INTERVIEW

東狂アルゴリズム

生きていく中で感じることって色々ある。仕事をしているとき、ニュースを見ているとき、家族といるとき、男でいるとき、大人でいるとき、子供でいたいとき、その時々で感じることを言葉にしようとすると僕は決まって東狂アルゴリズムの歌詞が頭に浮んでくる。希望も絶望も全部抱きしめて大きな声で歌われている彼らが歌う生活の歌は僕とあなたとあなたとあなたとあなたの生活とも密着した歌。月影、陽と名前を変えながら、形を変えながら、歩き続けてきた20年のキャリアで常に今が絶好機な東狂アルゴリズム。そんな彼らが完成させたニューアルバム『VISION』はバンドが提唱するリズム&歌謡を叩きつける名盤だ。バンドの心臓、佐佐木春助に話を訊く。

Q.東狂アルゴリズムの音楽は生活と密着した究極のラブソングだと思っていて。
佐佐木:おお!

Q.生きていく中で感じたり考えたりしてその感情を言葉にしようと思うとザ・ブルーハーツか東狂アルゴリズムの歌詞になってしまうんですよ。
佐佐木:それめっちゃ嬉しい。俺が歌いたいのは血の通った生活のラブソング。ラブソングって聴くと恋の歌だと思われがちですが、うちのラブソングは愛の歌。恋愛を歌ってるバンドを否定する訳じゃないです。自分も普段そういうのも聴きますし。聴くのはいいけど自分が歌うのはなんか違うかなと。

Q.誰に向かって歌ったらいいか分からないと。
佐佐木:そういう事なんです。恋と愛は違いますから。恋は一人にしか歌えませんが、愛する人は全国にたくさん居るし、愛なら何人の人にも向けて歌えるじゃないですか。スウィートな恋の歌が聴きたいなら、他のアーティストを聞いて貰えればいいかなと。ウチは生活を乗り越えるための歌、血の通った愛の歌を歌います。ウチに恋の歌は有りません。

Q.東狂アルゴリズムが何をどう歌いたいか、それは「東狂アルゴリズムのテーマ」に表れていますよね。
佐佐木:あの曲に、バンドに対する思いを募りました。20年バンドやってきてやっと辿り着いた歌ですね。自分がこのバンドで何を伝えたいのか、あの曲を作詞しながら思いました。「東狂アルゴリズムのテーマ」が現時点での総括ですね。

Q.この曲で「半径5メートルを幸せにする」って歌っているじゃないですか。それがいつか世界を変えることに繋がると思うんですよね。
佐佐木:半径5メートル内って自分の日常生活に居る人のことで、僕は本気で世界平和を願ってますが、実現する為にはいきなり世界規模じゃなくて、まずは自分の身近な人から幸せにしていく事が大事やと思うんですよね。半径5メートル内から幸せにして、そこから半径10、半径100って広げていけばいつか世界平和になるはずだと考えてます。俺が生きてる間には世界が1つになるなんて無理でしょうけど、まずは願い続けることが大事。願って行動しなければ、永遠に世界は1つになりません。何百年後なのかもっと先なのか分かりませんが、いつか世界平和になったらいいなと思ってます。その第一歩は半径5メートルを幸せにすることやと思ってます。

Q.アルバム冒頭の「vision」で「僕らに永遠はない」って歌っているじゃないですか。だからこそ今この瞬間を全力で生きないとなって強く思いました。
佐佐木:レコーディング終了間近でしたが、どうしても入れたくなったので急遽弾き語りで入れました。あのメッセージが今、一番お伝えしたい事かもしれません。人間はいつか絶対死ぬんですから。家族と一緒にいられる時間も永遠じゃないんですよね。子供もどんどん大きくなっていくでしょ?だからこそ最初で最期の瞬間を噛み締めて生きたいんですよね。子供が成長する瞬間なんて見落としたら二度と見られませんもんね。俺達は絶対にいつか死ぬんですから、死ぬ瞬間まで全てに目を凝らしていたいです。

Q.どう死ぬかよりどう生きるか。そのヒントが東狂アルゴリズムの歌にはある気がするんですよ。例えば「男は辛いよ」は男の生き様を歌っていて。
佐佐木:あの曲、結構勇気要りましたよ(笑)。男女差別の歌やと思われそうで。辛いのは男だけじゃないって女の人に思われるんじゃないかって。

Q.なるほど。それで曲中に女性目線で「辛いのは男だけじゃないわ」というフォローもあると(笑)。
佐佐木:その後に「分かってるさ、でもな〜♪」って(笑)。男は情けない生き物なんですからそれくらい大目に見てよねっていう(笑)。もちろん女の人が辛いのも分かってる。分かってるけど、「男は辛いけど頑張ってね」って言って男にはガンガン働かせとけばいいっていう曲ですね(笑)。

Q.男らしさって何だと思います?
佐佐木:なんやろう…。不器用なとこかな。あと基本的にアホなんでしょうね。それでいて夢見がち。でも夢を見ることって誰かに迷惑をかけるわけじゃないんですよね。僕の場合、家族に迷惑かけてますが(笑)。それ以外は誰にも迷惑かけてないつもりです(笑)。そこはしっかりフォローしつつ、夢は持って欲しい。何歳でも。

Q.それこそライブのMCでよく言っている「現実を見た上で夢を見る」ですよね。
佐佐木:結婚したり子供が出来たらバンドやるの難しいって言われてます。確かにそうですが、僕の場合むしろそれキッカケで愛に目覚めましたから。今の状態がベストやと思ってる。愛する家族がいて、信頼出来るメンバーがいて、今が絶好期です。

Q.バンドを20年やっていると取り巻く環境も生活も変るじゃないですか。その中で「今が絶好調」って言えるのは素晴らしいですよ。
佐佐木:逆にそう言えなくなったらそれがこのバンドの終わる時ですね。今の東狂アルゴリズムを聴いて「昔の方が良かった」って思う人もいると思います。でも自分が昔の方が良かったって思ってしまったら、そこで終わり。今がかっこよくなかったらやりたくない。
俺、普段ジョギングをしてるんですけど、この歳になっても走れば走るだけ新記録が出るんですよ。て、ことは俺の身体はまだ終わってない、限界じゃないってこと。音楽も一緒やと思ってます。まだ伸びしろもある。やればやるほど新記録が出せるはずです。毎日、新記録を更新したいんですよね。

Q.だから東狂アルゴリズムが武道館を目指していることは冗談でもなんでもなく、日々の積み重ねの先にしっかり見えているものなんだろうなって。
佐佐木:本気で武道館を目指しているし、一生バンドやりたいから武道館が出来るレベルのバンドまで売れないと存続の危機が迫ってます(笑)。売れたいと思ったキッカケは東京から滋賀に帰ってメンバーを1から集めなあかんかった時。メンバー募集かけても全然集まらなくて、「もしうちが武道館クラスのバンドやったらすぐメンバー集まるんやろうな」って思ったんです笑。そのとき初めて売れたいと思った。そこからバンドに向上心を持ち始めました。それまではのんびりやってましたから。だから集まってくれたメンバーには感謝しかないし、メンバー全員の人生を背負う覚悟でやってるから、だったらこのメンバーで武道館を目指すことが正解なんじゃないかなって。実際、武道館行けへんかったとしても、目指すことに意味があると思います。

Q.ウサギとカメの話あるじゃないですか。あの話でなぜカメが勝ったかって、カメを見て走ったウサギに対してカメがゴールだけ見て走ったからだと思っていて。それは「人生万歳」で歌われている「勝負しない奴」と「勝負する奴」の対比にも繋がるなと。
佐々木:ああ、なるほど。そういう解釈をしてくれてるんですね。例えば、「夢を見てる」って公言すると応援してくれる人と夢見る事を否定する人に分かれる。これは自分の経験上ですが応援してくれる人は自分自身も何かをやり遂げている人、もしくわ自分も夢を持ってる人。否定してくる人は言い方悪いけど夢を持った事がない人、持ってたけどその時のこと忘れちゃってる人、目標持って生きた事がない人。「歳も歳やのにいつまで夢見てるの?」って否定する人に。俺が夢を叶えて身をもって証明してその人にも夢を持ってもらえたらいいなと思います。最終的には俺を否定した人にもハッピーな気持ちになってもらいたい。

Q.夢を見たものが勝つということは「THE布団ドリーマー」でも歌われていますよね。
佐佐木:まさに。40歳になってもまだ夢見ることも人生も全く諦めてません。叶うかどうかは別にして、人生、挑戦し続けたいです。そんな人生って、楽じゃないけど楽しいと思います。楽しむのって楽じゃないんですよね(笑)。夢見て生きて最後にアカンかったらすいませんでしたって家族に謝るわ(笑)。でも、挑戦し続ける姿だけは進行形で見せておきたい。

Q.何もやらずに後悔するより、結果が駄目でもやった上で駄目だったほうが後悔はしないですよね。
佐佐木:やらずの後悔はホンマに嫌なんです。死ぬ瞬間に後悔するなんて絶対に嫌です。自分がどんな死に方するかわかりませんが(笑)。

Q.自分の代で出来なかったら、初代のピッコロ大魔王が死ぬ間際にマジュニアを産み落としたみたいに子供に託せばいいわけで。
佐佐木:あははは。ホンマそうですね。あんまり公言したくないけど、俺が自分の音楽、言葉をCDにして残す意味は自分の子供に言葉を残したいって気持ちがあります。勿論子供だけに向けて歌っている訳じゃなくてライブに来てくれるお客さんに向けて歌っているんやけど、子供が大きくなって俺のCD聴いたときに我が子の背中を押したり、手を差し伸べるような言葉を残しておきたいです。

Q.あと今作を聴いて感じたのですが、楽曲の振り幅も凄いですよね。「チップスター」とか歌詞含めて他の曲とは明らかに毛色が違うなと。
佐佐木:あれ、不思議な曲でしょ(笑)。うちの曲って暑苦しいってよく言われますが、「チップスター」だけは歌詞も演奏も違います。

Q.そう、ジャズっぽいなと。
佐佐木:ベースとドラムはジャズです。まず早いテンポのジャズがやりたくてドラム、ベースを作ってそれに適当に歌詞をのせました。久々に適当な歌詞です。この曲はアルバムの箸休め的な曲になればいいなと。でも、気に入ってくれる人たくさん居ると思いますよ。

Q.アルバム全体を通してはバンドが提唱する「リズム&歌謡」を見事に体現したアルバムですよね。
佐佐木:自分達のやりたい音楽を現すジャンルを考えたときに、パンクでもないしリズム歌謡でもないし、何がしっくりくるかと考えていたらやっぱ新しいジャンル作るしかないなと。で、「リズム&歌謡」って思い浮かんで。怒髪天の「リズム&演歌」からのインスパイアやけど、このジャンルを打ち出して三年程やってきて、今回のアルバムでやっと成立出来たなって思います。時間は掛かったけど、「これがリズム&歌謡です」って言える作品が出来たと思う。やっと(笑)。

Q.アルバムのラストを飾る「わからんわ」はまるで「ドリフ大爆笑」のような曲だなって思いました。全員タキシードで楽器を持たずに歌って欲しい(笑)。
佐佐木:そう!ホンマそれ!バラエティ番組のエンディングテーマ的な!アルバムの最後を飾れる感じ!そこ伝わってるのめっちゃ嬉しい!あと「琵琶湖の水止めたろか音頭」。あのMVはドリフとクレイジーキャッツ!あの曲、怒髪天の増子さんや四星球のヤスオが大絶賛してくれたんです。大変シュールな映像やけど、増子さんとヤスオ辺りは絶対分かってくれるって信じてたから、絶賛してくれて嬉しかった。でも、関西以外の場所でライブでこの曲やってもこの歌詞の意図がお客さんに伝わらず、途中で心が折れる時もあります(笑)。

Q.しかも曲が長いから(笑)。
佐佐木:だから途中でやめる時ありますよ。「続きはYouTubeで!」て言って(笑)。

Q.あははは。でもライブで「琵琶湖の水止めたろか」を聴いているときは東狂アルゴリズムの信条でもある「面白いことを考えてあんたを楽しくさせたい」って言葉がギューン!って刺さりますよ。
佐佐木:そこも大事にしております。目の前に居る人を楽しませるのが生き甲斐ですから。そういう場所を提供してくれているライブの企画者、ライブハウス、メンバー、そしてお客さんにホンマに感謝してる。感謝してるから感謝を「楽しい」に変換してお返ししたい。そういう気持ちを素直に言えるようになったのはこの年齢やからかもしれませんね。

Q.年輪のようなものがちゃんと出てますよね。曲にもライブにも。東狂アルゴリズムのライブを観ていたら年を重ねることが楽しみになりますし。
佐佐木:そこもめっちゃ伝えたいとこ。歳を取ることに悲観的になるより、楽しみたい。
知り合いのライブハウスの店長でも、バンドの先輩でも50歳越えても滅茶苦茶な人いっぱいいるし(笑)。そう言う人見てたら勇気貰える。歳を取るのも悪くないなと。我が道を行く先輩方が我々の周りには多いので(笑)。みんな裏では苦労もしてるやろうけど。そういう先輩らも現実を見つつ何がしかの夢を見ている人達やと思う。俺らもそういう背中を若い子に見せられたら良いなって思ってます。それがうちの場合なら、家庭持って、仕事もしながら武道館に立つことだったりするし。そんな先輩居たら頼もしいと思うので。別に実際武道館立てなくても、武道館レベルのバンドになりたい。人生削ってやってるんですから一人でも多くの人に東狂アルゴリズムを観てもらいたい。40歳過ぎて家族の理解もギリギリでバンドやらせてもらってて「人気なくていい」なんて口が裂けても言えません。

Q.それだったら家族に時間を使ったほうが良い。
佐佐木:そうです!僕は半径5メートル内の人達から理解を得てバンドをやらせて貰ってるんです!(笑)。だからバンド出来てる環境に感謝してるし、その環境にお返ししたい。
これは遊びじゃない。武道館やりたいとか、売れたいとか、口に出したらダサいって言われる時もあります。でもウチは「武道館目指してます!夢を持ってやってます!」って言うことで応援してくれる人や理解者も沢山増えました。応援してくれる人らのためにも俺は本気で武道館を実現したい。売れたいわぁ(笑)。レーベルや家族、友達、ライブ来てくれるお客さんにはほんまに感謝してます。ウチがバンドをやれる環境に居させてくれる全ての人に、いつか何らかのお返しをしたいです。

Q.平日仕事してそのまま仕事終わりにMステ出るとか。
佐佐木:それ!面白い(笑)。まさにワーキングクラスヒーロー。そういうバンド、1つくらいあっても面白いと思いますよ。


東狂アルゴリズム
タイトル:VISION
2018年5月30日発売
¥1800(+税)
FOUM-022

https://tokyoalgorithm.jimdo.com/

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