インタビュー

Climb The Mind × 明日、照らす【インタビュー】

Climb The Mindと明日、照らす。名古屋にて独自のスタイルで活動を続ける両バンドのフロントマンである山内幸次郎と村上友哉に交流があることはあまり知られていない。SNS含めメディア露出が極端に少ない山内。自身の世界観を確立する村上。いつしか彼らは名古屋インディーズシーンにおいてカリスマと呼ばれるようになり、多くのフォロワーを生み出している。Climb The Mindのニューアルバム『蕾』に収録されている「無実の果実」では村上による歌詞の提供も話題となった二人。似ているようで似ていない、だけどやっぱり何処か似ているの山内幸次郎と村上友哉の対談を届ける。

 

2YOU:お二人の出会いはいつ頃ですか?

村上:存在は勿論知っていましたけどちゃんと知り合ったのは10年くらい前だと思いますね。今池祭りで偶然会って声を掛けたんですよ。なんか凄く山内さんに興味があったんですよね。そしたら山内さんが「知ってるよ。割と好きだもん」って(笑)。

山内:気持ち悪いね(笑)。

村上:いや、嬉しかったですけどね(笑)。山内さんは僕の持っていないものを全部持ってる人だと思っていたのでずっと羨ましいと思っていて。例えば欲のなさとか。

山内:ああ、ないね。

村上:僕はCDを聴いてもらったらリアクションが欲しいし、どう思ったかめちゃくちゃ気になるんですよ。でも山内さんはそれもなくて。

2YOU:曲を書いた時点で欲求が満たされるというか。

山内:うん。それで満足。あとは聴いてくれた人が好きに聴いてくれたらそれでいい。どう解釈されても気にならないかな。

村上:それが凄いんですよ。

山内:でも相手が自然にレスポンスくれるのは嬉しいよ。でも自分から歩み寄ろうとは思わない。友哉くんは歩み寄ってきてくれたから仲良くなったけど、自分からは絶対行かない。

村上:好きだっていってくれたじゃないですか。

山内:割とね。(一同笑)

2YOU:山内さんと村上さんは似ているようで真逆ですよね。

村上:全然違うと思う。僕は自己承認欲求の塊だから、認められたいし知ってもらいたい。でも山内さんはそれが全くないんですよ。なのに周りが付いてくるのが羨ましい。セルフプロデュース無しでセルフプロデュースしてる感じというか。

2YOU:発信しない発信の仕方ですよね。

村上:そうそう。しかもそれを意図的にやってないのがズルい。自らミステリアスな部分を作ってるんじゃなくて、きっと単純に興味がないんですよ。そこが凄いなと。

2YOU:山内さんとしてはそこはどう捉えています?

山内:何も考えてないかな。でも売れたいし、人気者にはなりたいよ。

村上:だけどそこに向けては何もやってないじゃないですか。

山内:やってないね。

村上:普通はSNSとかを駆使して少しでも人目に触れるようにとかするじゃないですか。「本日21時に解禁します」とか絶対しないですもんね。

山内:しないね。

村上:でも売れたいんでしょ?

山内:売れたいね。でも面倒くさいことはしたくない。やることと言ったら神頼みかな。

村上:あははは。そもそもなんで売れたいんですか?

山内:僕の作った曲を日本人全員が聴いたら何位になるか知りたいから。

村上:え、全国民をターゲットにしてるんですか?

山内:僕ら、そんな狭い世界じゃないよ。(一同笑)

2YOU:何位か知りたいというのはオリコン的なことですか?

山内:オリコンとかは分からないけど、音楽を一切聴かない人も含めて色んな人が聴いたら僕らが何位なのか単純に知りたいだけ。

村上:それを知って順位が下だったら傷つきます?

山内:全然。だって自分のやりたいことは全部出し切ってるから。

2YOU:結果は知りたいけどその結果は重要じゃないと。

山内:うん。全然重要じゃないね。知りたいだけだから。

村上:欲がないんですかね。その感じって、三浦さん(カメラマン:三浦知也)からも感じるんですよ。

山内:三浦くん、欲なさそう。

村上:いや、山内さんも一緒ですよ。

山内:全然顔違うじゃん。あんなイケメンに生まれたかったよ。

村上:いや、山内さんも味わいがある顔してますよ(笑)。でもなんだろうなあ。売れたいのに承認欲求がないんだもんなあ。

山内:友哉くんは順位とか気にする?

村上:気にするから何かのオーディションとかには出ないですね。それは自分自身がどうっていうより、僕らの音楽を好きでいてくれてる人のことが気になっちゃうから。だって「あなたの好きなバンド、最下位でしたよ」なんてことになったら顔向け出来ないですよ(笑)。

山内:そうなんだ。それもないなあ。

村上:どうやったらそうなれるんすか。普段何聴いてるんですか。

山内:中学生の頃に好きだったのは「たま」だよ。

2YOU:なるほど。「たま」も「さよなら人類」で周りが騒いだけど本人たちは関係ないところでやっていましたもんね。それが原体験にあるのかも。

山内:それはあるかも。自分では気づいてなかったけど。

2YOU:「たま」のユーモアとシニカルな面はClimb The Mindに通じるところがありますからね。

村上:あるある。『チャンネル3』の感じとか。あのアルバムが出たときはびっくりしましたもん。凄くギリギリなところで攻めるなって。

山内:『ほぞ』を出したくらいからライブをすると最前列で泣く人が出てきて。その姿を見て、ちょっとふざけてやろうって思って書いたのが「デスマッチ」なの。歌い出しでいきなり「私はしめ鯖でした」とか言っちゃって。それでも泣く人が出てきたから、どこまでもふざけたら泣かなくなるか挑戦しようと思って作ったアルバムが『チャンネル3』だったんだよね。

村上:そうなんだ!

山内:うん。でも今回のアルバムはふざけてないよ。本気でやってる。

2YOU:『ほぞ』で感じた死生観が『蕾』にはありますよね。

山内:そうだね。死ぬこととか生きることは30代になったくらいからずっと考えていて。全然ネガティブな意味じゃなくて、なんで生きてるのかなって日々思ってるから。

村上:今作は別れもテーマになってますよね。そこを突き詰めると死になるのかもしれないですけど。

山内:あ、そうだね。

村上:山内さん、「なんで生きてるんだろう」とか考えるんですね。

山内:めっちゃ考えるよ。

2YOU:山内さんに近しい人は意外に感じるかもしれないですね。でもパブリックイメージとしてはしっくりくるのかも。

村上:ああ、そうか。リスナーとしてはそのイメージがあるのか。友達としてはちょっと信じられないけど(笑)。

山内:生きてる価値とか凄く考えるよ。

村上:これは僕の意見ですけど、そもそも価値なんて誰にもないのが普通だと思うんですよ。なのに価値を求めるから辛くなるのかなって。生きてる価値を見出すんじゃなくて、どうせ価値なんかないから好きなことだけやろうって考えた方が僕は楽なんですよね。だから価値ある人なんているのかな。

山内:「この人、生きてるな」って思う瞬間があるの。有名なアーティストとか、好きなことで成功してる人とか見ると、価値のある生き方をしてるなって思うんだよね。

村上:でも売れた人が幸せかどうかは別な気がしますけどね。竹原ピストルさんはずっと「今に見てろ」って戦ってきけど、みんなが見てる状況になったら「あれ?」って思ったみたいなんですよ。評価されちゃったから。勿論これは例ですけど。

山内:面白い話だね。

村上:だから何でもないものねだりなんだと思います。僕だって売れてる人やお金持ちの人は羨ましいですもん。

山内:でもそういう人がいきなり引退したり自殺したりするもんね。

村上:そうそう。俺からしたら全員羨ましいのに。

山内:でも友哉くんのことを羨ましいと思っている人もいるんじゃない?

村上:いるかなあ。

2YOU:山内さんは村上さんをどう見てます?

山内:別に。(一同笑)

村上:全然欲しい答えじゃなかった(笑)。ここ、良いこと言うとこでしょ(笑)。

山内:いや、友哉くんって一般人の中でも超一般人だと思っていて。実はど真ん中にいて、そこに音楽や本や映画から知識を付けて大きくなっていってるというか。

村上:それは本当にその通りです。

山内:だから超一般人。一般人の中の一般人。どこにでもいるような一般人。

村上:あははは。でもそういう意識を自分で持っているから音楽を聴いているのかもしれないですね。自分に何もないと思っているから知識でカバーしようとするんですよ。「表現者として不幸じゃなかったことが不幸だ」って言葉があるんですけど、それめっちゃ分かりますもん。

山内:一般人だもんね。

村上:うるさいな(笑)。

2YOU:山内さんは何かに影響を受けて曲を作ることはあります?

山内:ないかな。何かを考えて作るとボツになる。何も考えないで作ったほうがいい曲が出来るしね。あと何かを意識して書いた曲は大体富田くん(Climb The Mind)にボツにされる。なんか富田くんと伴くん(明日、照らす)って似てる気がするんだよね。

村上:確かに!でも伴がいるからある程度のクオリティが保たれているのかもしれないですね。

山内:僕も友哉くんも勝手に独り歩きしたら失敗するよね、たぶん。

2YOU:無意識に暴走する山内さんと得たもの全部を駆使して暴走する村上さんに対してメンバーがリミッターとなっていると。

村上:でもボツにされたら「お前に分かってたまるか」ってムカつきますけどね。

山内:どうしよう。僕、友哉くんの歌詞、結構ボツにしたよね。

村上:あははは。本当ですよ。

2YOU:今作で村上さんに「無実の果実」の歌詞を依頼した経緯は?

山内:なんだと思う?

村上:勿体ぶるの辞めて下さい。どうせ何にもないんでしょ。

山内:近くにいて、駄目出しもし易いから。

村上:あははは。最低だ。

山内:あと家が近い。そして実家も近い。

村上:距離以外で僕達の距離を縮めることは出来なかったんですか。(一同笑)

2YOU:歌詞を提供されるのは初めてですよね。

山内:うん。面白かった。友哉くんは歩み寄って書いてくれたけど、全曲並べて歌詞を見るとやっぱり全然違うよね。僕の書く歌詞は超日本人なんだけど、友哉くんの歌詞はアメリカの小説の翻訳みたいな感じかな。日本人が書く日本語の歌詞と洋楽の翻訳の歌詞って同じ日本語でもニュアンスが違うでしょ。あの感じ。

村上:それ、めっちゃ嬉しい。僕は海外のあの感性を手に入れたいんですよ。今回、山内さんから歌詞の依頼を受けて、色んなことを意識しながら何回も校正して出したんですよ。そしたらボツになって(笑)。でも愛着が湧く前にボツになって良かったです。自分の中で完成しちゃったら捨てれないですもん。でも自分の歌詞を人が歌うのは新鮮だし面白かったですね。出し惜しみなく書きましたから。「ギムレットには遅すぎて」って歌詞とか、本当は明日、照らすでいつか使いたい言葉だったので。

山内:え?使っちゃってよかった?

村上:全然良いですよ。別れがテーマならこれしかなかったから。

山内:そっか。そこ、ボツにしようと思ってたんだよね。

村上:ええええ。

山内:だって意味分かんないじゃん。

村上:俺からしたら山内さんの歌詞なんて基本的に意味分かんないですよ(笑)。

山内:「ギムレットってなに?」って聞いたら、その一行に対する解説が長文できたから、これはボツにしちゃ駄目かなって思って。

村上:まじか。

2YOU:村上さんの歌詞、というか言葉選びって、その言葉ひとつに込めた意味が沢山あるじゃないですか。歌詞になっていない行間にも補足の歌詞が本当はあったり、言葉全てを解説出来るほど意味があると思うので。

村上:それは絶対ありますね。なんとなくの言葉はないです。でもそこが課題でもあって、全部に意味を持たせすぎてるから遊びがないんですよ。

山内:でも僕も歌詞は一行たりとも無駄な言葉は入れないようにしてるよ。聴く人には分からないと思うけど、気に入ってない言葉は一言もいれてない。

2YOU:「無実の果実」というタイトルは?

村上:これ、山内さんが付けたんですよ。なんで「無実の果実」なんですか?

山内:イノセントって意味じゃなくて、実の無い果実的なニュアンスで付けたんだけど、特に深い意味はないかな。

村上:「ギムレット」かなって思ってたんですけど。

山内:いや、今回はふざけたくなかったから。

村上:ふざけてないわ(笑)。

2YOU:お互い共作してみていかがでした?

村上:またやりたいですね。面白かった。

山内:僕もその欲は出てきたよ。今度はもっと有名な人にお願いしようかな。

村上:おい(笑)。

山内:こんないつでも頼める人じゃなくて、色々あたった上で最終手段で友哉くんにすれば良かった。

村上:腹立つわあ(笑)。

interview,photo by 柴山順次

 

 


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