリック・リスとジョニー大蔵大臣とヤジマXは三銃士感ある」みたいなことをツイートしてくれていて、あれはめちゃくちゃ光栄でしたね。でも俺は誰かを元気づけようとしてる訳じゃないからそこは自分では分からない部分でもあります。誰かの為に曲を書いたりしたのも結婚式でウェディングソングを作ったくらいですから。それが今回のアルバムに入っている「あなたがいる世界」なんですけど、下手したら誰かの為に曲を書いたのは初めての経験だったかもしれないです。20代の頃に作った「美沙子に捧げるラブソング」とかも美沙子さんに捧げるとか言いながら自分の「好き」っていう気持ちをただ単に押し付けているだけの曲なので。俺、本当に自分勝手な人間なので自分の為にしか曲を作れないんです。でもそうやって作った曲が誰かに響いてくれたら嬉しいぞっていう。

2YOU:「あなたがいる世界」は真っ直ぐ過ぎるくらい真っ直ぐなラブソングで。

ヤジマX:もうそこに挑戦するしかないなって。本当はこういう曲を自分が書くなんて薄ら寒いと思っていたんですよ。でも結婚式という素敵な条件が揃うことでそれなりに説得力をもって伝えられるんだなってことは肌感覚として思いました。

2YOU:ヤジマさんが書くこういうラブソングも狂気のラブソングもベクトルは違うかもしれないですけど、純度は何も変わらないですよね。

ヤジマX:そうかもしれないですね。でも本当に自分ではよく分からないので、歌詞を読んだときに「なんだこれ、俺こんな奴なの?」って思うことはたまにあります(笑)。

2YOU:いや、もうめちゃくちゃヤジマさんですよ。音楽そのものが。

ヤジマX:今作は特に純度の高いヤジマだなとは自分でも思います。だから歌詞カードを読めないんですよ。自分過ぎて(笑)。

2YOU:アルバムを聴く度に目の前で会った気になりますからね。

ヤジマX:目の前だと、歌い方に熱が籠り過ぎてるから鬱陶しくないですか?でもそれも良かれと思ってやってしまいがちなんですよね。

2YOU:ヤジマさんは優しい人だから。

ヤジマX:もうちょっと色んなことをスマートに出来ると上手くいくんですけどね(笑)。

▼リリース情報


ヤジマX『レッド』
YJMX-001
¥2,200(税込)

1.夢から醒めた憐れな野獣だな、まるで
2.恋闇
3.From FUTON to EVERYWHERE
4.某月某日、雨
5.あれ
6.コロニーの夜に
7.藻屑
8.永遠に続けば、とか
9.Good Bye, I want You
10.あなたがいる世界
11.ライブハウスで会いましょう(LIVE)
12.空っぽ

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