鈴木実貴子ズ

外がうるさい。バンドのバの字も知らない奴や一度もライブハウスに足を踏み入れたことのないような奴が、ああでもないこうでもない、本当にうるさい。平成が終わり、令和が始まり、あれよあれよとコロナ突入。価値観なんか全部ひっくり返った。そんな時代です。こんな時代です。ライブハウスを営み、バンド活動をするなんて非国民!そんなレッテルすら貼られそうな2020年、鈴木実貴子ズがアルバムをリリースした。その名も『外がうるさい』である。2012年の結成から早8年、意外にも2YOUO初インタビューとなったこのタイミングで、彼らが営むライブハウス「鑪ら場」を訪ねた。

 

2YOU:鈴木実貴子ズはどのように始まったのですか?

鈴木:私はソロで弾き語りをやっていたんですけど誰かとバンドで合わせてみたいなってずっと思っていて。それで高橋さんとスタジオに入ったんです。その頃はエレキギターもいて。それで1年くらいやったのかな。それでエレキギターが抜けて2人だけ残され、でもやるしかないから。

高橋:やるしかないって(笑)。まあ、そうなんですけど(笑)。

 

2YOU:元々はこの形でやろうって訳じゃなかったんですね

鈴木:今も別に2ピースである拘りはそんなにないよな。

高橋:拘りはないね。サポートも入れてライブをする日もあるし。でも僕はなんだかんだ弾き語りプラスドラムっていう形も好きですけどね。軸は完全にこっち(鈴木)っていう悲しい状況ですけど(笑)。人って落ち込む時期があるじゃないですか?そんな時期にたまたま鈴木実貴子のライブを観て響いちゃったんですよ。今観たらまた違う気持ちになるんだろうけど、その時はなぜかドンピシャで響いちゃったので「一緒にやらせてもらえませんか」って僕から誘ったのが始まりなんですけど、今だったらまた違っただろうなあ(笑)。

 

2YOU:実貴子さんはバンドをやりたい気持ちはあったのですか?

鈴木:完全にバンドやりたい欲が強かった。それでmixiでメンバー募集とか、楽器屋さんに紙を貼ったりとかしたんですけどどれも上手くいかなくて。

高橋:別のバンドもやってたしね。

鈴木:うん。バンドに対する憧れは今でも強い。

高橋:昔はシンガソングライターみたいな括りじゃなかった?

鈴木:そこに括られるのがめっちゃ嫌やった。YUIもどきが金山にゴロゴロ、大曽根にゴロゴロだったんで、一緒にすんなってずっと思ってた。

 

2YOU:女性で一人で弾き語りをやると「YUIの影響でしょ?」って言われる時期でしたよね。

鈴木:もうね、絶対そうなっちゃうんですよ

高橋:どう見ても違うのに(笑)。

鈴木:髪型はちょっと近しかったけど(笑)。

 

2YOU:弾き語りからバンドになって変化はありました?

鈴木:最初はあまり変わらなかったけど最近になってちょっと変わってきたかな。私の中で何かが変わったんだと思う。お酢から飲めるお酢ぐらいの変化ですけど。

 

2YOU:その絶妙な変化が今作には出ているなと。これまでは刺しにいってたじゃないですか。とにかく吐き出すみたいな。でも誰に何を伝えたいかみたいな部分も見えるようになったなと。

鈴木:ああ、そうかも。歳のせいもありますけど、私の周りに死ぬ人が多くて。学生の頃って死が遠かったけど、バンドを続ける中で、例えば生きるために表現していたはずのバンドマンが自殺したりとか、そういう考えさせられることも多かったんですよ。だから吐き出したいプラス、誰かを守りたいっていう気持ちも芽生えてきて。それでちょっと変わったのかもしれない。

高橋:普段は滅茶苦茶ドライだし、自分の身の回りしか絶対守れないし、まあ、ドライって言うとあれだけど、守りたい人は明確にいるよね。

鈴木:守れる範囲は狭いけどね。

高橋:そうやって割り切ってるタイプだと思うんですけど、やっぱり知り合いが死ぬ時とかってそれをちょっと飛び越えるんですよ。多分その経験が結構何回もあったのは大きいかな。

 

2YOU:これまでの鈴木実貴子ズって自分達の感情を吐露する為の場所というか、誰にも気を使わない歌詞が多かったし、すごく生々しかったし、だからこそ同じことを思っている人にはドンピシャで刺さったと思うんです。でも今作は、ちょっと誰かのことを思って歌ってるのかなって。少し手を差し伸べているというか。あとはこうやって会って話すときのふたりのパーソナルな部分も楽曲に出ているなって。

高橋:自然になれたんですかね。こういうのって言われて気付くよね。でも確かに「ライブの感じが変わった。歌っている先に人間の姿が見えるようになったね」ってクラブロックンロールの井藤さんに言われて、めっちゃ嬉しかったんですよ。知らぬ知らぬ間に変わっていっているんでしょうね。

 

2YOU:自然と変っていった感じですか?それとも何かターニングポイントがあった?

鈴木:どうだろう、でも6年前に母親が死んだのが大きいかな。そこから徐々に変わっていった気がする。自分自分じゃなくなったというか。

高橋:それが徐々に徐々に音楽にも反映されていった気がする。あと鑪ら場始めたのもお母さんが亡くなった直後で。当時のことを明日、照らすの村上さん(村上友哉)は「上手くいくわけないと思ってた」って言ってましたけど(笑)。

 

2YOU:確かに鈴木実貴子ズが鑪ら場を始めるって聞いたとき、あんな尖りまくった…あ、いや。

鈴木:やっぱりみんなそう思ってましたよね(笑)。

高橋:接客出来ないだろって(笑)。

 

2YOU:でもそのイメージでお店に来るとふたりが本当に温かく迎えてくれて。そうやって人と触れることがふたりにも与える影響はあるでしょうし。

高橋:鑪ら場で色んな人の表現を観たことで変わった部分は確かにありますね。認めるものが増えたというか。逆にここは絶対許せないってとこもはっきりしましたけど。音楽が人によってツールなのか生き様なのか、じゃあ自分はどうなのか、色んな問いかけと答えを繰り返してきた感じはありますね。

鈴木:うん。自分を知るきっかけになった。自分が変化したかどうかは分からないけど。

2YOU:その中で今作はどういうアルバムを作りたいとかありました?

高橋:僕ら本当にアルバムのイメージとか持ったことがなくて。曲が溜まったらアルバムを作るみたいな。

鈴木:工場みたいな感じかも。常に作ってる。

高橋:だから今言うことじゃないかもしれないですけど、正直もうこのアルバムには飽きそうです(笑)。

鈴木:CDを作ってリリースする頃にはもう新鮮じゃないからね。だからレコ発とかやってもCDに入っていない新曲をいっぱいやりたいと思ってるし、でもそれでいいと思うし、うちは。

高橋:まあでも自分聴いても良い意味で外には開いてきてるなって思いますね。曲調もそうなんですけど、自分だけで落とし込めるものじゃなくて、外に向けてちょっと伝えようとしているんだなってのはアルバム全体から感じてもらえると思う。

 

2YOU:軸は何も変わってないんですけどね。

高橋:だって「バッティングセンター」なんて「バッティングセンター行きたい」って言ってるだけの曲だしね。

 

2YOU:でもそれを受け取る人の数だけ解釈があるのも音楽の面白さだなと。ある曲を聴いて、ラブソングだと思っても、政治的に感じても、全部正解な訳だし。

鈴木:音楽って凄いですよね。捉え方によって全然違いますから。でも作ってる側が答えを言っちゃうじゃないですか、例えばMCで「次の曲はこういう曲です」とか。あれってどう思います?

 

2YOU:ああ。でも、それこそインタビューなんて答え合わせだったりするじゃないすか。それ、面白いのかなって思うときはあります。お前が言うなって話ですけど。

鈴木:なるほどねえ。うちは結構全部話したくなっちゃうタイプなんですよ。みんなのことを何も考えていないから。でも答えを言われるのが嫌って気持ちもなんとなく分かるから難しい。

高橋:自分の好きなアーティストの曲は解説して欲しいっていうファン心理もあるんですけど、自分的には悲しいことを悲しいって歌ったらお終い的なとこもあって。

 

2YOU:例えばJITTERIN’JINNの「夏祭り」とか、夏の終わりや夏の切なさを「夏祭り」と表現していることが表現な訳で。そういう意味では「口内炎が治らない」とか凄いですよね。文面と本質じゃ全く違う。

鈴木:だから本当は全曲本当の解説をしたくてしょうがないくらいひとつひとつはっきりとした場面があるんですよ。まぁでも…言わんとくわ(笑)。売れたら言う。

 

2YOU:売れたい気持ちはあるんですか?

鈴木:CDを流通させるようになってから芽生えたかも。流通してないときはその世界しか知らなかったからそれが正解だと思ってたけど、実際流通してみたら悔しいって気持ちが分かった。だから売れたいって気持ちはある、うん。

高橋:色んな人を見る中で「この人達がなぜ売れてるのか」とかも勿論あって、そういうのを見てるとね。覆したくなるというか。

鈴木:自分達の方が良いって思ってるもんね。

 

2YOU:だから去年、鈴木実貴子ズがライジングサンに出ることが決まったときは革命が起きると思ったんですよ。残念ながら台風で中止になってしまいましたけど。

高橋:革命、起きなかった(笑)。

鈴木:うちらも革命ぐらいの気持ちでいきり立っていたからね。やる気満々やったけど、起きなかったっていう(笑)。

 

2YOU:「踊る大捜査線」で「正しいことをしたかったら偉くなれ」っていう名台詞があるんですけど、鈴木実貴子ズの声がしっかり届くようになったら面白いだろうなって思っているんですよ。

鈴木:届くかどうか試してみたいってのはある。

高橋:そういう意味では昔やってたことは届かなくてよかった気がするよ。そんなん届けてどうするのってことばかり歌ってたから。でも今はやっぱちょっと違うなって。まあ、売れないけどね。

鈴木:ふふっ(笑)。

高橋:ふふっじゃない(笑)。

鈴木:仲間も全く見つけられないしね。今までずっと。

高橋:好きな人は沢山いるんですけどね。みんなみたいに「楽しく一緒にやろうぜ」みたいなところはない。

鈴木:うん。ない。

高橋:打ち上げとか出ないしね。出ても年に1回くらい。最後に出たHUCK FINNの打ち上げは黒崎さん(HUCK FINN)が食事会っていうから出たけど(笑)。

鈴木:鑪ら場でもやらないよね。やったことないかも。

高橋:中打ちもないもんね。22時半くらいになったら「お店片付けますんで」って掃除始めるから(笑)。

鈴木:早めに閉まるぞ、なんせここは吹上だからなっていう。

高橋:まあ、そういうとこに馴染めなかった組なので。

 

2YOU:だからこそ自分達の場所を作ったと。

高橋:しかもその空間を心地良いと思ってくれる人が意外といたっていう。

鈴木:逆に来てくれる人が良い人ばっかでうちが鑪ら場に馴染めていない(笑)。

高橋:そんな気遣わなくていいよっていう。やっぱちょっと普通のライブハウスとはまた違う客層…って言ったらつまんない感じになるけど。

鈴木:場所に対する愛をやたら感じてくれてるお客さんとか演者が多い気がするよね。

高橋:でもこの状況が続いたら本当潰れるよね。

鈴木:うん、潰れる。だけど人生でこんあ経験中々ないからさ、楽しむって言うと亡くなった人もいるから違うけど、いい経験ではあると思ってる。

高橋いい経験よ。

鈴木:なんか悪い政治家ってなんでコロナにかからないんですかね。不思議じゃないですか?打ってるんじゃない?もうあると思うんだよ、薬が。

高橋:それっぽいやつはあるかもね。

鈴木:「実はこれ効く」みたいなやつ、あるね、きっと。

高橋:また尖った曲が出来そう(笑)。

鈴木:アルバムがいっぱい出せるね。

高橋:他のバンドもみんな録ってるだろうしね、この期間で。

 

2YOU:制圧された分だけみんな爆発してバンドブームがくるかもしれない。

高橋:確かに。THE BLUE HEARTSのようなバンドが生まれるかも。

 

2YOU:それぞれの「未来は僕らの手の中」という曲が聴けそう。

鈴木:環境は整った。

高橋:みんな被りそうやなー(笑)。

 

2YOU:だからそういう時が来た時にみんながちゃんと爆発出来る場所がないと何も始まらないので、外野の声に押しつぶされないように守らないといけないですね、ライブハウスもバンドも。『外がうるさい』ってアルバムがこのタイミングで出ることがもう鈴木実貴子ズですよね。偶然とはいえ最高過ぎる。

鈴木:それ、本当にたまたまなんですよ。高橋さんが「早くタイトルつけなー」っていうから、うちが部屋で考えてたら外で犬がワンワンワンワン吠えててうるさかったんですよ。外がうるさいなー、外がうるさい?外がうるさいでええんちゃうって。

高橋:でも実貴子さんぽくてしっくりくるけどね。その「外」っていうのがどんな意味か考えたりして。

 

2YOU:アルバムのトレーラーを発表したとき、「お前がうるさい」ってコメントが来ていたのは面白かったですけどね(笑)。

鈴木:ああいうの好き。うち、好きやわ。でも結局消されてたね。別に怒ってないから消さなくてもよかったのに。

高橋:最高だったのにね。

鈴木:うん、最高やったね。

 

2YOU:あのコメント込みで「外がうるさい」のプロモーションとして完璧だったのに。

鈴木:ね、完璧やった。そういうの遠慮なくどんどんきてほしい。

高橋:もし気に障っても僕に被害があるだけなので。

 

2YOU:あははは。いいバンドですね、本当に。

高橋:いや、どこがですか。もうちょっと僕を労わって欲しい。

鈴木:あははは。

高橋:笑ってるもんなあ(笑)。

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鈴木実貴子ズ
タイトル:外がうるさい
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interview by 柴山順次 edit assistant by なかにしげんき