インタビュー

ヒトリエ【インタビュー】

2019年4月5日、wowakaの急逝により3人体制となったヒトリエ。新たにシノダをボーカルとしてバンドを再構築しながらライブ活動を重ね新しい形へと進化を遂げてきた。2021年2月には新体制として作り上げたフルアルバム『REAMP』は掛け替えのない喪失を経験したバンドだからこそ打ち出せる力強さを放つ作品であった。変わらざるを得なかったバンドが変わらない為に変わる。それがヒトリエの出した答えだ。アルバムを引っ提げ、現在ヒトリエは「Amplified Tour 2021」を行っている。このツアーを経てまたヒトリエは先に進むことだろう。今回2YOUではシノダに焦点を当てインタビューを行った。ボーカリストとして今彼が何を思うのか。これまであまり触れてこなかった名古屋時代の話も含め話を訊く。

2YOU:3人になって変わらない部分と変わらざるを得ない部分があると思うのですが、3人で初めてライブした時にどう感じました?

シノダ:一昨年の6月1日に新木場STUDIO COASTでやったwowakaの追悼ライブが3人での初ライブなんですけど、今までのヒトリエとは全く別物になってしまうわけじゃないですか。それでもヒトリエとしてライブをしているんだなっていう妙な感覚もありまして。だけど、それでいけるんだったらもうちょいやってみようかなっていう。だから変な状態でしたね。歌ってるのは俺だし、でも軸にあるのはwowakaの歌詞と曲だし。

ゆーまお:俺はコーラスが増えましたね。それまではシノダがコーラスをしてたからそれを引き継いだりとか。シノダ程変わることはないです。

イガラシ:演奏に限って言えば、ギターのフレーズをベースで弾くようになったことですね。

2YOU:ボーカルが変わってギターが1本になっているので物理的に変化する部分は絶対あると思うんですけど、ステージに立つ上で精神的な変化はありました?

シノダ:2019年のHITORI-ESCAPEツアーなんかはライブでもしていないとやってられないって状態で。俺たちに訪れた悲しい出来事をライブをすることで埋めていくみたいな。だから具体的にどう変化したとかはないんですけど、ギターボーカルとしてやっていくことにはなったのでそこはちゃんとしていかなきゃなと。

イガラシ:でもやっぱりシノダが一番背負うものが大きいと思うから良い演奏で支えてあげたいなとは思いますね。

シノダ:この2人の実力に関しては完全に信頼しているので。あとは俺の問題なんでしょうね。忙しいは忙しいですよ。やってることとか。でも、それ以上に忙しい事やってきた奴らを見てきてるので。竹内電気が解散するときのサティフォとか。

2YOU:まさにあのときのサティフォさんがフラッシュバックしたのですが、巡り巡ってシノダさんがボーカルになるのも不思議ですよね。シノダさんがバンドで歌い始めたのってワスレナのメンバーと組んだバンドが最初ですか?

シノダ:そうですね。そのバンドはツインボーカルだったんですけど、すぐ辞めてJONNYに入りました。JONNYはまあ、佐藤さん(佐藤美生)もいるし歌わなくても良かったんですけど、自分でも歌いたいなって始めたのがDr.Rightで。

2YOU:ネットでの活動はいつ頃から始めたのですか?

シノダ:それは割とDr.Rightと同じタイミングくらいですね。

2YOU:おふたりがシノダさんを認識したのはいつぐらいの時期ですか?

ゆーまお:俺とイガラシが出会ったきっかけでもあるインターネットシーンで注目度の高い人が集まるライブがあって。その打ち上げに居たのがシノダで。

シノダ:イガラシが呼んだんだよ。

ゆーまお:だからイガラシとはその前に出会ってたんだよね。

イガラシ:そうそう。その日、シノダが東京のイベントにわざわざ名古屋から観に来てくれたのにそのまま名古屋に帰るのが可哀そうで「打ち上げくる?」って誘ったら付いてきたんだよ。

シノダ:人を犬のように(笑)。

ゆーまお:その時初めて話したのにドラムの駄目出しをくらったのを覚えてる。やっぱり何か爪痕を残さなといけないみたいなマインドが当時のシノダは強かったのかも(笑)。

シノダ:名古屋インディーズシーンの悪いところですね(笑)。

2YOU:名古屋目線で見たその頃のシノダさんは何しているのか全然分からない人で。なんかよく東京に行ってるなっていう。名古屋のバンドマンも殆ど知らなかったんじゃないですかね。

シノダ:知られたくなかったんですよ。当時ってまだまだネットの活動とリアルの活動がまだ分断されている状態で、そこはあんまりクロスさせたくなかったんですよ。JONNYの佐藤さんとか変にいじってくるのも目に見えてたし。まあ当時精神的にもよくなかったので、一旦バンド関係の人間を全部Twitterでブロックしたことがあるんですよ。柴山さんもそれに巻き込んで。

2YOU:あ、そういうことか。ブロックされたなって思っていました(笑)。

シノダ:斉藤伸也(ONIGAWARA)だけ残して。

2YOU:あははは。当時、ちょっと話題になってたんですよ。全員ブロックされたねって。

シノダ:当時はまだネットで自分のリアルがばれるのがリスキーな時代だったんですよ。それを恐れていて、いっそのことリアルを遮断しようと(笑)。

2YOU:だからシノダさんの情報が全然入ってこなくて気付いたら「東京にいるらしいよ?」「ヒトリエってバンドの写真に写ってるよ?」って。

シノダ:行方をくらましましたから(笑)。

2YOU:でもそれだけヒトリエの3人との出会いが大きかったんですね。

シノダ:そうですね、ヒトリエが始まった瞬間に腹を括ったので。俺はこのバンドでやっていくことになるだろうなって。

2YOU:今やっと訊けることなんですけど、JONNYやDr.Rightのメンバーには相談とかしたんですか?

シノダ:一応話はしましたよ。なんかみんな「こいつ、もう東京に行くんだろうな」って感じてたみたいで、メシを食いながら「いっちょ行ってくるわ」みたいな。JONNYもDr.Rightも「やれるときにやればいいから解散とかはないでしょ」って話をしたと思う。

2YOU:僕もその時期シノダさんの凄く汚い部屋で話し合いしましたよね。シノダさんだけベッドに座って僕は床に座って(笑)。

シノダ:なんかよくあそこで話しましたよね。

2YOU:で、気付いたら名古屋に居なかった(笑)。

シノダ:とにかくあの頃はスピード感を求めていたんですよ。正直自分の音楽活動に悩んでいた時期でもあったんですけど、そんなときにヒトリエに出会って「ここしか俺が成長出来る場所はない」と思ったんです。

2YOU:でも変な言い方になっちゃいますけど本当に応援していましたよ。だからヒトリエでシノダさんがどんどん成長する姿を見て嬉しかったし誇らしかったし寂しかったんですよ。

シノダ:ああ。

2YOU:そして歌っているシノダさんを見て、今また凄く誇らしく思っています。凄く偉そうな言い方ですけど。

シノダ:まさかこういう形で歌うことになると思わなかったし、こういう言い方したらあれなんですけど、つけがまわってきたなって感じもしていて。自分のやりたいことというか、やるべきなんじゃないかなってことを何処かに一旦置いてきたから今になって歌うことになるっていう。因果ですよね。

2YOU:ちょっと突っ込んだことを聞いてもいいですか?今シノダさんがヒトリエの曲を書くときってwowakaさんを意識して書くことってあるのですか?

シノダ:うーん。僕ってやっぱり主観的というよりかは割と相対的な作り方をするタイプで。だからまずこういう状況下においてのヒトリエのサウンドというのはどういうものなんだろうかってことを意識するんですよ。やっぱりヒトリエのブランドである以上、ヒトリエのサウンドをやらなくちゃいけないとは思っていて、ボーカルが変わった上で「これがヒトリエだ」っていうものをどうやって作ろうかは考えた部分ではありますね。でも結果的にヒトリエになるのは不思議ですね。

2YOU:自然と受け継いでいるものだったり身についているものがあるのかもしれないですよね。意識しなくとも素直に書けばヒトリエになるっていう。

シノダ:ヒトリエが今までやってきたことがありますからね。それに俺達は今まで散々wowakaにしごかれてきた3人なので。それはもう、なんか絶対的な概念として3人にはありますから。だから特別wowakaを模倣する必要もないですし、やろうと思えば自然に出てくるんじゃないですかね。

2YOU:3人で作り上げたアルバムが思いっきり全方向に放たれまくっているのも面白いなと思いました。

シノダ:制限とか制約ってあって然るべきだと思っているんですけど、それが今までの俺達にとってはwowakaだったんですよ。あいつが絶対的な感覚であって、あいつのフィルターを通過出来なければ曲にならなかったので。でも今はそこに対してwowakaがいないっていう制約が生まれたんですよ。じゃあそこで俺は何を作れんのっていうのが課題ではあって。

2YOU:いない制約って凄い。

シノダ:そうなんですよ。あいつ、いないくせに凄いんですよ。

2YOU:リズム隊としてはどうですか?

イガラシ:前からずっと全員ぶっとばしてやりたいと思って弾いているんで、そこは何も変わってないですね。そういう意味でも単純に生れてくる曲の変化に対応した結果の側面の方が自分は強い気がします。今こんな状況で作ることに対しても、それでもやるからにはぶっとばしてやりたいという気持ちでやっているので。

ゆーまお:シノダの曲って凄く難しいんですよ。wowakaで培ってきたテンプレートが何も当てはまらないんです。だから結構苦戦してますよ(笑)。だから、なんとなく慣れていないものを使ってるような感覚は多少なりともあって。

2YOU:ずっとWindowsで仕事していた人がMacに変えたみたいな。

ゆーまお:あれ、右と左が違うみたいな(笑)。

2YOU:シノダさんはボーカリストとしてアルバムを制作してみて意識の変化はありますか?

シノダ:意識の変化っていうか、一度は挫折した身みたいな者がまさかこんな形でやんなきゃいけなくなるというか(笑)。やらない道もあったんですけどね。だけどなんだかんだ歌ってます。

2YOU:やらない道という話もありましたけど、ぶっちゃけ解散の話って出たりしました?

ゆーまお:全然なかったですね。休止の話すら出てない。

シノダ:してないね。まずは6月1日のライブをどうするかって話からのスタートだったし。

ゆーまお:シノダが歌うべきだって話をしたら嫌がってたけど、シノダが歌う決断をしてからはもうやるしかないなって。

2YOU:あの6月1日のライブがあって、その後ツアーもあって、新たなヒトリとして走り出す中でアルバムのリリースもあって。だけどコロナという全く違う角度からの困難がバンドを襲うという。

シノダ:これまではライブをガンガンやっていけばいいやみたいなマインドだったけど、それが一切通用しなくなりましたからね。だからこそ、いかに世に響く曲を書かなきゃいけないなって思うことが増えました。曲の受け皿もどんどん変わってきてるし、恐ろしい程ヒトリエのサウンドカラーもここ1、2年でがっつり変わっちゃったので。その中でやるべきことは良い曲を作ることだけだなと。

2YOU:常に世の流れや流行は変わっていくけど、そこに順応したり絶対順応しなかったり、軸さえブレなければヒトリエの音楽は根本的には変わらないと思いますけどね。まあヒトリエが「これ流行ってるからやろうよ」とか絶対ない気がしますけど。

シノダ:どうなんだろうな。

ゆーまお:大丈夫じゃない?

シノダ:まあ、大丈夫か(笑)。

ゆーまお:そういう瞬間が来たらダサいって言うよ(笑)。

2YOU:真っ先にwowakaさんに「それダサいよ」って言われますよ。

シノダ:散々言われてきましたけどね(笑)。まあ、あいつに自信を持ってヒトリエやってるぜって言えるような音楽を作っていけたらなって思っていますよ。

photo by 西槇太一
interview by 柴山順次

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