PEDRO

PEDRO
SOX & TRUCKS & ROCK & ROLL TOUR
2021年2月2日(火)名古屋・CLUB ROCK’N’ROLL

世界は人生は生活は、なんて残酷で無情なんだろう。そんな局面を何度も目の当たりにした2020年。ライブハウスで当たり前のように鳴っていた音を鳴らすということが特別なことになって早1年。時経つの早しっすよ。じゃあいつライブが出来るんだって指くわえて待っていたら、気付い頃には時すでに遅しっすよ。実際PEDROだって2020年は「GO TO BED TOUR」が全公演中止になったけれど「GO TO BED TOUR IN YOUR HOUSE」と題した無観客ライブや1日2公演での「LIFE IS HARD TOUR」を敢行しライブバンドPEDROであることを証明し続けてくれた。目に映るものは変わり続けていく。それはきっとこれからもずっとそうだと思う。でも、だけど、道が消えたら新しい道が現れる。いつかコロナが終息したとして、次何が起こるかなんて分からないけれど、ピッコロが現れてベジータがやってきてフリーザがきたってワールドエンドは来なかった地球だ。これからもきっとずっと、壮大な浪漫を乗っけてグルグル回り続けるだろう。話が異次元に飛んでいきそうなので時を戻そう。PEDROだ。

2月13日に日本武道館での単独公演を行うPEDROがその直前に全国3箇所で行った「SOX & TRUCKS & ROCK & ROLL TOUR」。東京は新代田FEVER、名古屋は新栄CLUB ROCK’N’ROLL、神戸はMUSIC ZOO KOBE太陽と虎といったライブハウスツアーだ。このツアーが発表されたときの衝撃たるや凄まじいものだった。それは、今もなお先の見えない暗闇の中にあるライブハウスシーンにおいて希望だと思った。中でもPEDRO史上最少キャパである新栄CLUB ROCK’N’ROLLでのライブ開催は地元名古屋のライブハウスシーンだけでなく全国各地のライブハウスにとってハッピーなニュースとなった。両手を広げて空を飛べそうなほど。

ツアーど真ん中の2月2日、名古屋は新栄CLUB ROCK’N’ROLLに足を運んだ。様々なルールやガイドラインの中、それでもライブハウスがライブハウスとしてその扉を開けていることが溜らなく嬉しかった。真っ赤な空間に包まれたCLUB ROCK’N’ROLLの異様な世界観をたまらなく愛しく感じながら開演を待つ。ライブハウスにとって苦しい時期がずっと続いている。しかし徹底された対策となにくそ根性、くじける暇があったらぶち壊せ根性でここまでやってきたんだ。そんなライブハウスで今PEDROがライブをする意味や意義を考えながらPEDROの登場を待つ。ステージにはCLUB ROCK’N’ROLLのバックドロップ。キャパ規制のため、数えられるほどの人数で、だけど少数精鋭な眼差しでステージを見つめるフロア。ライブハウスでライブをする決断、ライブハウスにライブを観にくるという決断。集まった人の数だけストーリーがあるだろうな。そんなことを考えているとPEDROがステージに現れ、まるで全員の気持ちを代弁するかのように「後ろ指さす奴に中指立てる」でライブが始まった。印象的なワウで空気を一変させた田渕ひさ子のギター、ずっしりしたリズムでバンドを支える毛利匠太のドラム、そこに絶対的な信頼を持って自由に乗るアユニ・Dのベースと歌。アユニ・Dのソロプロジェクトとして始まったPEDROはこの3年間で完全にバンドになっていた。感情が暴動しそうだ。

そこからはもうジェットコースターのようにあっという間だった。CLUB ROCK’N’ROLLのステージの性質上か、いつもとは違うセットでの演奏が新鮮であったり、アユニ・Dと田渕ひさ子が「せーの!」と振りかぶっての「WORLD IS PAIN」だったり、「Pistol in my hand」の狂気だとか、「へなちょこ」の疾走感だとか、スリーピースというバンドとしてのミニマムな構成でマキシマムな音像を作り上げる展開に、声は出せないし暴れることも出来ないけれど心のずっと奥の方から湧き上がるものが集まったオーディエンスから溢れ出ているよう。キャパを制限したフロアでありながら熱気はいつも以上だ。「生活革命」や「空っぽ人間」ではアユニ・Dの表現力の進化にも驚かされた。少しだけセンチメンタルな気持ちになっていると「乾杯」で文字通り乾杯したり「ライブの楽しさってこれだよな」と何度も思った。何度も何度も思った。ライブハウスという空間の中で「無駄なことなんてこの世界にはない」「僕の世界は僕が正解だから」とPEDROが肯定してくれる。「感傷謳歌」は今日ここで歌うために生まれた曲なんじゃないかなんて思ってしまうほど。

 

当たり前が当たり前じゃなくなって、日常が大きく変わって、その中で何とどう向き合っていくか。新しい価値観と新しい在り方でやってやるしかないじゃないか。何が起きたって何があったって今見ている世界が今の全部なんだから、もう先をみていくしかないし、何も恐れなくていいのかもしれない。今このタイミングでPEDROがライブハウスツアーを行ったことだったり、アユニ・Dがバンドを続けていることだったり、続けていくことだったり、BiSHの存在だったり、全部が正解だし全部が僕らの生活の一部、いや生活そのものだ。嫌なことがあったら次はいいことがあるって噂はどうやら本当かもしれない。だってきっとこんな状況じゃなかったら今日のライブはなかったはずだから。色んなことを確かめるように回った「SOX & TRUCKS & ROCK & ROLL TOUR」でアユニ・Dが何を感じて何を見つけたのか。その全部を抱きしめて、全部を持ち寄って、いよいよ2月13日、日本武道館にPEDROが立つ。

photo by kenta sotobayashi
text by 柴山順次