インタビュー

THE STARBEMS【インタビュー】

パンク界のポップマエストロ、ヒダカトオルが数々の女性アーティストに提供してきた楽曲をTHE STARBEMSとして再料理したセルフカヴァー作品『TansperformerS』が素晴らしい。BiS、爆裂女子、LiSA、STARMARIE、TEAM SHACHI、ZOCといった錚々たる面子の楽曲のTHE STARBEMS流パンク解釈はあっちからこっちから多面体的に楽しめる音楽の面白さが爆発している。アルバムを引っ提げツアーも決行したTHE STARBEMS。ライブハウスとローカルシーンに対するリスペクトも感じられる活動スタイルは今のTHE STARBEMSを体現しており、音楽を音楽としてフラットに吸収し発信し続ける在り方は『TansperformerS』にも表れていると思う。ツアーが終わりバンドはまたライブハウスでの日常に戻る。その日々の繰り返しがまた音楽を生みそれが重なったときカルチャーになっていく。ライブバンドTHE STARBEMS、これからもその活動を追っていきたい。

2YOU:セルフカヴァーアルバム『Tranceperformer』が本当に素晴らしくて色々お話伺いたいなと。

ヒダカ:LiSAちゃんの話?

2YOU:いきなり過ぎませんか(笑)。LiSAさんの話からでいいですけど(笑)。

ヒダカ:LiSAちゃんは名古屋出身の江口君(江口亮:Stereo Fabrication of Youth)がずっとサウンドプロデュースをやってるんだけど、ある日江口君に呼び出されて「LiSAのシングルのカップリング曲を英語で歌わせたいんですけどヒダカさんに歌詞をお願いしてもいいですか?1週間で。」という無茶振りをされて(笑)。でもまあそのタイミングでは「鬼滅の刃」のオンエア前だったから割と気軽にOKしたんですよ。元々LiSAちゃんが番組で一緒になったこともあったし、MASTER K(DUB 4 REASON)やcoldrainの後輩ってことも知っていたから。それで「“PROPAGANDA”」という曲の歌詞を書いたんだけど、曲はPABLO(Pay money To my Pain)が書いていてマリリン・マンソン的なヘビーロックで「紅蓮華」とシングルで並べて聴いてもかっこいいなと。そしたら「紅蓮華」が「鬼滅の刃」の効果もあって急に一人歩きし始めて、あれよあれよと物凄いことになっていって。だからついに俺もミリオン作家の仲間入りかと思ったらCDとストリーミングが同時発売だったからCDの売上はミリオンはいってなくて。それでも凄い再生数なのでお陰様でこの2年ぐらいはLiSAちゃんに食わせてもらっています(笑)。

2YOU:いきなり凄い話(笑)。ヒダカさんが最初に自分以外の曲を手掛けたのっていつ頃ですか?

ヒダカ:木村カエラの「Snowdome」が最初かな。たぶん先にJR SKI SKIのタイアップの話があって、そこに対してどういう曲を作るかってことで何故か俺に白羽の矢が立ったっていう。たぶんカエラのバンドでギターを弾いていた渡辺忍(ASPARAGUS)が紹介してくれたと思うんだけど。

2YOU:人に曲を書くのと自分用に書くのって感覚的には違ったりします?

ヒダカ:同じだね。俺はどの曲も自分が歌ってもおかしくない曲にしちゃうかな。

2YOU:確かにセルフカヴァーを聴いても違和感が全くないですもんね。

ヒダカ:そもそも「BiSimulation」とかは自分でやろうと思っていた曲をそのまま提供しているしね。来月中には完パケさせなきゃいけないみたいな感じで淳之介(渡辺淳之介:WACK)から連絡が来て、慌ててデモだけ渡して松隈くん(松隈ケンタ:SCRAMBLES)が「後はこっちでやります」っていうから任せたっていう。イントロとかは松隈くんのアイデアじゃないかな。

ミンゾク:リフはヒダカさんのリフじゃないんですか?

ヒダカ:あれは俺じゃないの。コード進行も松隈くんがいじってくれてる。最初はもうちょっと地味な曲だったんだよね。コーイチも「どこがサビですか?」って言ってたし(笑)。

コーイチ:ほんと申し訳ないです(笑)。

ヒダカ:テンションで押し切る曲だから分かり難いっちゃ分かり難いんだけどね。THE STARBEMSでやるならエモっぽい感じがちょうどいいと思っていたんだけどまさかBiSが歌うことになるとは。

2YOU:それが時を経て戻ってきたと。

ヒダカ:やっと自分の所に帰ってきた感じだね(笑)。でも逆に当時BiSに提供していなかったらボツになってたかもしれない。そう思うと面白い巡り合わせだなって思いますね。

2YOU:初めてヒダカさんがアイドルに楽曲提供したのはメロン記念日ですか?

ヒダカ:そうだね。メロン記念日はハロー!プロジェクトの中でもかなり異端な存在でモーニング娘。という絶対的な存在があって2番手ぐらいの立ち位置にいたんだけど如何せんまだまだマニアックな存在でわりとアンダーグラウンドからの支持が集まっていて。そこを打破するためにロック化計画だってニューロティカ、ミドリ、THE COLLECTORS、GOING UNDER GROUNDとかとコラボする企画があって。当時は俺はまだBEAT CRUSADERSだったから少しピコピコさせつつSHOW-YAがやってる「NAONのYAON」に出れるような曲を作ったのがアイドルに曲を書いた最初だと思う。

2YOU:メロン記念日にモーニング娘。がいたようにTEAM SHACHIにとってはももいろクローバーZという大きな存在がいて、そのTEAM SHACHIの楽曲をヒダカさんが手掛けるというのは何かリンクする部分があるのかもしれないですね。

ヒダカ:確かに(笑)。TEAM SHACHIのメインプロデュースにはROCK’A’TRENCHの山森くん(山森大輔)がついているんだけど彼にご指名頂きまして。通常だと本人と会わないまま曲を作ることが多いんだけどTEAM SHACHIは本人たちと会って「どんなのが歌いたい?」って話を擦り合わせてから作って。

2YOU:それで出来上がったのが「ROCK AWAY」だと。TEAM SHACIは何て言ってたのですか?

ヒダカ:「楽しい曲が歌いたいです!」って(笑)。それであんな天真爛漫な曲が生まれたんだよね(笑)。所謂モータウンっぽい跳ねるビートでちゃんとロックしつつ可愛い感じの曲って日本ではあまりないでしょ。

2YOU:歌詞にボニーとクライドという言葉が出てきたり。

ヒダカ:ちょうどその時「俺たちに明日はない」的なニューシネマが俺の中で再ブームが来ていて(笑)。それで名古屋から駆け巡って全国を制覇していくTEAM SHACHIの姿をボニー&クライドに重ねて書きました。ボニーとクライドは悪い奴らなんだけどね(笑)。

2YOU:「ROCK AWAY」のセルフカヴァーはイントロから印象が結構変わりましたよね。

ヒダカ:TEAM SHACHIはいきなり歌から始まるんだけど、それだと俺達はライブでやり難いから大好きなTHE JAMのイントロから拝借して。

2YOU:「Absolute Beginners」のイントロですよね。

ヒダカ:そうやって指摘してもらいたくてやってるんだけど誰も言ってこないから寂しいんだよね。20年くらいこういうことやってるんだけど(笑)。

2YOU:「Absolute Beginners」のイントロのオマージュはBEAT CRUSADERSの「FOOL GROOVE」でも登場していたのでニヤリとしてしまいました。

ヒダカ:「あれ、THE JAMですよね?」って言って欲しいんだけどね。淳之介か柴山しか言ってこない(笑)。

2YOU:あとこの曲はホーンのルード感もかっこいいなと。

ヒダカ:色々試してみたんだけど可愛いスカになっちゃうのはちょっと違うかなと思って。女の子の可愛いスカって擦られすぎてるでしょ。特に名古屋は。Yum!Yum!ORANGEとかGOLLBETTYとか。そういうイメージに重ねるのも一瞬ありかなって思ったんだけどTEAM SHACHIでやるのは違うかなと。

2YOU:ハーモニクスっぽいギターの効果音はCOBRA感もあって。

ヒダカ:我々の世代はそうなるよね(笑)。あれ最初にやったの誰なんだろう。チープ・トリックかな。COBRAもあったしLAUGHIN’NOSEもあったしTHE STARCLUBもあったと思う。世代的なとこなんだろうね。

2YOU:コーイチさんとミンゾクさんはどのような音楽がルーツなんですか?

コーイチ:自分は元々青春パンクバンドをやっていたのでGOING STEADYとかが元にあって、地元が広島なのでOiとかサイコビリーシーンが1番強いイメージがあったので青春パンクをやりながらOiやサイコビリー、そこからUKパンクとかジャパコアにはまっていくみたいな。広島はそこを通ってないと駄目みたいな流れもあって。

ヒダカ:地域性はあるよね。

ミンゾク:広島は怖いイメージあるもんね。

コーイチ:しばかれてもライブハウスに行くみたいな。

ヒダカ:ミンちゃんは?

ミンゾク:僕の時代はLAメタルとかですね。メタリカとかパンテラとか。

ヒダカ:スラッシー的な感じだったんだね。

ミンゾク:うん。そこからまあ色んな音楽を聴きながら今に至っています。

2YOU:ヒダカさんとはどのように出会ったのですか?

ヒダカ:テイチクレコードのエリー(江里口慎一)から紹介してもらって。当時まだテイチクとの契約が残っていたからエリーにメンバーが大量離脱するって相談したら「ヒダカさんに紹介したいドラマーがいます」って連れてきたのがミンちゃんで。

ミンゾク:実はReGの周年でTHE STARBEMSと対バンしてるんですよ。

ヒダカ:そうだよね。ミンちゃんは年も離れてないし2ビートも8ビートも両方分かるのが凄く良いなと思って。あと機材が分かるのも大きくて。メンバーが減った分、同期が増えたから最初は打ち込みが必要で。当時はベースもいなかったから。だから機材の使えるミンちゃんは凄くありがたいなと。でもまだサポートなんですよ。正式メンバーではないっていう。

ミンゾク:あははは。

ヒダカ:コーイチはMaegashiraのヒデの紹介だよね。

コーイチ:そうですね。

ヒダカ:ヒデが元THE STARBEMSの篤(菊池篤)と仲良くてライブに来てくれてて。それでヒデに「お前弾く?」って聞いたら「俺は無理だけどイカれた奴がいるんで」って紹介してくれたのがコーイチで。そしたら自分のバンドが止まって性欲の溜まったヤリたくてヤリたくて仕方ないみたいな奴が来たっていう。コーイチは音楽性欲が凄いんですよ。

コーイチ:そうですね。溜まってたものがドバっと出たので。

ヒダカ:滅茶苦茶ギラついてたからね。

2YOU:そのギラついてる感じはライブにも出まくってますよね。爆発してるなと。

ヒダカ:コロナもあったからライブで暴れられないフラストレーションもあったし、そういうのを発散する為にはスタンス的にもTHE STARBEMSは凄く良いよね。この前の名古屋もだけど若いバンド、それこそ10代のバンドともフラットにやれる強みがこのバンドにはあると思っているし。

2YOU:10代といえばZOCの「DON’T TRUST TEENAGER」のカヴァーも秀逸ですね。

ヒダカ:この曲はZOCで大森さん(大森靖子)が書いた曲なんだけど、アレンジを俺がやっていて。今回のカヴァー集の選曲を考えてた時に、別に自分で書いてなくても関わっている曲ならOKだなと。

2YOU:「DON’T TRUST TEENAGER」はこれぞ大森さんな曲ですよね。

ヒダカ:天才だよね。でも天才過ぎて理解されないっていう。だからこそ大森さんの才能を分からせるためのポップな媒体としてZOCがあるんじゃないかなと。それって俺がBEAT CRUSADERSでやってたことと重なって見えるんだよね。大森さんにはごめんなさいだけど。自分の世界観を曲げないでポップに打ち出すってことに凄くシンパシーを感じたんですよ。俺が女の子だったらBEAT CRUSADERSじゃなくてZOCみたいなことをやりたいと思うし。

2YOU:ZOCのライブは何度か観てるんですが「DON’T TRUST TEENAGER」をZOCのメンバーとして歌っている大森さんが大森靖子の在り方として本当にかっこいいなと思います。

ヒダカ:かっこいいよね。語弊があるかもしれないけどアイドルを観てるっていうより芸術を観てるような気になるんだよね。そしてやっぱり大森さんのソロも凄いんだよ。ソロはザ・大森靖子だから。特濃だよね。

ミンゾク:ハードコアのライブを観てるような熱量ですよね。怖いんだけど圧倒されるみたいな。

2YOU:戸川純さんに近い感覚というか。

ヒダカ:あー、そうそうそうそう。あのヒリヒリする感じはあるよね。大森さんはロックとポップとマニアックなものを凄く上手くやってるんだよ。

2YOU:そのバランスというか、ポップなものとマニアックなものを同じ媒体でやるっていう意味ではヒダカさんと共通点はあると思います。

ヒダカ:考えたことなかったけど言われたらそうなのかも。そもそも両方好きだから分けてやろうという発想がなかったっていう。中学生の時にLAUGHIN’NOSE、有頂天、ザ・ウィラードのインディーズ御三家が君臨していて、ポジパンとかノイズのシーンもあって、少年ナイフとかもあって、そういう情報を全部一緒くたに受けちゃったのが俺達の世代だから。それを全部同時にやってたのがBEAT CRUSADERSだしTHE STARBEMSもそうだと思う。

2YOU:それをオーバーグラウンドでやる面白さがありますよね。

ヒダカ:アンダーグラウンドなものが注目を浴びた時の爆発力って絶対にあって、それは大森さんもそうだろうしBEAT CRUSADERSもそうなんだけど、そういう音楽がアニメやタイアップで多くの人に触れた時の衝撃はあるなと。MAN WITH A MISSIONだってそうだし、cinema staffの進撃の巨人でもいいし、そうやってブレイクスルーした時の面白さみたいなのは常に体現したいというか。

2YOU:グリム童話って本当は怖いって説があるじゃないですか。子供たちも読んでるんだけど実は深い話だっていう。それこそ先日名古屋でヒダカさんが対バンしたThe Shiawase の仲井陸さんがアニメ「BECK」で聴いていた「HIT IN THE USA」を中学生の時にコピーしていたって話をしていましたけど、そういう音楽の入り口でありながら沼でもあるのがヒダカさんの音楽なんだろうなって。しかも陸さんはBEAT CRUSADERSをリアルタイムで体験している訳ではないのでヒダカさんにフラットなのもいいなと。

ヒダカ:直で観てくれてた世代だと中々フラットに言ってくれないけど、あの日対バンしたThe Shiawaseの陸やumitachiのアンジュは世代じゃないからこそフラットに話せるのは凄く良いよね。そうやって若手とフラットに対バン出来る楽しさは今のTHE STARBEMSにはあると思う。それが木村カエラだろうがLiSAちゃんだろうがBiSだろうが、The Shiawaseだろうがumitachiだろうが、数字の大きい小さいじゃなくてその人の音楽が好きかどうかでやり取り出来るのが一番嬉しいよね。ルックスが怖いから気は使われるだろうけど。

ミンゾク:俺?俺のこと?(一同笑)

2YOU:でも本当に今のTHE STARBEMSの活動スタイルや動き方は素晴らしいと思います。

ヒダカ:地元のライブハウスで頑張ってるバンドとやるのはやっぱり楽しいからね。地元に根付いた活動をしているバンドもライブハウスも最大級にリスペクトしてるから。そうやって地元で頑張ってるバンドと俺達みたいなツアーバンドが一緒にその地でライブが出来るっていうのは凄く嬉しいことだから。それに若いバンドとの交流は俺達をアップデートしてくれるんだよね。例えば同じ音楽を聴いていても解釈が全然違うし、自分じゃやらないアレンジになるほどなって思わされたり。そういうやり取りが楽しいよね。だから俺達はそういう出会いを求めてライブハウスでずっとライブし続けたいと思ってるかな。コロナさえなければ海外だって行きたいし。

コーイチ:海外は行きたいですね。

ヒダカ:海外ってバンドもアイドルもアニメもダンスもフラットなんだよね。フランスのジャパンナイトとか凄いでしょ。あれを日本でもやれたら面白いよね。でも日本ってアイドルはアイドル、バンドはバンドって情報で選別しちゃうから。それが凄く勿体ない。そういうフラットなことを日本のライブハウスでどんどんやっていきたいよね。

interview & photo by 柴山順次

THE STARBEMS
TransperformerS
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