INTERVIEW

Ken Yokoyama

Ken Yokoyamaがオリジナルアルバムとしては実に6年振りとなるフルアルバム『4Wheels9Lives』をリリースする。昨年9月にPIZZA OF DEATHレーベル直販のみでミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』」をリリースしたばかりの彼ら。ここに至るまでにメンバーチェンジ、横山の抑うつ、ライブ活動ストップと、様々なことがKEN BANDに起きた。さらに昨今の情勢だ。その全てを経て、全部を抱きしめて、「4Wheels=バンド」「9Lives=不死身」つまり不死身のバンドとして作り上げた『4Wheels9Lives』。何度だって立ち上がる不屈の精神で舞い戻ってきたKEN BANDの横山健、そして新メンバーEKKUNに話を訊いた。

 

2YOU:『4Wheels 9Lives』を語る上で、まずは『Bored? Yeah, Me Too』についても伺いたいのですが、あのミニアルバムを聴いてKEN BANDに変化を感じたんですよ。

横山:うん。メンバーが変わったのもあるしライブが出来なくなったこともあるけど、色んなことが変わったと思う。俺の書く歌詞も変わったよね。これまでのようなはっきりした物言いじゃなくなったというか、言いたいことをズバッと言わずにちょっと潜めるような作風に変ったみたいなんだよ。

2YOU:「変ったみたい」ということは無意識にそうなっていったのですか?

横山:自分でもあまり把握出来ていないんだよね。でもさ、それってやっぱり年齢で変わっていくと思うよ。20代の頃はずっと怒ってたから。納税し始めることで税金の使われ方が気になるし、29歳で会社を始めたら今度は社会的な仕組みについて怒りが湧いてくる。そういう怒りのパワーが40歳ぐらいまで続くわけですよ。その怒りを数年前からSNSをフルに使ってストレートな物言いで投げていたんだけど、気付いたらそれを引っ込めてる自分がいて。

2YOU:SNSでの発信が極端に減りましたよね。

横山:最初の頃は楽しかったんだよ。毎日のように川柳をやったり、政治のことを呟いたり、選挙カーが来たら文句を言ったり。でもそれが全部ダサく感じ始めたんだよね。凄くイージーだなって。そういう変化が作品にも影響を与えているのかもしれない。

2YOU:『Four』とか怒りまくっていましたもんね。

横山:本当に。でもハッとしたんだよね。他のミュージシャンがどうとかは知ったこっちゃないけど、なんかSNSで怒ってるのかっこ悪いなって思っちゃったんですよ。あとはSNSが悪用されるようになったじゃない?

2YOU:誹謗中傷で亡くなられる方もいて。

横山:うん。そうなってくるともう何も言いたくなくなるよね。あと冷たく聞こえるかもしれないけど、もう俺が何か言ったところで何も変わらないと思ってるから。それが今のモードかな。だから歌詞も変わって当然というか。

2YOU:この数年でKEN BANDとしての大きな変化もありましたよね。EKKUNの加入はどのような経緯だったのですか?

EKKUN:お!ここは俺のタイムラインですね?

横山:そうだよ!EKKUNのタイムラインで話して!

EKKUN:FACTが解散して、その後はJoy Oppositesというバンドをやっていたんですけど2018年に脱退したんですよ。そしたら抜ける発表をした3日後くらいに見知らぬ電話番号から着信があって留守電が入っていたんですよ。その留守電には「横山です」って声が入っていたんですけど、俺の中学の同級生の横山だと思っていて。

横山:健じゃなくてシンジね(笑)。

EKKUN:FACTの頃から親交はありましたけどまさか横山健から電話がかかってくるなんて思わないでしょ(笑)。

横山:それこそ名古屋のHUCK FINNで対バンしたよね。

EKKUN:しましたね。でも電話番号は交換してなかったから、本当に驚きました。

2YOU:横山さんは何故EKKUNを誘ったのですか?

横山:2018年の7月にMatchanから抜けるって宣告されて、俺達はすぐにドラマーを探し始めたんですよ。誰か余ってるドラマーいないかなって。それこそSNSで(笑)。

EKKUN:結局SNS(笑)。

横山:そうそう(笑)。それで電話したんだけど横山しんじと間違われて折り返しがないまま待たされました(笑)。

EKKUN:だって横山健から電話が来るなんて思わないですから(笑)。

横山:でもそこからEKKUNの勢いが凄くて。何人か候補がいて色んなドラマーと合わせていたんだけど「いや、俺でしょ!」みたいな。

EKKUN:こんなチャンス逃すわけにはいかないなって(笑)。他の候補がいたのも知ってたけど「1回だけやらせて」「ちょっとだけでいいから」みたいな。

横山:あははは。まだ他にも試してる途中だって言ってるのに「会えないか」とか電話がかかってきて。でもその気持ちが嬉しかったんだよね。そういう人柄的な部分も大きかったと思う。

2YOU:EKKUNの加入はその明るさや人柄だけじゃなくコーラスという武器も持ち込んできた訳で。EKKUNのコーラスがあることで横山さんの歌の聴こえ方も全然違ってきたなと。

横山:そうなんだよね。元々俺はコーラス出身だからコーラスアレンジをするのが好きなんだけど、EKKUNが歌えるからコーラスを作るのが楽しくて。やっぱりコーラスが映えると自然と主旋のメロディにも影響はあるんだよね。それに、コーラスもだけど、この4人でしか出来ない音楽が生まれている気がするのよ。やっぱりバンドって人と人がやってることだから、お互いの性格とか生活を理解してるかどうかで全然違うし、そういう意味ではKEN BANDはコロナ禍でちゃんとバンドしてきたんだなって思う。

2YOU:『Bored? Yeah, Me Too』はコロナ禍真っ最中であり、横山さん自身も体調を崩していたこともあり内省的な歌詞が多かったと思うんです。でも音はしっかり4人でバンドサウンドを作り上げた拓けた印象もあって。そこに何処か既視感を感じたんですけど、それって『The Cost Of My Freedom』と近い感覚なのかなって。

横山:それ、自分で聴いてみて改めて実感したことでもあって。自分が今一番書きたいことを自分の中で一番シビれる表現方法を使って書いただけなんですけど、結果『The Cost Of My Freedom』っぽくなったっていう。

2YOU:「Angel」や「Forever Yours」は物凄くパーソナルな面を歌っていると思うのですが、その奥にある死生観のようなものを感じたんですよ。それを色んな角度から歌っているのが今作なのかなって。

横山:お、鋭い。一見ラブソングに聴こえると思うんだけど、結構言いたいことは隠してあって。それは今言ってもらった死生観というか、死ぬってことを見つめることだったんだよね。死ぬことを考えると、今生きていることに対する感謝というか現状認識というか、さっきまで何でもなかったことが突然キラキラ輝いて感じたりして。死を考えることって、つまり生きるっていうことを鮮明に捉える事だと思うんですよ。死ぬことを考えるって別に自殺を考えるとかじゃなくて、いずれ俺は死んでいくし、運動機能も落ちてる、感覚も衰えてる。だってもうギターを弾いていて指が動かなくなっちゃったりするんだよ(笑)。前は18時間弾けたのにとか思ったりするから(笑)。

2YOU:精神的な部分で死を意識することはありますか?

横山:うん、それはありますね。20代の自分、30代の自分、50代の自分では何事に対しても感覚が変わっていってるので、これが70、80になったときに何事にもエキサイトしない自分になっているのかなとか、興奮してギターを弾いていられるかなとか、それとも何もしないでメシ食ってクソして寝る日々を受け入れるのかなとか。そういう若い時には思いもしなかった事を今は結構考えたりしてるかも。

2YOU:下の世代に繋ぐ意識とかはありますか?

横山:意識するようになったと思う。

2YOU:それこそPIZZA OF DEATHからKUZIRAがアルバムをリリースしますが、PIZZA OF DEATHからメロディックパンクバンドのリリースをするのってレーベル側もバンド側も色んな意味でハードルが高いと思うのですが。

横山:メロディックパンクのバンドのリリースを敢えて避けていた時期もこの20年の中で正直あったからね。最初にHi-STANDARD以外で受けたのがHawaiian 6だったけど、じゃあ次のHawaiian6を探せとはやっぱりならない。そしたら今度はWANIMAが受けた。でも第2のWANIMA を探せとはならない。じゃあどうすりゃいいんだろうっていう悩みの時期がPIZZA OF DEATHには必ず来るんだけど、KUZIRAをやろうと思ったのはその時期を抜けたからなんだろうね。

2YOU:アルバムの話に戻りますが「Have Hope」は困難を抱えて生きている人にとって希望の曲だなと。

横山:これは抑うつで藻掻いていた自分に対して歌ったものなんだけど、アプローチとしては今回のアルバムの中でも一番直接的なのかもしれない。それに精神疾患じゃないとしても、何かを抱えて生きてる人が「これは自分のことだ」って思ってもらえるような質感で書きたいなって思って書きました。

2YOU:「Whithout You」も聴く人によって色んな顔が浮かぶ曲だと思うのですが、具体的にイメージした人がいるのですか?

横山:特定の誰かって訳じゃないけど、亡くなった友達とか、死んでなくても俺の周りから離れていった人とか、そういう人全体のことを書いていて。この曲って究極のツンデレソングなんだよ。「お前ひとりいなくたって変わらねえよ」って言ってるんですけど、「Whithout You」のYouがいない世界を物凄く空虚に感じているんですよ。

2YOU:その寂しさを吐露するまでに、物凄くへそ曲がりな感情を持っていて、だけど最後に漏れてしまったような。

横山:うん。俺が思い浮かべるような人に対しては意外とそういう気持ちなのかもしれない。

2YOU:横山さんの歌ってきたことって、いつも「俺」と「お前」のことだと思うんです。その「お前」が仲間にむけてだったり、敵だったり、もっと大きなものだったりしてきた中で、今回は身近な人に向けた「お前」なのかなと。

横山:結果そうなったのかも。今回は意外と身近な人のことを歌っているかもしれないね。

2YOU:アルバム最後を飾った「While I’m Still Around」ではファンに向けた暖かい手紙のように感じました。

横山:若い時にこんなことを歌っても説得力がないと思うんだけど、もう50歳を超えたし、やっと言えるようになったのかな。それこそいつポックリ逝ってしまうか分からないから今言っておかないと後悔するなって。死んでからじゃ遅いでしょ。

2YOU:これだけ死生観を歌ったアルバムに「4Wheels 9Lives」と名付けられているのも素晴らしいですね。この言葉には「不死身」という意味があると思うのですが。

横山:それもやっぱり死ぬことを感じているからこその不死身なんだよね。結局死を意識しちゃってるんですよ。

2YOU:ドラゴンボールを7個集めると不老不死だったり不死身を願う人が多いのは、みんな死を意識しているからなのかなと。

横山:不死身を意識する人って結局は死を受け入れられないんだと思う。でも俺の言う不死身は何度だって生き返るって意味の不死身なんだよね。

2YOU:はい。だから「暇でしょ?」って言ってくれた『Bored? Yeah, Me Too』から『4Wheels 9Lives』の流れで完全に狼煙が上がった気がしたんです。『Bored? Yeah, Me Too』のときは実際暇でしたから。でもそれを認めることも出来なかったんです。

横山:うんうん、分かるよ。

2YOU:頑張れって言ってくれる人はいたけど「暇でしょ?」って言ってくれるミュージシャンは居なかったんですよ。しかもちゃんと「俺も」って言ってくれる。

横山:あははは。意外とこの角度から言ってくる人いないよね(笑)。

2YOU:でも2020年は確かにみんな暇を持て余していて、2021年になって新しい価値観で乗り越えようと動き出しているじゃないですか。それが『Bored? Yeah, Me Too』から『4Wheels 9Lives』の流れで数年後にアーカイブ出来るなと思うんです。

横山:メンバーチェンジもあったし、活動を止めてしまったり、そういうの全部をひっくるめて乗り越えてやるよっていう気持ちもこの2作品では形に出来たと思う。俺はそんなに強い人間じゃないしみんなと一緒なんですよ。でもたまたま表現の方法を知っているから歌っている。そうやって自分を奮い立たせているのかもね。

2YOU:横山さんは確実にヒーローなんですよ。だけど無敵のヒーローじゃなくて何度も立ち上がるヒーローなんですよね。

横山:矢沢永吉さんにしても、アントニオ猪木さんにしても、「この人絶対死なないでしょ」っていう絶対的なヒーロー感があるじゃないですか。でも意外とヒーローもそうじゃない時代なんですよ。俺だってみんなと一緒で死ぬのが怖いし、悩んでますよ。

2YOU:その部分を吐き出しているからこそ、ヒーローでありながら凄く身近に感じるんです。横山さんを。

横山:そう言ってもらえると嬉しいよ。ヒーローとしても(笑)。

interview by 柴山順次



Ken Yokoyama
タイトル:4Wheels 9Lives
【CD+DVD】PZCA-91 3850円(税込)
【CD】PZCA-92 2750円(税込)
2021年05月26日発売

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