インタビュー

SonoSheet【インタビュー】

CARENDERS、SUNNY CAR WASH、Lucie,Too、Someday’s Goneといった良質なバンドを次々と排出する宇都宮シーンからまたもや素晴らしいバンドが表れた。ASIAN KUNG-FU GENERATION やGOING UNDER GROUNDからHUSKING BEEやSHORT CIRCUITまで、90年代後半以降のオルタナティブな音楽からの影響が色濃く反映された楽曲にWEEZERやナードマグネットのような決して報われないラブソングが乗ることで完成するSonoSheetという個性。このギュンギュンのグワングワンに胸を締め付けるSonoSheetのデビュー盤にしてベスト盤のようなアルバム『Short hair』がHUNGRY OVER RECORDSよりリリースされた。「歌っていることの大半が女の子のこと」と渡辺裕貴(Vo/Ba)が語るように100%ノンフィクションのラブソングが並んだ今作は全国のモテない同志のアンセムとなるだろう。SonoSheet渡辺裕貴を形成するものはなにか。ここから始まるストーリーに期待を膨らませながら話を訊いた。

Q.アルバム、めちゃくちゃグッときました。
渡辺:実は秘かにそう言ってもらえると思っていました(笑)。

Q.SonoSheetというバンドのバックボーンがアルバムのあちこちに散りばめられていて聴きながらワクワクしました。なので色々とルーツを掘っていきたいなと思うのですが、まず音楽に興味をもったのはいつ頃ですか?
渡辺:小学4年の頃にアニメ「NARUTO -ナルト-」のオープニングテーマだったアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の「遥か彼方」に衝撃を受けまして。それで親に初めてCDを買ってもらったんですよ。それからアジカンの『君繋ファイブエム』『ソルファ』とリアルタイムでリリースされていくんですけど、小学生の頃はずっとアジカンを聴きながら「絶対にバンドをやる!」って決めていました。掃除の時間にホウキを持って歌っちゃうみたいな(笑)。

Q.当時、クラスではどんな音楽が流行っていたのですか?
渡辺:やっぱりアジカンは「リライト」もアニメ「鋼の錬金術師」の主題歌だったし聴いている子はいましたね。あとはORANGE RANGEとかBUMP OF CHICKENとか。でもバンドをやろうって子はいなかったです。

Q.最初にバンドを組んだのは?
渡辺:中2の頃です。町内会のイベントでアジカンのコピーをしました。

Q.なるほど。確かにSonoSheetからもアジカンの要素は感じますけど、SHORT CIRCUITやHUSKING BEEなどの影響も凄く感じました。
渡辺:大好きでしかないです(笑)。

Q.今作もSHORT CIRCUIT の『Break your wall』を彷彿とさせるCDジャケットだなと。
渡辺:完全に狙い撃ちです!もうとにかくあの時代のバンドからの影響を受けまくっているんですよ。中2の頃にアジカン主催の「NANO-MUGEN FES.」にBEAT CRUSADERSが出ていたんですけど、それをきっかけにビークルにドハマリしまして。そこから掘っていってSHORT CIRCUIT、CAPTAIN HEDGE HOG、HUSKING BEEと出会っていくんですけど、その中で「どうやらHi-STANDARDというとんでもないバンドが居たらしいぞ」ってなるんですよ。それでハイスタを聴いたら「うわー!!」ってなって(笑)。

Q.辿り着いた訳ですね(笑)。
渡辺:もう衝撃過ぎましたね。それで学校の放送とかでハイスタとかハスキンとかを流しまくったんですけど、学校の先生がAIR JAM世代だったので「お前凄いな!」って話になってBRAHMANやBACK DROP BOMBやヌンチャクを先生に教えてもらうっていう(笑)。そこからはもう90年代にどっぷりでしたね。

Q.素晴らしいです。その当時は時代的に青春パンクのムーブメントの後くらいですか?
渡辺:そうですね。でも青春パンクは全然通ってないんですよ。銀杏BOYZとか好きですけど、それもかなり後追いで聴いたので。やっぱり90年代なんですよね、僕は。あの頃の文化自体が好きなので。メロコアも勿論ですけど、ビーイング系とか渋谷系もしっかり掘ってるので(笑)。そこを全部ひっくるめてやってるのがSonoSheetなんですよ。

Q.なるほど。だから歌詞の書き方が同じ日本語でも青春パンクのそれとは違うんですね。カジヒデキさんのような淡さを感じたので。
渡辺:うわ、嬉しい!カジヒデキさん、大好き!めちゃくちゃ好き!

Q.あははは。歌詞は大半が女の子とのエピソードだと思うのですがこれは実体験ですか?
渡辺:全部実体験です。基本的には女の子のことしか歌っていません(笑)。

Q.失礼ながら、かなりフラれてきたんだろうなと(笑)。
渡辺:めちゃくちゃフラれてますね。そこはもう自信を持って言えます。フラれてます!

Q.だから歌詞のリアリティが凄くある。
渡辺:ほぼ実話なので相手の女の子からしたら堪ったもんじゃないと思います(笑)。でもそうやって心がドーンと動いたときのやり場のない気持ちを歌にしているのでどうしてもこうなりますね。

Q.そのやり場のない気持ちは「それでも、ボクは」にちゃんと落とし込まれていますよね。
渡辺:好きにならなければ傷つかないって分かってるんですけど、好きになっちゃうんですよね。すぐ(笑)。

Q.すぐ(笑)。この曲の頭のベースラインからイントロの流れはHUSKING BEEオマージュかなと。
渡辺:完全にHUSKING BEEですね(笑)。

Q.こういうニヤっとするオマージュが本当に沢山あるのが最高過ぎます。色んなバンドの顔が浮かんできますから。ひとりGIG-ANTICみたいな。
渡辺:あははは。完全にGIG-ANTICですよね。でも歌詞は日本語っていう。

Q.そこがSonoSheetのオリジナリティに繋がるんですよ。メロコアでもギターロックでもない。
渡辺:CDを出してみたら色んなところで「青春パワーポップ」って言ってくれるんですけど、パワーポップでもメロコアでもギターロックでもない気がするし、もはや自分でも分からないです(笑)。でもWEEZERは好きだから嬉しかったりもするけど。

Q.海外のバンドはどの辺りを聴きますか?
渡辺:基本的には日本のバンドが好きなので、自分が好きなバンドのルーツを掘っていく聴き方をしていますね。アジカンからWEEZER、ハイスタからSNUFFやNOFX、ハスキンからTHE GET UP KIDS、日高さん(THE STARBEMS)からネオアコみたいな。

Q.素晴らしい。そうやってSonoSheetのリスナーが90年代の音楽に辿り着いたら最高ですね。
渡辺:最高です。やっぱりハイスタもビークルもアジカンもその先に導いてくれたんですよ。日高さんが「元ネタを探してくれ」って言ってたり。そうやってバンドの奥にあるものを見せてくれるバンドに影響を受けてきたので自分達もそうありたいなとは常に思っています。

Q.そういう意味ではSonoSheetというバンド名もソノシートを知るきっかけになりそうですよね。
渡辺:何のメッセージもなく「かっこよくない?」って付けた名前だったんですけど、結果的に凄くしっくりくる名前になりましたね。ここからそういうカルチャーを知る人がいてくれたら嬉しいです。

Q.先ほど少し触れてましたけどアルバムの大半が女の子とのエピソードで埋め尽くされている訳ですが、その中で「新しい朝」だけ子供に対する優しさが溢れた曲ですよね。
渡辺:この曲は僕の甥っ子が生まれたときに書いた曲なんですけど、生まれたときにびっくりするくらい感動しちゃって。半端ないなって。妹の子供なんですけど、つわりとか酷かったし本当に頑張ったなって。妹は僕より年下なんですけど…って当たり前ですけど(笑)、本当に凄いなって。この感情を形に残していつかその子に聴かせたいなって。僕はこんなんだからお金とかもあげられないので。

Q.いや、そんな最高のプレゼントないですよ。
渡辺:実はこの曲のBメロはその甥っ子の名前を文字って歌詞を書いているんですよ。こういう歌詞を書くのは僕の中で挑戦でしたね。「新しい朝」と「TV girl」以外は全部女の子の歌なので。まあ「TV girl」も女の子の歌ですけど(笑)。

Q.「TV girl」はアイドルに対するピュアな気持ちがそのまま出てますね。
渡辺:僕、恵比寿マスカッツの夏目花実ちゃんが大好きなんですよ。彼女が東京のパチンコ屋さんに営業で来たときに2時間かけて会いに行ったんですけど、こんなに可愛い子が実在するんだってびっくりして。それで、僕はクソ野郎なんで、SNSで「バンドやってます!」みたいな絡みを花実ちゃんにしていたんですけど「バンドの子だよね?」って覚えていてくれて。それが営業トークでもなんでもいいんですよ。もうただただ嬉しくて、帰ってすぐにこの曲を書きました。

Q.「右手に残る君の面影消えはしないよ」という歌詞は握手会に行ったことのある人は超共感すると思いますよ。
渡辺:いや、本当に良い匂いがするんですよ!ボディークリーム塗ってるのかな。帰りの電車の中で握手した右手の匂いをずっと嗅いでて。…自分で話してて今やばってなった(笑)。でもその匂いが消えてしまっても面影は消えないんですよ。

Q.幸せになって欲しい(笑)。でも女の子にずっとフラれていて欲しい気持ちもあるんですよ。だから「ハッピーエンド」みたいな曲が出来るんだろうし。
渡辺:あははは。僕、花沢健吾先生の「ボーイズ・オン・ザ・ラン」が大好きなんですけど、あの漫画に出てくるような悪気はないけど人をめちゃくちゃにする女の子が大好きなんですよ。僕を散々傷付けるみたいな。好きな音楽や趣味が一緒で「私もWEEZER好き」とかよく話すんだけどセックスの手間で駄目になるみたいな。

Q.「グミ・チョコレート・パイン」のような。
渡辺:まさにそうですね。それで家に帰って曲を書くみたいな。いつもそんなのばっかりだな(笑)。

Q.そのグワングワンした感情は「マイワールド」にめちゃくちゃ表れていますね。
渡辺:「マイワールド」は僕がめちゃくちゃ落ちてる時期に書いた曲なんですよ。初めて日本語で歌詞を書いた曲でもあるんですけど、この歌詞を書いたときは前のバンドが解散して何もかも上手くいってない時期があって、バンドをやりたいからって就職しなかったのに解散しちゃったから家にいても親の視線を気にしてたし、相変わらずモテないし。SNSを開いても全部自分のことを言われてる気持ちになってしまって。そんなときに宇都宮のHELLO DOLLYっていう僕らのホームのライブハウスの人が弾き語りで誘ってくれたんですよ。そのときに書いた曲が「マイワールド」なんです。

Q.そういうエピソードがどの曲にもあるんでしょうね。
渡辺:エピソードしかないです(笑)。なんなら全曲喋りたいです(笑)。でも楽しいことってあまり曲にしないんですよね。「ハイスタのライブを観にいった!」とか「ツアーファイナルがソールドアウトした!」とか、そういうことは曲にならない。それより女の子とのエピソードの方が圧倒的に曲になるんですよ。「Short Hair」なんて女の子と過ごした1日がそのまま歌詞になってますからね。相手の女の子は今でもSonoSheetを好きでいてくれるんですけど。

Q.その子は「Short Hair」を聴いて何か言ってました?
渡辺:「正気じゃ聴いていられない」と言ってました(笑)。

Q.あははは。しかしそれだけ描写がリアルってことですよね。
渡辺:「あいしてる」とか「好き」っていう大きい言葉じゃ僕みたいな人間にはフィルターに引っかかてしまって入ってこないんですよ。「あいしてる」なんて表現じゃ伝わらないから。

Q.「YOU AND ME」の「触れられないなら 僕の息を止めて」なんて究極ですからね。XのYOSHIKIが「I LOVE YOU」って歌詞を書こうと思ったら「I’LL KILL YOU」になったみたいな。
渡辺:かっけー!YOSHIKIかっけー!でもめっちゃ分かるなあ。僕ね、フラれるとき大体「裕貴くんは大事な存在だから付き合えない」とか言われるんですよ。それ、めっちゃズルくないですか?もう「顔が嫌い」とか言われた方が傷つかないっすよ。もういっそ息を止めてくれって思う。なのにみんな優しくフルんだもん!

Q.でもだから好きになっちゃうんですよね。「それでも、ボクは」じゃないですけど。
渡辺:そうなんですよ。傷つくの分かってるのにいっちゃうみたいな。なにこれ、恋愛相談ですか?(笑)。

Q.裕貴くん、モテないモテないって言ってるけど人気はあったんじゃないですか?
渡辺:あははは。学校じゃ人気者だったと思います。人気者っていうか、面白いけど変な奴みたいな。ふざけた奴なんですよ。

Q.それはなんとなく知ってますよ。AIR JAMのカラオケステージで「なりきりBRAHMAN」の映像がバズったときに「なるほどね」って思いましたから。
渡辺:やめてください!ご本人にどうかバレないで欲しい!

Q.こうやって給食の時間とかにちょけてたんだろうなって(笑)。でも普段ふざけている人の真面目な表情とかってグッとくるじゃないですか。SonoSheetはそこが魅力なんですよね。
渡辺:そこです。そういう奴って意外とそうなんですよっていう。教室の隅っこにいる人だけが悩みを抱えている訳じゃなくて、ちょけてる奴だって孤独を感じているんですよ。ヤンキーにだって悩みはありますし。僕はヤンキーじゃないですけど。ちょけてる奴だってヤンキーだって教室の隅っこで音楽を聴いてる奴だって、みんな孤独を隠し持っているんですよ。だから…なにこれ、僕、先生になりたいんですか?(笑)。

Q.知らないですよ(笑)。でもこうやって音楽に全部落とし込んでくれるからSonoSheetを聴くのは凄く楽しいですよ。
渡辺:僕はお喋りなのでつい喋り過ぎてしまいますが、音楽でもちゃんと自分を表現していくのでSonoSheet、これからも仲良くして下さい!

リリース情報
SonoSheet
タイトル:Short hair

HOR-100
2018年12月5日発売
2000円(+税)

https://sonosheet-band.tumblr.com/

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