インタビュー

OAU 【インタビュー】

雪が溶けて川になって流れて行きます。つくしの子がはずかしげに顔を出します。長い季節を超え、春の訪れを感じると共に届いたOAUの新EPには春の収穫祭を意味する『New Spring Harvest』と名付けられている。昨年の「OAU TOUR 2021 -Re:New Acoustic Life-」で披露され先行配信された「世界は変わる」をはじめ、バンドの包容力と力強さを併せ持った全5曲を収録したEPを完成させ、4月には野外音楽堂ツアーと題し日比谷野外大音楽堂、大阪城音楽堂にてライブを開催するOAUのTOSHI-LOWに話を訊いた。

text 柴山順次

2YOU:今作には「春の収穫祭」を意味する『New Spring Harvest』と名付けられていますが、コロナ以降、象徴としての「春」をずっと待っていた気がしていて。その中で、昨年の「OAU TOUR 2021 -Re:New Acoustic Life-」で初めて「世界は変わる」を聴いたときにまさに春の訪れを感じたというか、これまでのOAUともこれまでのBRAHMANともまた違う感覚を覚えたのですが、「世界は変わる」はいつ頃に制作された曲なのですか?

TOSHI-LOW:最初の緊急事態宣言が出た頃だから2年前。ライブハウスが批判されたり、集まっちゃいけないって言われた頃で、レコーディングすら密になるって言われたから、じゃあひとりずつスタジオに入って録るんだったら大丈夫でしょって。本当に必要な言うことは聞くけど、その通りにやったとしても抜け道はあると思って。黙って言いなりになって何も出来ないのは悔しいでしょ。だから最初は反逆の歌みたいなものを書くモードだったのよ。でもMARTINのメロディを聴いたらそれもちょっと違うのかなって思って、今の置かれてる状況を「そうじゃない」って希望に考えれば、OAUらしくもっと柔らかく歌えるんじゃないかなって思ったんだよね。

2YOU:怒りを怒りのまま表現する手段もあったと思うのですが、そこで、そうじゃない「世界は変わる」のような曲が出来たのはコロナ禍で何か心境に変化があったのでしょうか?

TOSHI-LOW:心境の変化っていうよりかはコロナは自分たちでどうにか出来ることじゃないっていうのが大きいかな。「おさまれ」って言っておさまるものでもないし。だからある程度、自然摂理の現象として受け入れなきゃいけない部分と、行動を自粛しなきゃいけない部分と、自分たちらしくやればいいじゃんって部分を混ぜたらこういう割合になったみたいなことだと思うんだよね。例えば原発の問題で出てくる論説とは種類が違うと思うし。

2YOU:そのコロナウィルスが蔓延したことで確かに世界は変わってしまって、だからこそ「世界は変わる」は変わってしまった世界を嘆く曲かと思ったんです。でも聴き終わったときに毎日が凄く愛しく思えたり優しい気持ちになれたのが印象的でした。

TOSHI-LOW:「世界を変えよう」とかだったら自由の解放の歌みたいなものになったと思うんだけど、でも視点が全然違って、勿論社会はもっと変わらなきゃいけない部分もあるし目をつぶってはいけない部分があるのは重々承知の上で、どんな状況でも自分たちの視点の置き方で幸せの尺度は変わるから、社会や世間とは別の視点も持つべきじゃないかなって思うんだよね。これさ、こういう言い方をしていいのか分からないけど、戦時中だって生活の中に楽しみはあったはずなんだよ。子供たちは遊んでいたはずだし、固定概念で俺たちが思っている所謂「戦時下」みたいなものと実際は違う気がするんだよね。貧しい国だって、その中で活き活きと生きている子供たちだっているはずだし。だからその社会を変えることは難しいけど、その中でどう生き抜くか、その中でどれだけ楽しいことを忘れないかが大事なことだと思うんだよね。

2YOU:世界が変わった瞬間って、テロも震災もコロナも、これまで何度か経験してきたんですけど、僕個人の話で言えば母親が亡くなったとき、子供が生まれたときにも世界は変わったんですよ。だから捉え方は人それぞれだと思うのですが、僕は「世界は変わる」を聴いて、変わってしまった世界の中で家族とどう生きていくかを凄く考えました。

TOSHI-LOW:俺は特に誰かって限定して歌っている訳じゃないけど、MARTINなんかはその気持ちが凄く強いと思う。「Life」とかは父が息子に語りかけるような曲だと訳詞をしながら思ったしね。アメリカのフォークとかって父が息子に歌うみたいなのって凄く沢山あるでしょ。子が親に、親が子にいろんなパターンが恥ずかしがらないであるんだけど。でも日本には武田鉄矢の「母に捧げるバラード」しかないから。あの1曲だけだから。

2YOU:1曲だけってことはないかもしれないですけど(笑)。

TOSHI-LOW:それか大泉逸郎の「孫」(笑)。

2YOU:あははは。「Life」は父から息子に対する優しさだけじゃなく厳しさも感じました。

TOSHI-LOW:全部が全部思い通りに行く訳じゃないってことをちゃんと歌ってるよね。大人ってさ、「世界はバラ色でお前の願い事は全て叶うよ」って嘘を子供たちに教えるでしょ。でも現実は違うんだよ。俺たち見てみろって話だから。だけどさ、大金貰って組織にいるよりも好きなことをやってる俺たちの方が幸せかもしれないじゃん。何の夢も叶わなくて、こんなビルの片隅に集まって昼間っから話してる俺たちだって幸せの尺度で言ったら充分高いぞって。

2YOU:僕は子供たちに夢を見ることは教えたいんですよ。でも夢を見ることと同じだけ現実も見ることも教えたくて。夢ばかり見ていても現実だけ見ていても駄目だと思うんですよね。

TOSHI-LOW:そもそも夢と現実はセットであるものであって、夢が叶って希望の会社に入ったとしてもそこからが現実との戦いな訳でしょ。例えば社長になって大金持ちになったら幸せなのかって言ったら、何百億とか持ってる人たちが悲惨な死に方をしていたり孤独だったりする訳でさ。そこには金では買えないものがきっとあるんだよね。だって悔しいと思うよ?社長とか会長にまでなって、俺たちみたいな奴より幸せの尺度が低いなんて、だいぶ辛いよ。だからMARTINは自分の子供に向けて「Life」のような歌を歌っているんだと思う。

2YOU:MARTINさんは特定の誰かに向けた愛を歌っていますがTOSHI-LOWさんはまた少し違いますよね。

TOSHI-LOW:俺はもう少し広いところに向けて歌ってるかな。でもそれが沢山の人に届くかって言ったら必ずしもそうとは限らなくて。多くの人が共感する歌詞って意外とひとりに向けて書いた歌詞の方だったりするし、その逆もあって、全ての人に分かってもらいたいっていう歌詞は結構みんな分からないっていう部分があるんじゃないかなって。でも俺が歌う愛は近いところだけじゃなくて色んな人に向けたことでもあるし、かと言って嫌いな奴まで愛する必要はないと思っているから。

2YOU:愛さないけど認めることは出来ますからね。

TOSHI-LOW:そうなんだよね。相手の意見は認めるけど、だからって愛したいとは思わないから。世界の半分なんてある意味では敵なんだから「お前の意見を押し付けるな」「その代わり俺の意見も押し付けない」でいいと思うんだよね。自分の常識だけで相手の常識が間違っていると考えるのは危険だよ。だってもうそこに存在しているんだから。だったら認めざるを得ないじゃん。

2YOU:だけど認められないから正義を振りかざす訳で。

TOSHI-LOW:片側の正義だけ見ているとおかしなことになるよね。でもさ、喧嘩するのは別に良いんだよ。但し「最悪な結果だけは生まないようにしましょうね」って話だと思うんだよ。喧嘩するんだったら素手同士でやりましょうっていう。なんなら勝った側が相手に「覚えてろよ」って言わせて逃がすくらいの器が欲しいよね。じゃないと力で勝てないと思ったら後ろからブスッて刺されてしまうでしょ。そうならない為にもやっぱり相手を認めるべきだと思うんだよね。だからって揉め事が無くなるなんて思ってないし、揉めるときは揉めればいいと思っていて。でも良い揉め方が出来るようにお互い努力はしようぜっていう。喧嘩にも美学があるから。でも暴力とは出来れば違う方法で解決出来たらいいなみたいな。

2YOU:そういう時こそ音楽の力なのかなと思いますけどね。今作に収録されているインスト曲「Peach Melba」と「Apple Pie Rag」は無条件で躍らせるパワーのある曲だと思いますし。喧嘩を辞めて一緒に踊り出すみたいな。

TOSHI-LOW:そんな岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」みたいなことある?(笑)。

2YOU:でもそれが起こりうるほどのハッピーさを持っている曲だと思いました。曲名にピーチやアップルが付いていて、まさに収穫祭だなと。

TOSHI-LOW:インストには言葉がないから想像力が大事だと思っているんだけど、俺がインスト曲にタイトルをつける時は植物や果物の名前をつけることが多くて。それは無機物じゃなくて有機物の名前をつけたいからなんだけど、今回の2曲なんかは自然の中の大きな木ってイメージじゃなくて、もうちょっと実の部分っぽいイメージだったんだよね。それを集めたら収穫祭っぽくもなるでしょ。

2YOU:その収穫祭とも取れる野外音楽堂ツアーが東京、大阪で開催されますが、この2年間でOAUにしろBRAHMANにしろ、そのときそのときのやり方、戦い方でライブをしてきた中で今回はどんなライブになりそうですか?

TOSHI-LOW:毎回何か策略があるかって言ったらそうじゃなくて、その時やれることをやるしかないと思っているし、そのときの状況に応じて生きること自体が策だと思っていて。最初から作戦通りにいくとは思っていないし、もしハマれば凄いと思うけど、他のアーティストのインタビューとかを読んでいると如何に策があってハマりましたみたいなのばかりなんだけど、ハマらなかったときはそういう人たちは黙っている訳で。でもハマらないところで勝負するんだろって俺は思っているから。思い通りにいかない中でどうにか生きていく。その結果最終的な目的地は変わるかもしれないし、100%やりたいと思ったことが出来ないかもしれないけど、そっちの方が死ぬ時に面白かったと思えると思うんだよね。

2YOU:だからライブなんですよね。前回のBRAHMANツアーの名古屋公演でステージから落ちたことだって策があってハマったんじゃなくて、結果面白かった訳で。

TOSHI-LOW:あれは計算だよ。完全な計算。何言ってんだよ。

2YOU:いやいや、完全に落ちて笑ってたじゃないですか(笑)。一瞬ヒヤッとしましたから。

TOSHI-LOW:俺もだよ(笑)。普段ワイヤレスなんだけど良い音にしたかったからワイヤードにしたんだよ。それが引っかかってステージから落ちたんだよね。でもさ、そういうことだよね。何が起きるかなんて策を練っていても分からないし、そこで何をするかでしかないから。そんな中で最近のOAUは冬にビルボードでライブをして春に野音をやるみたいな流れも出来ていて、そうなるとまた1年間の目標にもなるから凄く良いんだよね。別に特別大きな会場でやりたいって訳じゃないんだけど、色んな人が普通に楽しめるライブをOAUではやっていきたいから、それが常にやれるバンドではいたいと思う。

2YOU:OAUのライブは所謂ライブハウスに集まる層だけじゃなく、子供からご年配の方まであらゆる年代の方がジャンルやシーンを問わず楽しめるものだと思うし、それはこの数年で築き上げてきたものでもあると思っています。

TOSHI-LOW:絵本でいったら「北風と太陽」と一緒で、自分たちが思いっきり楽しんでやってるものに対して人は「楽しそうだな」「何してんだろうな」ってなると思うのね。そういう意味では音楽を楽しむことだったり楽器を楽しむってことにOAUのメンバーは長けていて、他のバンドと比べるつもりはないけど、売れるものを作るとか影響力のあるものを作るってことじゃなくて、それより音楽でのコミュニケーションの技量を高くしたいし、それが少しずつ出来てきているんじゃないかなって思っているんだよね。そんな俺たちを観て「ギターやってみたい」とか「ヴァイオリンをやってみよう」とか、おじさんがいきなりウクレレを始めたり、子供が太鼓を叩き出したり、そういう現象が起きたら最高だなって思う。そういうもののひとつひとつは勿論自分たちの音楽という生業に繋がってくるけど、それだけじゃなくて世界の平和や平穏に繋がるんじゃないかなって俺は思っているよ。

OAU EP
New Spring Harvest
2022年2月2日(水)発売
通常盤(CD+DVD)
¥3,850(税込)
完全生産限定盤(12inchアナログ)
¥3,300(税込)

OAU 野外音楽堂ツアー「New Spring Harvest」
2022年4月16日(土)
東京 日比谷野外大音楽堂
OPEN 16:00 / START 17:00

2022年4月23日(土)
大阪 大阪城音楽堂
OPEN 16:00 / START 17:00 

チケット:発売中
Live Info https://smash-jpn.com/live/?id=3609

HP: https://oau-tc.com
Instagram: https://www.instagram.com/oau.jp/channel/
Twitter: https://twitter.com/tacticsrecords

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