田中聖

田中聖が「KOKI」「JOKER」名義でシングルをリリースする。バンドの解散、ソロを経て完全DIYな活動スタイルで発信し続ける田中聖。新型コロナウイルスの影響によりライブ活動が制限される中、YouTubeを用いた彼の発信は「笑うこと」といった当たり前の感情を思い出させてくれたり、塞ぎ込んでいた何かを解放したり、日常に色を取り戻す役目を担っている。そんな田中聖が放つ久し振りのリリース作はKOKI名義「2U」とJOKER名義「Oh yeah~chapter3~」のセルフスプリット盤。自分を救ってくれた人を今度は自分が救う番。そう語る田中聖が、過去の田中聖を背負った上で最新型の田中聖を解き放つ。

 

2YOU:新型コロナウイルスで活動が制限される中、聖さんはファンを楽しませるための発信を常に行っている印象があります。

田中聖:日本全体が殺伐としていたじゃないですか。SNSを開いてもあちこちでバチバチに火花が散っていて凄く嫌だなと。「ステイホームを呼び掛けてくれ」という声も届いていたので、じゃあ家で出来ることをしようと思ってYouTubeを始めたり、自分自身も何かしなきゃなと思って曲を作ったり。コロナって天災と一緒で誰にもぶつけよおうがないじゃないですか。だからせめて楽しいことをひとつ増やしてあげたくて動画を撮り続けていますね。

 

2YOU:聖さん自身も何本もライブが中止になっていましたよね。

田中聖:20本くらい無くなりましたね。正直、3月くらいはまだ舐めてたんですよ。でもちょっとずつ現実を知ることになって、ライブが全く出来なくなって、歌えなくなるかもしれないっていう恐怖を感じるようになりました。漠然とした感覚だったけど、これは本当にやばいことになったなと。

 

2YOU:聖さんにとって歌うことは生きることで、それ自体が制限されるとは思っていなかったことですもんね。

田中聖:本当に。正直それで仲間のバンドも解散したし、メンバーがばらけてしまったバンドもいて。当たり前だったものが無くなっていくのが本当に怖かったです。

 

2YOU:窮地に立たされたライブハウスや仲間に対するアクションも聖さんは積極的に行っていますよね。

田中聖:俺が問題を起こしたときに救ってくれたのがライブハウスだったし仲間だったんです。そうやって俺を助けてくれた仲間達が助けを求めている状態なら、自分に出来ることは全部動こうと決めたんですよ。今動かないと一生後悔すると思ったし、恩返し出来るのは今しかないって思ったんですよ。恩返しって、しようと思って出来るタイミングって中々ないじゃないですか。今回はその恩返しのタイミングを貰えたと思ってるので。

 

2YOU:コロナ禍で笑うことすら忘れていた時期もあったんですけど、聖さんのポジティブな発信についつい笑っちゃうこともあって。YouTubeの「誰でも出来る簡単自宅トレーニング」とかめちゃくちゃ笑いましたから。「誰も出来ないでしょ」って。でもその瞬間、「あ、今笑ってたかも」って思ったんですよ。

田中聖:そうやって笑ってもらえたら本望というか、その為にやってる部分もあるので。良い意味でコロナなんて大したことないって思わなきゃやってられないじゃないですか。勿論最大限の注意は必要だけど、そればっかりにならないように、俺はいつも通り発信するし、いつも通り戦う。俺みたいにゼロからやってる人間を見て笑ってもらったり、それこそ弄ってもらったり、それが誰かの笑顔に繋がるならそんな嬉しいことはないですね。

 

2YOU:弄られるといえばスポーツ新聞とのやり取りも最高ですよね。

田中聖:東スポですよね(笑)。昔からスポーツ新聞とかって「それ、記事にする?」ってことを好き勝手書くじゃないですか。俺も色々書かれてきたんですけど、そこに対して戦々恐々と「この野郎、事実と違うこと書きやがって!」と怒るより、ネタにして笑いに変えるのがエンターテイナーだと思うんですよね。

 

2YOU:ああ、HIP-HOPのビーフ的な。

田中聖:まさに。見えるところでディスられたら見えるところでアンサーを返して、その果てに東スポと田中聖で何か出来たら面白いなって。そういう部分ってHIP-HOPにもROCKにもあるし、俺もそういう文化に触れたとき、子供ながらにワクワクしたんですよ。ZEEBRAさんとKJさんのビーフとか。それを俺は東スポとやってる…のかな(笑)。

 

2YOU:HIP-HOPとROCKも聖さんを形成する上で大きなものだと思うのですが、音楽的なバックボーンは?

田中聖:始まりは完全にHIP-HOPですね。中1の頃にBUDDHA BRANDの「人間発電所」から入ってドップリ。その頃はバンドでラップしてるのを聴いて「チャラチャラしてんじゃねえよ」って思っていたんですけど、山嵐、宇頭巻(UZMK)、RIZE、DRAGON ASHを聴いて、ミクスチャーにハマっていくっていう。あとはSlipknotやNIRVANAやhideみたいなアイコン的な存在にも影響を受けましたね。

 

2YOU:そういった影響を聖さんは当時から落とし込んでいましたよね。

田中聖:踏襲したかったんですよ。当時の俺はバリバリにメジャーな場所にいて、聴いてくれる人も女の人やお茶の間の人が多かったんですけど、そういう人達に向けてラップ出来たらかっこいいなって思っていて。だけどつい最近、UZMKのJYUさんやROTTENGRAFFTYのNOBUYAさんと話したときに「当時から俺らを意識していたのは感じていたよ」って言ってくれて、届いていたんだなって。あの頃はアイドルがアイドルとしてアイドルらしくないことをして認めさせたら正解だと思ってやっていたんですよ。そこは自分の中のポリシーでしたね。

 

2YOU:それこそ坊主にしたときとか。

田中聖:あれも俺の中のアンチテーゼの表れですね。大人にはめちゃくちゃ怒られましたけど(笑)。でも坊主にしたことで男の人のファンが増えたんですよ・そういう意味では成功だったと思います(笑)。

 

2YOU:今回のシングルにはJOKER名義での新曲「Oh year~chapter3~」も収録されていますよね。

田中聖:バンドをやって、ひとりになって、今年から事務所もなくなって何の後ろ盾も無くなったときに、よくよく考えたらこれまでの自分はアイドルだったことを捨てようとしてたことに気付いたんです。「俺はバンドマンだから」って、築き上げてきたものに目をつぶっていたなって。だからアイドル時代に作った「Make U wet」の続きを作ろうと思ったんです。そこを背負った上で、バンドマンとして戦おうって。だからこそ今、JOKERを名乗りたかったんです。そこに対してKOKI名義の「2U」では今の自分を一番踏襲した歌をラップメインで入れて、重い攻め方をしました。マズゴミって言葉がありますけど、コロナで良いものと悪いものがくっきり分かれた印象があって。誰かを救おうと発信するものと、フワッとした情報をただ垂れ流しているだけのもので明暗が分かれたなって。

 

2YOU:だから「同じ穴のムジナなんて思ふことなかれ」だと。

田中聖:あの歌詞を入れたのはそういうことです。俺は2YOU MAGAZINEに救ってもらったし、俺と同じように誰かを救う媒体だと思っていて。夢を持っている人、今頑張ってる人。それを応援する人。みんなを救える媒体だと思っているんです。だからこの曲には2YOUから「2U」と名付けさせてもらいました。媒体という同じ立場でも所謂マスゴミと言われるものと同じ穴のムジナと思うことなかれっていう。そこを押し出したかったんですよね。

 

2YOU:「同じムジナと思ふことなかれ」はhideさんの「DOUBT」のサンプリングですよね。

田中聖:あははは。さすがです。hideの歌詞のサンプリングは2YOUと作るなら絶対に入れたかったんですよ。

 

2YOU:「F.O.M.O.」でも「ROCKET DIVE」のサンプリングがあったり、HIP-HOP的な手法とルーツの落とし込み方にニヤニヤしちゃいます。

田中聖:「F.O.M.O.」の「Sail away」ってワードですよね(笑)。そうやって自分のバックグラウンドにあるものを落とし込むことで、そこに気付いた人がニヤリとしてくれたら嬉しいなって。音楽的にもエンタメ的面にもそういう要素は詰め込んでいきたいですね。

 

2YOU:今回のシングルの攻め方は「Oh yeah~chapter3~」にも色濃く出ていますが、相変わらずこのシリーズはエロいですね(笑)。

田中聖:滅茶苦茶エロいです(笑)。過去の「Oh yeah」もエロい曲だったんですよ。それこそステージにベッドを置いて女性ダンサーと絡んだりしていましたから。でも親子席からクレームがあったんです(笑)。

 

2YOU:あははは。教育に悪いと(笑)。

田中聖:「子供には見せられない」って(笑)。そこも含め「Oh yeah」はアイドルとしての自分がずっと挑戦してきた曲なので、その頃の自分を背負って、今の自分が「Oh yeah」を完成させたくて形にしたのが「Oh yeah~chapter3~」なんです。

 

2YOU:当時からのファンにとっても嬉しいプレゼントになりましたね。

田中聖:バンドでファンになってくれた人も最近ファンになってくれた人も本当に有難いけど、こんな俺をずっと支えてくれているのはアイドル時代からのファンなんですよ。正直、ファンを辞めるタイミングなんてアホほどあったじゃないですか。それでもちゃんと支えてくれるあの時代からのファンのみんなには感謝しかないです。だからそんな人達に対して、自分の音楽人生を全部詰め込んだプレゼントが出来たと思っています。

 

2YOU:親子席にいた子供が大人になって受け取ってくれたら最高ですね。

田中聖:きっとあの子も大人になって、歌詞の意味とか分かるんでしょうね(笑)。大人になって分かることもあると思うし。歌詞の意味も分からず何となくかっこいいなって聴いていた音楽が実はこんな意味だったみたいな(笑)。そう思うと音楽って凄いですね。聴く時期によって違って聴こえたり、何かを思い出したり出来るんですもん。そうやってずっと音楽は自分の中で寄り添ってた気がします。

 

2YOU:寄り添い方という意味では聖さんの曲は聖さんそのものですよね。

田中聖:自分でしかないですね(笑)。それこそ事件を起こして、他の仕事を考えた時期もあったし音楽以外の表現方法を考えたこともあったんですけど、自分が何を思っているかを伝える手段として曲に乗せて歌詞にする以外の方法が見つからなかったんです。伝え方も戦い方もこれしか知らないので。昔、虐められていたことがあるんですけど、そいつらに「この野郎!」って言えなかったんです。でも音楽でだったら言える。それが俺の戦い方なんです。

 

2YOU:自分の戦い方を見つけることって中々難しいと思うんですよ。

田中聖:やりたいこととやらなきゃいけないことが一致している人って中々いないですよね。俺は幸いそれが一致しているので「まだやってるの?」って言われてもしがみついていきたいと思っています。

 

2YOU:言葉を選ばずに言うと、失敗したことがある人の言葉には説得力があるんですよ。そういう意味では聖さんの言葉って今悩んでいる人にしっかり届くと思っていて。

田中聖:そう、本当にそうなんですよ。全てが順風満帆にいく人生なんて中々ないと思うし悩んでいる人は沢山いると思うんですけど、そういう人に対して「俺見てみ?」って言える説得力が俺にはあるから(笑)。「とんでもない失敗をしたけど今の俺を見てみて」って言えるような活動をしていかないと駄目だと自分にも言い聞かせているので。その為には俺も今まで以上に頑張らないといけないですからね。何が成功かなんて分からないけど、絶対に成功しなきゃいけない。それは俺を必要としてくれる人の為にも自分の為にも。そう思っていますね。

 

interview by 柴山順次

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