HUSKING BEE

昨年結成25周年を迎えた日本が誇るパンクバンド、HUSKING BEEが通算10枚目となるアルバム『eye』を完成させた、新型コロナウイルスの影響により活動の自粛を余儀なくされた2020年。そのコロナ禍において「自分に出来ること」「自分の好きなもの」を本質から見つめ直すことで作り上げた12曲が収録された今作はHUSKING BEEの飽くなき音楽愛を隅々まで落とし込んだハイテンション且つ男の強さと哀愁が同居したアルバムとなっている。10枚目にして抑えきれない衝動を爆発させた傑作を作り上げたHUSKING BEE磯部正文に話を訊く。

 

2YOU:コロナ禍でバンドにも生活環境にも大きな影響があったと思うのですが、この期間はどう過ごされていましたか?

磯部:3月に緊急事態宣言が出てその時点で決まっていたライブが全部出来なくなったんだけど、当初はここまで長引くとは思っていなくて。なんとなくゴールデンウィークには出来るんじゃないかなって。だけどあっという間にゴールデンウィークも過ぎちゃって「不要不急の用事以外は東京を出ないでください」なんて事態になって。本当はHawaiian6と一緒に札幌と岩手に行く予定だったけどそれも出来なかったり、どうしても悲観的になりがちだったんだけど、世の中を見渡せば俺達以上に大変な思いをしている人もいるから泣きごとばかり言ってられないなと。それで自分に出来ることをやろうと思ったときに、やっぱり自分のやれることは歌うことだったんですよ。それで配信ライブをしたり、曲を作ったり、とにかく家でやれることをしようって思っていました。

 

2YOU:弾き語りの配信もHUSKING BEEのライブ配信も、あの時期観れて本当に救われたというか。入ってくる状況がネガティブなものが多かった時期でしたし、外にも出れなかったので、自宅でライブを観ることが出来たのは嬉しかったです。しかも普段とは違って家族と一緒に観たりして。個人的な話ですけど子供を膝に乗せて観るHUSKING BEEのライブ、涙が出るほど素晴らしかったです。

磯部:ありがとう。ライブハウスに行けない事情が増えた人にとっては家で観る利点があったりしたのかもしれないね。7月の配信ライブをやって、25年間自分達が作ってきた音楽をこうやってずっと歌っていられることって財産なんだなって改めて感じたんですよ。こういう時期だからこそ、これからも残していきたいなって。人生何が起きるかなんて分からないけど、本当に分からないことが起きてしまって、しかも世界規模で起きちゃうんだからね。色々考えるよね。

 

2YOU:何が正しいのかすら分からない、体験したことのない何か大きなものの渦中にいるなっていう。

磯部:そうそう。せめてもの救いは戦争とかとは違って殺し合いになったりするわけじゃないことだよね。だけどSNSを見ると誰かをなじったり言い合ったりしてるでしょ。いや、こういうときこそ助け合いでしょって思うんだけどね。優しくしていこうよって。そういう姿を見ていると、人間の本質が剥き出しにされる時期だったなって思いました。4月頃なんて、なんとなく買い物に出てもみんな眉間にしわを寄せているし、近所の人も顔つきが変わったりしていて。無理矢理笑顔にはなれないかもしれないけど、なるべく笑っていたいなって思ったよね。

 

2YOU:コロナに人間の本質が試されてるなって思う瞬間が多々ありました。そこでどう舵を取るかで自分自身を問うというか。

磯部:めちゃめちゃ試されてたよね。その中で俺は俺の出来ることをやろうと思ったし、そうじゃないと気持ち悪くなるんですよ。じゃあ何をするのが気持ち良いかって、やっぱり歌うことだし曲を作ることだったんだよね。

 

2YOU:そういう経緯もありつつ行った配信ライブが本当に素晴らしかったのですが、反響も大きかったのではないですか?

磯部:俺はコメントをそこまで振り返れてはいないんだけど、観てくれた人がみんな喜んでくれたみたいでやって良かったなって思いました。絶対に届くはずだって自信もあったんですよ。いつもはそんなに自信があるほうじゃないんだけど(笑)。でもなんだかあの日は自信があった。「やったぜ!」って気持ちにもなりましたからね。その気持ちがずっと続いてる感じはしますね。アルバムを作ってるときもずっと。

 

2YOU:アルバムはコロナ禍での制作ですか?

磯部:半分くらいは昨年末からコツコツ作っていた曲だけど、あとの半分はコロナの最中に作った曲ですね。ちょうど半々くらい。

 

2YOU:制作の過程でコロナに突入したと。作品に影響もあったのではないですか?

磯部:めちゃめちゃありますね。やっぱりコロナ以降出来る曲はそれまでとは違ったので。でもこの期間はネガティブなことだけじゃなくて、時間もあったから、自分の好きな音楽を聴きまくる日々でもあって。それが作品には色濃く出ている気がしますね。音楽にどっぷり浸かる時間があったことで、改めて自分の好きなバンドの良さに気付いたし、それを自分の曲に落とし込んだら最高だなって思うことが沢山あって。

 

2YOU:「Play The Role」から「I Don’t Want To Grow Up」の流れは完全にALLからのDESCENDENTSですよね。

磯部:でしょ?(笑)

 

2YOU:「I Don’t Want To Grow Up」に関してはタイトルからしてバッチリDESCENDENTSですし。

磯部:『Lacrima』でDESCENDENTSの「Bikeage」のカバーをしているから曲名だけ見ると「またDESCENDENTSのカバー?」って思うかもね(笑)。

 

2YOU:これはDESCENDENTSの「I Don’t Want To Grow Up」に対するアンサーソングの意味合いもあるのでしょうか?

磯部:そうだね。「I Don’t Want To Grow Up」って「成長したくない」「大人になりたくない」って意味だけど、初めて聴いた頃からずっと、どういう意味で歌っているんだろうって思っていて。だけど自分も年齢を重ねてきて、体力だったり身体に変化が出て来て、自分の中でやっと意味が分かってきた気がして。それで自分の解釈で「I Don’t Want To Grow Up」を歌ってみようと思ったんです。

 

2YOU:30年以上経つと曲の捉え方が変わるのは面白いですね。

磯部:そうそう。やっぱり今とあの頃では「I Don’t Want To Grow Up」の捉え方も違うからね。だから新しい解釈で歌ってみました。

 

2YOU:そしてALL感が炸裂する「Play The Role」ですが、曲のショート感含め、この感じをHUSKING BEEに落とし込んだのは凄く斬新でした。

磯部:言い方は変かもしれないけど、アルバムに冗談みたいな曲を入れたくて。それを30秒くらいにギュッと詰めこんだらALLみたいになりました(笑)。この2曲はやっぱりALL、DESCENDENTSが好きな人にはたまらないよね。

 

2YOU:この時期にどんなアルバムがくるか色々予想していたんですけど、バンドがとにかく音楽を楽しんでいるのが伝わるアルバムで聴いていて本当に興奮しました。色んなことが規制される中で頭が硬くなっていたけど、音楽を楽しんで良いんだよって言ってくれている気がして。アルバム冒頭の「Memories Of You」から全力でハスキン節全開ですし。

磯部:「Memories Of You」はアルバムの曲が大体出揃った後に「やっぱりこういうリズムの曲があった方がいいな」と思って5月くらいに作ったんですよ。声もギリギリまで全部出すみたいな。

 

2YOU:磯部さんが首に筋を立てて歌う姿が浮かびますからね。今作、ルーツだったりライブ感だったりハスキン節が随所にある中、「Break The Deadlock」のようなこれまでとはまた違うタイプの曲もあって。

磯部:自粛期間中に時間があったから、好きだった音楽を改めて聴き直したりしたんだけど、その中にNIRVANAがあって。その流れでFOO FIGHTERSも聴いたり。それでやっぱりカート・コバーンがめちゃめちゃかっこいいなと。この意志を継いでいかないとなって思ったんですよ。あの人達のお陰で世に広まった音楽も沢山あるだろうし、あのイムズを継いでいきたいなって。

 

2YOU:「The Only Way I Know」のキーボードの入り方や音色も新鮮でした。これはシモリョーさん(the chef cooks me)ですか?

磯部:そう、シモリョー。この曲を作ってるときに思わず電話しちゃったんだよね(笑)。自分の歌の持ち味って「Memories Of You」みたいなギュンギュンに歌ってる感じだと思うんだけど、年を取っても歌えるようなテンション感の曲も作りたいなって思って。そんな話をシモリョーと電話でしていて「キーボード弾いてよ」なんて話していたんだけど、数ヶ月後にそれが実現して嬉しかったです。

 

2YOU:今作通して、歌っていることもアレンジも含め、男の強さと優しさを感じるアルバムだなと思ったのですが。

磯部:『Lacrima』を作ったときに「次は男の心をくすぐる作品にしたい」って言ってたんだよね。DESCENDENTSの『Hypercaffium Spazzinate』みたいな男気のあるアルバムにしたかったんですよ。

 

2YOU:『Hypercaffium Spazzinate』は男泣きアルバムでしたからね。

磯部:そうそう。男気凄かったじゃん。俺もこんなアルバム作りたいって思ったもんね。でもその目的は今作で達成したかな(笑)。

 

2YOU:アルバムのラストを飾るアコースティックナンバー「明くるゆさわり」からも優しさや温かさを感じました。

磯部:これ、本当は入れるか悩んだんですよ。HUSKING BEEのアルバムって最後にアコースティックを入れるのが慣例なんだけど、この状況の中でアルバムを制作出来ることになって、その上で今までの慣例なんて関係ないと思ったんです。でも久し振りにメンバーと会ってスタジオで合わせたときに手応えがあって、それが自信にもなって色んなものが湧き上ってきたんです。それでスタジオから帰ってすぐ歌にしたのが「明くるゆさわり」なんです。とにかく言葉が溢れてきて。

 

2YOU:言葉といえば今作は英語詞が多いですけど、その中でも日本語で歌われている「刻の群像」の「かけぬけて」という言葉や「明くるゆさわり」の「超えてゆけよ」という言葉がピンポイントで刺さったんです。なんだか自分に言われてる気がして。

磯部:そう思ってくれたら最高です。特に意識していた訳じゃないけど、こういう時期だしどうしてもそういう言葉を選んじゃうよね。

 

2YOU:そういう言葉を欲しているからか、自然と入ってくるんです。だからこそ、早くライブでみんなで歌いたいんですよ。

磯部:本当だよね。7月に配信ライブをやったときも思ったけど、昔思っていたことが曲として残っていて、それを今歌うことでそのときのことを思い出せるのって音楽の醍醐味だと思うんですよ。曲は死なないっていうけど本当にそうだと思う。だから今、ライブが出来ない中でリリースするアルバムの意味を考えたときに、きっと何年経っても、何年経とうとも、このアルバムの曲を歌うことで2020年を思い出す役目を持つと思うんですよね。昔のような状態に戻らないって言う人もいるけど、俺は絶対戻ると思っていて。そうなったときに、このアルバムの曲を2020年を想いながら歌いたいなって思っています。だからその日まで、虎視眈々とライブハウスで歌い続けようと思っています。


HUSKING BEE
タイトル:eye
2020.11.04 release
CRCP-40613
¥2,727(+tax)

http://husking-bee.com/