インタビュー

映画「IDLE NEVER DiES」ギュウゾウ×井口昇 対談【インタビュー】

コロナ禍が生んだ青春SF映画「IDLE NEVER DiES」。主宰するアイドルイベント「ギュウ農フェス」を手掛ける電撃ネットワークのギュウゾウと「惡の華」「片腕マシンガール」「監獄学園」などを手掛けた井口昇監督がタッグを組んだ映画「IDOL NEVER DiES」はコロナ禍で活動の場を失ったり、SNSでの誹謗中傷であったり、今を生きるライブアイドルが抱える問題を描きつつ、SF混じりの青春映画として消化した素晴らしい作品だ。ギュウゾウと井口昇の異端児コンビがこの映画で何を伝えようとしているのか。そこに登場する現役アイドルたちが思うこととは。「IDOL NEVER DiES」はアイドルファンは勿論、今を生きる全ての人に観て欲しい映画である。発起人であるギュウゾウと、メガホンを取った井口昇監督に話を訊く。

interview by 柴山順次

2YOU:映画「IDOL NEVER DiES」本当に素晴らしい映画でした。

ギュウゾウ:ありがとうございます。井口昇監督のお陰で本当に素晴らしい作品になったと僕も思っています。

井口昇:いえいえ。ありがとうございます。

2YOU:まずはギュウゾウさんがアイドルと関わるようになったきっかけを聞かせて下さい。

ギュウゾウ:これはもう完全にBiSですね。最初は2013年だったと思いますが、今でこそBiSの後に続いたBiSHが紅白歌合戦に出たりと物凄い活躍ですが、当時のBiSはまだそこまで売れていない時期で。そんな中、たまたまご縁があってBiSと電撃ネットワークがコラボしたんです。そこでこんなにも魅力的なグループがいるんだと衝撃を受けまして。

2YOU:あの当時のBiSはアイドルそのものに対するカウンターでしたもんね。

ギュウゾウ:そうなんですよ。今思い返すと、あの時期の電撃ネットワークはパフォーマーとして行き詰っているところがあって。もう電撃ネットワークとしてやれることがないんじゃないかなとか、潮時かなとか思っていた時期だったんですよ。そんなときにBiSと出会って、BiSには研究員(ファンの総称)と呼ばれるサポーターチームがいて、それってセックス・ピストルズの親衛隊と一緒だなって思ったんですよ。

2YOU:ブロムリー軍団ですよね。

ギュウゾウ:そう、ブロムリー軍団!BiSと研究員の関係性というか、一緒に進んでいくあの感じを見ていて「これ、ピストルズじゃん!」と思ったんですよ。そんなBiSと研究員を見ていたら、まだまだやれることは沢山あるなと思ったし、活力を頂いたんです。だから大袈裟じゃなくて、BiSがいなかったら電撃ネットワークを辞めていたかもしれないです。

2YOU:BiSがギュウゾウさんを救ったといっても過言ではないと。

ギュウゾウ:間違いないです。だから僕のやっているギュウ農フェスだったり電撃ネットワークはBiSを感じてもらえると思いますよ。

2YOU:ギュウゾウさんがギュウ農フェスを始めたのは2015年。奇しくもBiS解散の歳ですが。

ギュウゾウ:それが偶然ではなく。今おっしゃったように2015年にBiSが解散しちゃったんですよ。当時のBiSはやっぱり凄かったし、周りにあんなアイドルはいなくて、だけど世の中の主流は可愛い女の子が可愛い服を着て可愛く踊るアイドルだと思うんです。その頃はまだ今のようにBiSのようなロックなアイドルの活動する場所がなくて。BiSも解散してこのままじゃそういう場所がなくなってしまうと思って、じゃあ自分で作ればいいじゃんって始めたのがギュウ農フェスなんです。

2YOU:凄い。どこまでもBiSなんですね。樋口監督がアイドルと関わるようになったのはどんなきっかけだったのでしょうか?

井口昇:8年前くらいに素人の女の子を使って映画を撮ろうと思って、オーディションで一般の女の子を募集したんです。それはアイドル映画を作ろうと思っていたんですけど、結局その子たちでアイドルグループを作ることにしたんです。それでノーメイクスというアイドルユニットを手掛けることになったんです。最初は映画の主題歌を歌ってもらうだけのつもりだったんですけど、タワーレコードさんや、それこそギュウゾウさんがイベントに呼んで下さったりして。それで自分もアイドルのプロデュースをやったり運営をやったりチェキを撮影したり、握手会のタイムキーパーをしたり、結構がっつりアイドル現場にいたんです。

2YOU:なるほど。だから映画の描写にリアリティがあるんですね。

ギュウゾウ:そうなんですよ。リアリティが凄いんですよ。

井口昇:本当に色んなものを見させてもらって「アイドル文化って面白いな」と思うことが沢山あったんですけど、そんな中でギュウゾウさんのギュウ農フェスでライブを何度か見させて頂いた時に、楽曲の格好良さや音楽性の高さに気付かされたというか。秋元康さんやつんく♂さんがやられていることとは全く違う世界があるんだなと実感したんです。

ギュウゾウ:井口監督が信頼できるのは、世界の井口昇が特典会のタイムキーパーまで参加して地下アイドルのカルチャーを知ろうとしてたことなんですよ。それはもう信頼でしかないですよね。名前だけ貸して居酒屋の経営とかをしてる芸能人もいるじゃないですか。なのに井口監督がチェキの剥がしまでやっているっていうのは信頼しかないです。やっぱり現場の空気って現場にしかないんですよ。僕らがやっているのはインディーロックに近いところがあると思っていて、現場の空気感が分からない人が関わっているものはバレるんです。そういう意味では今回の映画を井口監督がメガホンを取ってくれたのは百点満点でしょう。現場にずっといた人だから。

井口昇:アイドルのプロデューサーを5年くらいやっていたので、その時に感じた現場の温度感や女の子の心情はこの映画にある程度反映出来たのかなと思っていますね。

ギュウゾウ:この映画はちゃんとライブアイドルの空気感なんですよ。メジャーアイドルさんの価値観とはやっぱり違う価値観なんです。メジャーのアイドルにとってはテレビに出ることや新聞に載ることが重要だったりするじゃないですか。逆に言うとテレビとかに出ていないと生きていけないというか。でもライブアイドルはそうじゃないんです。ライブが出来なくなってしまったら死んじゃうんです。そこも井口監督はちゃんと描いてくれていて。

井口昇:僕自身、ステレオタイプのアイドル映画のアイドルのライブ描写が凄く苦手なんですよ。実際にライブの現場に行ったこともない人が想像で描いているものが殆どだなって。例えばそれはファンの方の描写ひとつとってもそうで、なんでこんなにもずっとステレオタイプなんだろうって思っていて。それってきっと決めつけなんですよね。アイドルは、アイドルオタクは、こういうものだろうっていう想像での決めつけ。だから僕はこの映画で、僕が見てきたアイドルのリアルを描かないと駄目だなと思ったんです。

2YOU:ネルシャツを着て頭にバンダナを巻くみたいな、いつまでもアップデートされないオタク像を未だに疑わない人はいますからね。今アイドル現場にいる人ってみんなかっこいいし面白いじゃないですか。でもそれは現場に来ないと分からないことですよね。

ギュウゾウ:そいうステレオタイプのアイドル、オタクとライブアイドルはそもそも大陸が違うんですよ。この映画では井口監督が僕たちの大陸の深いところまで描いてくれたので本当に感謝しています。そういう部分も含めて凄い作品だなって思っています。

2YOU:コロナ禍でギュウゾウさんがギュウ農フェスとして映画を作ろうと思ったのは?

ギュウゾウ:まず第一にコロナで活動出来なくなったアイドルの皆さんがどこに行っていいのか分からなくなっているというか、悩んでいるんだろうなって思うことがあって。物凄くお節介ですけど、そこを救ってあげたかった。ありがたいことにギュウ農フェスは色んな方に応援して頂いているので、ギュウ農フェスを使って一石を投じたかったんです。今回フルオーディションなんですけど、「ここで終わりたくない」って思っているアイドルに手を挙げて欲しかったんです。だからこの映画にはそういう人しか出ていなくて。

2YOU:まさに「IDOL NEVER DiES」ですね。

ギュウゾウ:そうなんです。「私はまだ終わりたくない」「私はまだやりたいことがある」そういう気持ちで踏み出してくれた子たちが今回の映画に出てくれているんです。だから「IDOL NEVER DiES」は映画ですけど、本当に物凄くリアルだなと思います。受け身じゃなくて能動的に前に進もうとした子たちと一緒に仕事出来たのがやっぱり僕は凄く嬉しいですね。

2YOU:この映画を通してギュウゾウさんが描きたかったのはまさにそこですよね。踏み出せば可能性は無限にあるという。

ギュウゾウ:自分の可能性は自分が考えているよりもまだまだありますからね。そこを井口監督が僕が思っていた何倍も表現してくれて。この映画を撮った時期、ちょうど全国魅力度ランキングをしていて、栃木県が最下位だったんですよ。さらに栃木県の中でも一番駄目な町ランキングで1位だった町があるんですけど、そこがこの映画を撮った場所なんですよ。そんな町で、井口監督と出演者たちと能動的にバットを持ってフルスイングして作ったのがこの映画なんですよ。結局何処にいたってやれることはあるし、可能性なんていくらでもあるんですよ。コロナでライブが出来なくなったらネット配信をする。無観客配信しか出来なくて面白くないんだったら、今度は映画を作る。ただで死ぬことを選ぶタイプじゃないんですよ。このまま死んでたまるかって思っているので。だって俺は電撃ネットワークだから。

2YOU:素晴らしいです。ギュウゾウさんの思いを受けて、井口監督はどんな映画を作ろうと思いました?

井口昇:コロナ禍になって実際アイドルのみなさんがライブも出来ない状況の中でアイドル映画を作る上で、この先行きの見えない状況を描かないと嘘になると思ったんですね。やっぱりライブの出来ない期間、アイドルのみなさんは不安だったと思うんですよ。この映画をアイドルの方が観てコロナ禍の活動と重なって涙を流してくれていた方もいるんですけど、それだけリアルに今の状況を取り入れないといけないと思っていて。明日どうなるか分からない状況が2020年からずっと続いていたし、脚本を考えていた時はそれがあと数年は続くだろうと思っていたから、その不安を描きたいなって。本来アイドルはファンを楽しませる役目があると思うのですが、そのアイドルのみなさん本人が一番不安な状況にいるってことがこの映画の一番大事なテーマなんじゃないかなと思っています。

2YOU:そこを描くことで心情を重ねるアイドルも多いでしょうし、あとは細かいアイドルあるあるが描かれているのもリアルだなと。つい笑ってしまうほど。

ギュウゾウ:そこが本当に井口監督の演出の凄さなんですよね。映画に出てくる運営さん役とか本当に素晴らしいですから。ああいう適当な運営っているじゃないですか(笑)。アイドル運営には3種類しかいないと吉田豪さんが話していたんですけど、お金が好きな人、楽曲が好きな人、可愛い女の子が大好きな人、この3種類しかいないみたいなんですよ。この映画に出てくる運営さんはお金にしか興味がないと思うんだけど、その感じを丁寧に演出してくれていて、大人の適当さにアイドルが不安になっていくシーンがちゃんと描かれていることに僕は感動しました。映画の中で運営さんがタレントの名前さえ覚えていないシーンがあるんですけど「井口監督、よく見てんなあ」と思いましたからね。そういう運営さんが本当にいるし、そんなとこにいてタレントさんが不安に思わない訳ないじゃないですか。現役アイドルの子がこの映画を見て泣いちゃったっていうのは、そういう細かい部分も含めてなんじゃないかなって思います。

2YOU:結局人と人ですよね。あと距離感。それはアイドル同士もファンの方との関係性も含めて。

ギュウゾウ:コロナになってその距離感を離すことが強制的に求められた時期があったじゃないですか。それって本来のアイドルが求められていたものと真逆なんですよね。そうやってどんどん人と人の距離が離れていって、その結果、憶測でデマや誹謗中傷が飛び交うようになって。それはこの映画でも描かれているんですけど、人との距離が生まれると人って孤独だと感じてしまうんですよね。自分だけが不安で自分だけが不幸だと思ってしまう。この脚本を書いているときはまだコロナだけだったのが、その後戦争も始まって物価も上がり、普通に生活していた事が出来なくなって、時代が殺伐としていると思うことだらけで。だからこそ自分たちだけはちゃんとお互いの気持ちを思いやって生きていかなくちゃいけないと思っていて、この映画で本当に伝えたかったことはそこにある気がしていますね。

2YOU:この映画のキーワードになっているものは沢山あると思うのですが、その中でやはり大きいのは誹謗中傷だと思いました。

ギュウゾウ:電撃ネットワークが全盛期の頃はまだネットでの批判がそこまでなく、印刷した活字での批判が殆どだったから、批判する側にもリスクがあって。電撃ネットワークを批判していた人だって、当時は匿名じゃなかったからフィフティフィフティだと思っていたんですよ。だけど今は何処の誰だか分からないい人からのネットでの誹謗中傷に病んでしまうでしょ。それはアイドルだけじゃなくてSNS時代には色んな側面で起きてると思うんです。それは日本は勿論、ヨーロッパだろうがアジアだろうが、この悩みはみんな持ってると思う。だからこの映画をちゃんと翻訳して意味を読み取ってもらって、海外にも届けたい。井口監督が渾身の作品を作り上げてくれて、じゃあ僕はフルスイングでこの映画を全世界に届けたい。南米にもヨーロッパにも北米にも、世界中でネットの批判に悩んでる人たちに「諦めないで」と伝えたい。この映画でもアイドルたちは最後まで諦めないから。だから僕はこの映画を世界に届けることを諦めません。

2YOU:7月16日からシネマスコーレにて上映開始なので名古屋にもしっかり届くといいですね。

ギュウゾウ:勿論名古屋にも届けます。あ、でも名古屋のオタク怖いからな。(一同笑)

▼映画「IDLE NEVER DiES」

脚本・監督:井口昇
製作総指揮:ギュウゾウ(電撃ネットワーク)
音楽監督:福田裕彦
出演:桃果、楓フウカ(クマリデパート)、ブラジル(MIGMA SHELTER)、中川美優(まねきケチャ)、工藤菫(アップアップガールズ(仮))、ようなぴ、レーレ(MIGMA SHELTEER)、まお(せのしすたぁ)、日向かほ、琉蛇瓶ルン(めろん畑a go)、pippi(エリクトリックリボン)、キャンディ山内(The Gratefull MogAAAz)、八月ちゃん、八代みなせ、佐藤貴史、濱正悟、大内ライダー、DOTAMA、DJ KEI

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