インタビュー

怒髪天【インタビュー】

昨年、東京三十年生(上京30年)を迎えた怒髪天がアルバム3タイトルを同時リリースした。入手困難となっていたアルバムの再録音源を中心に構成した『リズム&ビ-トニク’21 & ヤングデイズソング』『痛快!ビッグハート維新’21』の2タイトルと、昨年8月に先行配信された新曲「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」に加え、関ジャニ∞やももいろクローバーZなどに楽曲提供したセルフカバーを収録した『ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!』とフルボリュームかついつもとは少し違った怒髪天を堪能することが出来る。3月からは3タイトルに因んだあの頃と今が交錯するツアーも開催される。コロナ禍だろうが何だろうが、歩き続ける限り旅に終わりは無い。我らが怒髪天・増子直純に話を訊いた。

2YOU:しかしとんでもないボリュームですね。

増子:でしょ?(笑)。コロナ禍以降さ、どの程度ツアーが出来るか分からなかったからレコーディングを中心に東京三十年生だから30曲録るかってね。アルバム3枚分だからね。そしたら意外とツアーも出来たりしちゃって、結果的に今までの活動の中で一番忙しくなるっていう。ツアーの間もずっとレコーディングしてたからね。

2YOU:コロナ禍じゃないとアルバム3枚なんて絶対無理ですからね。

増子:絶対無理だよ。でもこういう機会じゃなかったらやらないこともあるからね。ずっとやりたかった廃盤になってる音源の録り直しとか。

2YOU:再録することで新しい発見はありました?

増子:当時出来てなかったところをきちんと修正出来たね。若い頃は知識もスキルもなかったから。今回ちゃんと譜面におこして曲を擦り合わせていったんだけど、そもそも当時なんか楽譜もなかったからね。そうやって過去のメロディやアレンジと向き合いながら「ここはこうなんじゃない?」って正解を出していく作業をしたことで曲の完成版を作れたと思っているよ。やっと完璧な姿できちんと出せたから曲も浮かばれたかなって。

2YOU:当時の曲を今歌うことで感じることはありますか?

増子:やっぱり恥ずかしいよね(笑)。若い頃の日記を読んでるようなもんだから。でもそれはしょうがないよ。例えば新しい友達が出来たり恋人が出来て家に遊びに来た時に昔の写真を見て笑ってるような感覚に近いかな。

2YOU:ああ、卒業文集を見られるような。

増子:それに近いよね。卒業写真を見られるなんて小っ恥ずかしいでしょ。でも面白いじゃん。あの感覚だよね。

2YOU:増子さんは上京して30年ということですがその当時はどういう心境でした?

増子:大変だったことも沢山あるけど面白そうな所に来たなっていうワクワクの方が大きかったかな。バンドで食おうと思って上京したわけでもないし、取り立ててバンドをやる上で苦しいってわけでもなかったしね。バンドブームが終わってライブハウスに人が全然来ない時期だったから不安はあったけどね。

2YOU:上京しようと思ったのは?

増子:友達のバンドがみんな東京に行くって言うから。だから本当に「一旗あげよう!」とかじゃなくて、友達がみんな東京に行っちゃうから「じゃあ行こうか」って。ほぼそれだけだよ。

2YOU:札幌にいた時間より東京にいる方が長いと思いますが増子さんの中では故郷がふたつある感じですか?

増子:東京で活動するようになって長いけど、じゃあ東京の人になったかって言うとそうでもないし、東京が地元になったとは思えないかな。でもやっぱり自分が住んでる地域くらいはホームになったというか、それこそ30年も住んでいるんだから、行きつけの店があったり、ずっと行ってた店がなくなったり、そういう寂しさも含めホーム感はあると思うよ。

2YOU:少し話を戻しますが今回の再録を聴いて思ったんですけど、増子さんの声が若返っているように感じました。

増子:あの頃よりキーが高くなってるからね。昔は全部同じ歌い方をしてたけど今は楽曲を一番活かす歌い方が分かってきたからキーを高くしたり優しく歌ったり、色々出来るようになったからだと思うよ。

2YOU:それが先ほどおっしゃっていた正解を出していく作業だと。

増子:そうそう。歌もだし演奏もだけど、やりたいと思ってイメージしてたものがやっと出来るようになったのは歌のスキルも楽器のスキルも上がったからだと思う。当時は間違ってることが間違ってることも分かっていなかったからね。それはそれで良かった部分でもあるんだけど。

2YOU:歌っていて一番表現が変わったなって思うのはどの曲ですか?

増子:ブルース的なアプローチとかも含めて「ソウル東京」とかはちゃんと出来るようになったかな。やっぱりこの曲を歌うのは若い頃は難しかったもんね。「うたごえはいまも…」とかもだし『痛快!ビッグハート維新’21』は全般的にあるかもな。20代の半ばで作った曲だからね。

2YOU:他のアルバムも再録したくなったりしませんか?

増子:したいよね。でもリスナーとしては再録ってあまり好きじゃないんだよ。変にレイドバックしたり大人っぽいアレンジにしたりさ、そういうのはやりたくない。だから原曲になるべく近くやったんだけどなんせ原曲は間違ってるから(笑)。そこを直しつつ元のニュアンスを出すのは苦労したね。

2YOU:RPGの「強くてニューゲーム」みたいな。

増子:そうなのよ。そこは意識したね。

2YOU:今回再録だけじゃなく提供楽曲のセルフカバーも行っていますが、これ、滅茶苦茶面白いですね。

増子:面白いよね。楽曲提供って「ここに投げてください」って構えられてるところを目掛けて投げ込む作業だから歌う人のキャラクターとかも想像して作るから自分が歌うことを想定して作ってなくて。バンドでやるアレンジでも作ってなかったから自分たち用にアレンジし直したり。だから自分たちの曲だけど自分たちの曲じゃない不思議な感覚がしたね。そんなの初めての体験だけど凄く面白かったよ。

2YOU:ちなみに女性アーティストに曲を提供する場合はまた違った感覚ですか?

増子:そうだね。同じことを歌うにしてもいい歳した俺が歌うのとももいろクローバーZが歌うのではやっぱり表現というか言葉遣いは変わるからね。でもそこが面白いんだよね。普段の自分は言わないこと、やらない事を託せるんだからね。それがこうやって自分で歌うことになるなんてね。結局全部返ってくるんだよ。

2YOU:それは音楽だけじゃなくて、例えば増子さんが大好きなヘドラのソフビを好きって言い続けた結果ヘドラのソフビを監修することになったり。そうやって全部返ってくるのが面白いし凄いなと。

増子:有難いことだよね。でも考えてみたら、バンドやってゲームやっておもちゃ買って、結局やってることっは10代の頃と変わってないんだよ。それがこの歳になっても続いていて、しかもそれで暮らせるようになってるんだから有難い以外ないよね。

2YOU:ゲームやおもちゃって増子さんにとってどんな存在ですか?

増子:音楽をやってると24時間365日頭の中でずっと音楽が鳴ってるし、歌詞作りにしろアイデアを出すにしろずっと考えているわけで、じゃあどうやって気分転換するかって言ったら音楽以外の何かに集中することでしか切り離すことが出来なくて。そういう意味ではゲームに集中することでリラックス出来るっていう。あとおもちゃは癒しだよ。完全に癒し。

2YOU:日本一のヘドラコレクターとしても増子さんは有名ですもんね。

増子:たぶん世界一だね。とんでもない数を持ってるから。さらに自分でプロデュースして監修したりしてるからね。自分の納得いくものを作れるなんて本当に幸せなことだよ。

2YOU:ソフビを作るのと音楽を作るのって似てたりしますか?

増子:違うバンドをやってる感じかな。やっぱり自分だけじゃなくて誰かとやってることだから音楽を作るのもソフビを作るのも面白いよね。誰かと何かを作るのは本当に面白いよ。

2YOU:コロナ禍で思うように動けないことが多い中、アルバムを3枚作っちゃうこともヘドラのソフビを作ることも物凄くポジティブなパワーだなと。

増子:結局さ、いついかなる状況でもやれることはあるから。駄目なことはやらないけど、やっていいことは全部やる。その姿勢は忘れちゃいけないよね。

2YOU:その姿勢を盛り沢山の擬音で大爆発させたのが「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」ですよね。物凄いパワーをもらいました。

増子:コロナ禍においてロックバンドに何が出来るかって考えたときに、大層なことは出来ないけど、こうやって馬鹿馬鹿しくも力強いロックバンドであり続けることなんじゃないかって思ったんだよね。擬音で元気に大きな声で歌ったらさ、意味なんか分からなくても何を言ってるか分かると思うんだよ。そういうスケールの大きさを打ち出したかったんだよね。

2YOU:「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」という言葉の持つパワーは本当に凄いですよ。初めてこの曲を聴いたときにタイトルをそのままツイートしたんですよ。そしたら「元気が出た」とか「イェー!」とか沢山反響があって。

増子:元気があれば、じゃないけど、こういう時は特に元気で熱く生きることが大事だと思うし。

2YOU:「どデカいロック鳴らすから」って怒髪天が歌ってくれることが本当に支えなんですよね。

増子:そんなこと歌うのダサいでしょ?でもダサいっていうことが大事なんだよ。熱くてダサいっていうのはさ、ロックバンドにとって大事な要素だと思っているんだよね。そこはなくさないでいたい。そこも含めてどデカいロックを鳴らしていきたいと思ってるよ。

2YOU:そこにプラスしてユーモアがあるのが怒髪天で。スペシャルボックスの「ゴールデン玉手箱」にはメンバーがかじった跡のある金メダルが入っていたり(笑)。

増子:金メダルをかじっちゃったのはまさに名古屋の人だからね。でもさ、2021年に何があったかってこの金メダルを見たらすぐ思い出すでしょ。別に金メダルをかじったことは思い出さなくてもいいんだけどさ。そういうくだらないことをやっていきたいよね。紙かプラスチックで作ると思ったらまさかの金属で作っていてびっくりしたけど(笑)。

2YOU:また最近はコロナが猛威を振るっておりますが率直に今はどう考えていますか?

増子:やっちゃいけないことはやらない。でもやっていいことは全力でやる。ツアーもそうだけど、出来ることは思いっきりやるだけだよ。やっぱりライブで生で音楽を聴くっていうのは何にも代えられないものだと思うから、その機会を自分から自粛するようなことはしたくないよね。生きてライブハウスで会う。その約束をこれからもずっと交わしていけたらなって思っているよ。

interview by 柴山順次

リリース情報

リズム&ビ-トニク’21 & ヤングデイズソング
¥3,300(税込)/ TECI-1752
<収録曲>
01. 俺様バカ一代・改(2021 Mix)
02. オオカミに捧ぐ
03. 夕焼け町3丁目
04. 明日への扉(問答無用セレクション”金賞”より)
05. また来いよ
06. 青嵐 -アオアラシ-
07. ショートホープ(短かった希望)
08. 世間知らずにささやかな拍手を
09. 溜息も白くなる季節に…
10. あかね色のトランク
11. COME BACK HOME

痛快!ビッグハート維新’21
¥3,300(税込)/ TECI-1753
<収録曲>
01. 江戸をKILL II(問答無用セレクション”金賞”より)
02. マテリアのリズム
03. ソウル東京
04. 左の人
05. お前を抱きしめたら
06. うたごえはいまも…
07. 風の中のメモリー
08. 夕立ちと二人
09. 救いの丘
10. 新宿公園から宇宙
11. 星になったア・イ・ツ
12. 明日の唄(歌乃誉”白”より)

ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
¥3,300(税込)/ TECI-1754
<収録曲>
01. ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
02. あおっぱな(関ジャニ∞提供曲)
03. ももいろ太鼓どどんが節(ももいろクローバーZ提供曲)
04. 夏番長(TUBE提供曲)
05. はやぶさロッキンGOGO!(はやぶさ提供曲)
06. 魁!祭OTOKO(祭nine.提供曲)
07. 夏’n ON-DO(寺嶋由芙提供曲)

ライブ情報

怒髪天 TOUR“古今東西、時をかける野郎ども” タイムリープ ’22 〜悩み無用〜
3月4日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
3月6日(日)高崎clubFLEEZ
3月11日(金)仙台RENSA
3月12日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
3月18日(金)岡山YEBISU YA PRO
3月20日(日)福岡BEAT STATION 
3月21日(月・祝)小倉FUSE
3月23日(水)滋賀U-STONE
3月26日(土)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
4月2日(土)松本ALECX
4月3日(日)金沢AZ
4月7日(木)奈良NEVER LAND
4月9日(土)広島セカンド・クラッチ
4月10日(日)高松DIME
4月16日(土)水戸LIGHT HOUSE
5月14日(土)大阪TRAD<痛快!ビックハート維新 ’21  〜遅すぎたレコ発ツアー〜>
5月15日(日)大阪TRAD<タイムリープ ’22 〜あなたのド髪きっと生えてくる〜>
5月19日(木)札幌ペニーレーン24<痛快!ビックハート維新 ’21  〜遅すぎたレコ発ツアー〜>
5月20日(金)札幌ペニーレーン24<タイムリープ ’22 〜あなたのド髪きっと生えてくる〜>
5月28日(土)名古屋CLUB QUATTRO<痛快!ビックハート維新 ’21 〜遅すぎたレコ発ツアー〜>
5月29日(日)名古屋CLUB QUATTRO<タイムリープ ’22 〜あなたのド髪きっと生えてくる〜>
6月2日(木)恵比寿LIQUIDROOM<痛快!ビックハート維新 ’21  〜遅すぎたレコ発ツアー〜>
6月3日(金)恵比寿LIQUIDROOM<タイムリープ ’22 〜あなたのド髪きっと生えてくる〜>

怒髪天 東京三十年生特設サイト
http://www.dohatsuten.jp/tokyo_30nensei/
怒髪天 オフィシャルサイト
http://dohatsuten.jp/index_gate.html

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