インタビュー

XERO FICTION【インタビュー】

当たり前が当たり前じゃなくなって、もはや音源のフィジカルリリースすら当たり前ではなくなった2022年、まるで時代に逆らうかのように3月にはCD-R 『Keep Step e.p』、4月には7インチ『AS TIME GOES BY / SUMMER GIRL』を立て続けにリリースしたXERO FICTION。その持ち前の人懐っこさとポップさをもって世代やジャンルやシーンを飛び越えた活動でそのポテンシャルを無限のものとしてきた彼らの勢いは10年目を迎えてもなお枯れることはなさそうだ。先日のライブにてベースの恭兵がバンドを離れることが発表されたが、共に過ごした時間はレコードを再生することでいつだって蘇ると思う。コロナ禍での活動、音源リリース、そして恭兵について、ハルカとコウイチロウに話を訊いた。

interview & photo by 柴山順次

2YOU:XERO FICTIONはコロナ禍でも積極的に活動している印象がありますが。

ハルカ:活動が完全に止まったのは1か月ぐらいかな。ライブが出来ない時期はあったけどスタジオには毎週入っていたし。

コウイチロウ:でもスタジオにバンドが全然いなかったよね。

ハルカ:長年やってる先輩とか知り合いのバンドしか会わなかったもんね。学生のバンドとか本当にいなかったと思う。

コウイチロウ:そうだね。でも俺たちは何も変わらなかったよ。ライブがないくらいで。

ハルカ:ライブの練習がない分、この期間で曲も沢山出来たと思う。ライブでやってない曲もあるし歌詞が乗ってない曲もあるけど、結構な量の曲が出来たと思う。

コウイチロウ:来月新譜を出そうと思ったらすぐ出せるくらいは曲もあるよ。

2YOU:ライブが出来なかった期間はどれくらいですか?

コウイチロウ:どうだろう?3か月くらい?ライブハウスがやってたら俺たちは平日のブッキングでも出てたから割と早く動いた方じゃないかな。

2YOU:とはいえこんなにライブをやらなかったことはないんじゃないですか?

コウイチロウ:ないない。だから久しぶりにライブをしたときは無茶苦茶楽しかった。

ハルカ:たった 3ヶ月出来なかっただけなのに「こんなに楽しかったっけ?」って思ったよね。

コウイチロウ:あと体力が落ちたからしんどかった(笑)。

2YOU:シングル『AS TIME GOES BY / SUMMER GIRL』を聴いて感じたのですが、コロナ禍での経験は歌詞にも反映されていますよね。特に「AS TIME GOES BY」とか。

ハルカ:うん。やっぱりコロナ禍で感じたことを書くことが増えたと思う。もどかしい環境の中で活動してきたから、歌詞を書こうとするとその気持ちが溢れてきちゃうんだと思う。

コウイチロウ:不謹慎かもしれないけどコロナのせいで書くネタなんていくらでもある訳だしね。

ハルカ:ライブが出来なくなって見えたこともあるし、それこそ当たり前にやってたことが当たり前じゃなくなったことで違う物の見方も出来たことが歌詞にも表れてるんじゃないかな。

2YOU:「AS TIME GOES BY」はまさに環境の変化の中で生まれた曲だなと。

ハルカ:コロナなんて経験ないことだったから自己判断で決めるしかない部分があって、その中で自分はどう思うかを「AS TIME GOES BY」では歌っているかな。やっぱり私はどんな環境になったとしても音楽に携わっていたいし歌っていたい。この曲にはそういう気持ちが込められたと思う。

コウイチロウ:その気持ちが歌になってレコードに刻まれて、20年、30年後の世界に残せるのが良いよね。

2YOU:それはやっぱりレコードならではですよね。レコードを聴くことで時代背景が見えるし、それこそが物に残すということだろうなと。

コウイチロウ:俺が1977年のレコードを聴いて感じているようなことを30年後の誰かがXERO FICTIONのレコードを聴いて感じてくれたら最高だよね。「あのときこんな感じだったんだな」とか「コロナが大変だったんだな」とか、そういうのがレコードから見えてくると思うから。

2YOU:サブスクだと時代背景までは見えにくいですからね。でもサブスクはサブスクで音楽との新しい出会いを沢山くれますけど。

コウイチロウ:うん。俺もサブスク滅茶苦茶聴いてる。あと色んな曲をお薦めされるから、サブスクのお陰でレコードを買う量も増えたからね(笑)。「この曲、7インチあるのかな」とか探しちゃうから。やっぱり良い曲は物で欲しいんだよね。

2YOU:そういう物欲を満たしてくれるのがXERO FICTIONだなと。3月にリリースされた『Keep Step e.p』がCD-Rだったこともだし、そのジャケが10年前のCD-R『STEP BY STEP- e.p.』のオマージュだったこともだし、物作りをメンバー自身が楽しんでるなって。

ハルカ:自分が欲しいものを作っているだけだけどね(笑)。

コウイチロウ:欲しいものを追求しちゃうから製作費が大変なんだよ(笑)。

2YOU:今回の7インチもジャケットにかなりの拘りがありますもんね。ジャケットが2種類あって、2枚揃ってひとつの作品になるんですよね?

コウイチロウ:そうそう。ひとつは紙のジャケットでひとつはビニールなんだけど、紙のジャケットをビニールに入れて重ねて初めてジャケットが完成するの。要は図工だよね(笑)。

2YOU:Oi-SKALL MATESの『Evil Taste 12 Pint』も2枚でひとつになるような作品でしたよね。

コウイチロウ:あったあった。合体するやつね。ちなみにL’Arc~en~Cielにもあるんだよ。ツアーのパンフレットも上下巻で合体させるみたいなのもあった。

2YOU:THE BLUE HEARTSの『STICK OUT』と『DUG OUT』とか。

コウイチロウ:そうそう、そのイメージ。そういうことが出来るのってやっぱり物で作るからなんだよね。でも予算がかかるからレーベルにはお願い出来ないじゃん。だから自分たちでやってるんだけどね。

2YOU:しかも今回はハプニングもあったみたいで。

コウイチロウ:そうなんだよ。紙のジャケットのサイズが合わなくてビニールに入らなかったの。あれはめちゃくちゃ焦った。ダッシュでキンコーズに行って5時間ぐらいかけてジャケットを切ったからね。手を真っ黒にさせて(笑)。

2YOU:そういう出来事を経て色んな人の元にレコードが届いているのってロマンですよね。

ハルカ:本当に。CDもレコードも勝手に出来上がってくるんじゃなくて自分たちで作り上げた方が愛着も湧くからね。

コウイチロウ:実際に俺が聴いているレコードだって、例えばTHE UNDERTONESが紙を折って作ったりしているのを知ってるから、それをオリジナル盤として手にした時の感動はあって。そういうところも含めて自分たちで作ってリリースするのは楽しいよ。

2YOU:さっきハルカさんが「違う物の見方が出来た」と話していましたけど、「SUMMER GIRL」は新しいXERO FICTIONの打ち出し方だなと。

ハルカ:恋愛の曲とか書いたことがなかったからね(笑)。

コウイチロウ:でも曲調に凄く合ってるからいいんじゃない?

2YOU:XERO FICTIONはメンバー間が家族みたいな距離感だからこそ恋愛ソングを歌うことに照れとかありませんでした?

ハルカ:恋愛ソングに関わらず、最近はもう何も照れないかな。前はどんな内容でも恥ずかしかったけど(笑)。

コウイチロウ:曲を出す俺の方が恥ずかしいよ。

ハルカ:あ、そうなんだ。

コウイチロウ:なんだろうなあ。めっちゃ恥ずかしいんだよね。

2YOU:コウイチロウさんに恥ずかしいという感情があったんですね。

コウイチロウ:あるわ(笑)。スタジオでも「し、新曲やってみようか」みたいな感じになるもん。さっき家族みたいだって言ってくれたけど、自分の親に曲聴かせるのと同じ感覚なのかもね。だって曲を作るときはモードに入ってる訳じゃん。その雰囲気をスタジオでシラフで伝えるのは恥ずかしいよね。だから今こうやって曲の話をしてるのも本当は恥ずかしい(笑)。

2YOU:コウイチロウさんが書いた曲にどんな歌詞を書いて欲しいかはハルカさんに伝えるのですか?

コウイチロウ:それは全くない。そこはもう信用してるというか、イメージをちゃんとキャッチしてくれると思っているから。もし全然違うものがきたら「センス悪いな」と思うだろうし、そこのズレはないと思う。

2YOU:言葉を交わさなくてもセンスの共有が出来ていると。

コウイチロウ:うん。ハルカからどんな歌詞がきても曲の雰囲気に合ってるものが出来るからね。それだけ一緒に時間を共有しているし。

2YOU:今回、そんなXERO FICTIONから恭兵さんが離れることになったようですが。

ハルカ:もう8年一緒にやっているから何となく恭兵の変化には気付いてて。だから辛そうなのは分かっていたし、いつかそういう話になりそうだなとは思っていて。そういう姿を見るのも辛かったし。だから続けていくのは難しいかなって。

コウイチロウ:あいつの人生を妨げたくはないし、その決断をしたんだったら仕方ないかなって。そりゃ寂しいし困るけど、だからって「おい!」みたいなことには全然ならない。いきなり俺たちみたいなバンドに入ってきて、8年間も本当によくやってくれたよ。

2YOU:聴いてきた音楽も育った環境も全く違う恭兵さんがXERO FICTIONに入ったことでお互いにもたらした影響は絶対にありましたよね。

コウイチロウ:滅茶苦茶大きいよ。恭兵は俺たちの知らないことを沢山教えてくれたし、全然違う畑で育った奴と一緒にバンドをやる楽しさも教えてくれたから。それが本当に楽しかったかな。生き方が違い過ぎるから最初は「大丈夫か?」って思ったけど。バンドに染まりまくった俺たちに比べてあいつは真っ白だったから。その中であれだけやってくれたんだから、もう充分だよ。それに恭兵との8年間はちゃんとレコードの溝に刻まれてるから。30年後に聴いたってちゃんと刻まれてるから。だから俺たちはレコードを作りたかったんだよね

2YOU:あ、泣く。

コウイチロウ:あははは。でも本当にそう思うよ。

ハルカ:クアトロでワンマンをしたときに恭兵の親が見に来てくれたのも嬉しかったよね。「自分の息子がこんなバンドをやってたんだ」って喜んでくれて。

コウイチロウ:恭兵なんかより全然パンクに詳しいお父さんでね。でも恭兵も本当に楽しんでバンドをやってくれていたのは知ってるし。

ハルカ:「XERO FICTIONの曲が好き」っていつも言ってたもんね。

コウイチロウ:もうそれだけで充分。本当に。3000枚も売れなくても、メンバーが良い曲だって思ってくれるんだったら俺は誰に何を言われようが自信を持って活動出来るよ。そんなメンバーと作ったレコードを聴いてくれる人がいるんだからね。本当に感謝してるよ。これからのことはまだ分からないけど、また新しいメンバーと新しいレコードを作っていきたいよね。

▼リリース情報

AS TIME GOES BY / SUMMER GIRL
【7インチ】Xero-013 14
1,500yen(+tax)

Keep Step e.p
【CD-R】Xero-012
700yen(+tax)

関連記事

ONLINE SHOP