Wienners

アルバムとしては2年振り、そして再メジャーデビュー作となるフルアルバム『BURST POP ISLAND』を聴いて確信した。この世界にはWiennersが必要だ。今から10年前、初めて玉屋2060%にインタビューしたときに彼は「新時代を作りたい」と言っていた。時が経ち、あの頃とはひっくり返ったように世界は変わってしまったけど、戻れない過去を悲観するのではなく、だったらみんなで声を掛け合って知恵を絞って新しい時代を作るほうに乗っかりたい。『BURST POP ISLAND』はWiennersというバンドの本質の本質の本質が、ピカピカに輝く希望のアルバムだ。新時代に必要なのは光とユニティ。届け、響け。

 

2YOU:アルバム、素晴らしいです。なんかこう、光を剛速球で投げつけてくれるような作品だなと。

玉屋:嬉しいっすね。意図して作ったわけではないですけど、今の日本の状況にちょっとでも光になるようなアルバムになれたらいいなと思っていたので。今までは照れ隠しというか、オブラートで包んでいた部分もあるんですけど、そこら辺はもう正直に出していきたいなと。前はこういうストレートな表現を求められているのか考えてしまうところがあったんですけど、ツアーを経て、この4人がステージに立って音を鳴らせば、それがシンプルなものであっても、それはもうWiennersでしょっていうところまでバンドとして出来上がってきたなって。

 

2YOU:メロディもアレンジも過去最高にストレートですよね。特に前作の『TEN』がWiennersらしさでもある「ごちゃまぜの極み」みたいな、いろんなことに挑戦してきたことが極まった作品だっただけに、そこから一転して、真逆の超シンプルなものが来たことに驚きました。これまでは料理で勝負してたのが、今回は素材で勝負してるみたいな、

玉屋:その素材で勝負っていうのが今回は大きくて、『TEN』はすごく良い作品だと思っているんですけど、こっち側のかっこいいと思うものが100%伝わってないなっていう実感があったんですよ。今回メジャーでやるってことは、より広く、より多くの人に届けるっていう意思表示でもあるので、俺達が届けたいかっこよさだったり、どんなバンドになりたいかを明確にしていく作業をメンバーと進めたんです。その中で俺達が届けたいものはやっぱり「非日常の興奮」だなと思ったんです。

 

2YOU:非日常の興奮?

玉屋:そう、非日常の興奮。つまりライブなんですけど、俺達はまだまだモッシュ、ダイブがあるようなライブをやりたいし、そこに的を絞って削ぎ落していく作業をしていこうって。だから紐解いていけばシンプルじゃない曲もあったりしますけど、でも印象として「あ、ストレートに来たな」って思ってもらえるのは意図していたことなので嬉しいですね。

 

2YOU:Wiennersは本質が変態だから、敢えて奇をてらわなくてもストレートで充分変態というか。「UNITY」のようなシンプルな曲がいきなりアンセム化しているのが何よりの証拠というか。

玉屋:「UNITY」がライブで受け入れられたことは自信に繋がりましたね。今までは何処かテレビの中でエンターテイメントをしてるような感じもあったけど、より生になっていった感覚があって。歌もそうだし、MCもそうだし、立ち振る舞いもそうなんですけど、そこで起こることに重きを置きつつも、どうやったら自分達が伝えたい「非日常の興奮」に興味を持ってもらえるか、どうやったらそこに飛び込んできてもらえるかを滅茶苦茶考えたんです。こっちが心を開けばお客さんも心を開いてくれることも分かったし。

 

2YOU:だから今作はリスナーが飛び込める場所が曲の随所に存在してるように感じて。これまでもシンガロングパートはあったけど、これまでとはまた違う在り方として「みんなの場所」が用意されているなって。「UNITY」もそうだし「起死回生の一発」もそうだし、ちゃんとお客さんが歌うことも想定してるというか。

玉屋:おっしゃる通りで、そういう場所を敢えて曲の中に作るっていうのはすごく意識しました。今まではインスタントに「ここで『オイ!オイ!』っていうパートを入れたら盛り上がるでしょ」とか、そういうのはダサいと思ってたんですけど、ここ最近のツアーを経て、やっぱりお客さんと一緒にライブを作り上げているという感覚がバンドの中で大きく膨れ上がって。だから曲作りの段階から「この次の展開をこうしたらお客さんがついてきてくれるかな」とか考えるようになったんです。だからCDを聴いてライブに来てくれてやっと曲が完成するみたいな。

 

2YOU:その上で投げっぱなしでもないし、強制でもないんですよね。「ここで言え!」とか「ここでやれ!」じゃないのがすごく良い。

玉屋:強制じゃないっていうところは大事ですね。好きなように楽しんでくれればいいし、こっち側としては楽しめる仕掛けをより多く仕掛けておいたほうが楽しめるなっていう感じというか。

 

2YOU:楽しめる仕掛けという意味ではこれまでのWiennersとは毛色の違う「ANIMALS」でアルバムが始まるのも面白いなと。しかも今の音楽シーン…というと語弊があるかもしれないですけど、今っぽさを敢えて意識しているのかなって。

玉屋:今までは時代というものに関係なく自分たちの世界の中で作り上げたものをお客さんに投げていたんですけど、でもその投げた球をキャッチするのって10代20代の若い子達じゃないですか。今の10代20代のお客さんはどういうものに反応して、どういうものを聴いていて、どういう価値観を持って、どういう空気感を纏っているか知る必要があって。だから「ANIMALS」は現代の流行っているものの手法を借りて自分達の音楽を表現する感じというか、言語を変えてる感じというか。やっぱり時代というものが大事だなと思ったし、逆に時代というものを意識しすぎると今度は1年後古くなっちゃうし、そのバランスを保ちながら作ったんですけど、普遍的なメロディと歌詞、あとは遊び心とちょっとしたユーモアがあれば大丈夫だなって。やっぱり言いたいことがあるときこそユーモアやエンターテイメントが大事なんですよね。例えば俺が歌うと深刻になっちゃうこともアサミサエが歌うとまろやかになって、ちゃんとエンターテイメントとして届けられる訳で。それこそメジャーでやってる意味はそこだと思うし。

2YOU:このタイミングで、もう一度メジャーでやろうと思ったのは?

玉屋:まずシンプルにより多くの人に届けたい。武道館、紅白まで行きたい気持ちはずっとあって。日本の音楽の価値観を変えて、こういう音楽がお茶の間で権利を得るみたいなところまでいきたいんですよ。そう考えたときに、単純に広げていくならメジャーだと思ったし、でもメジャーでやるからには広げるための責任を背負わないといけないとも思っていて。そういう部分をひっくるめて、覚悟が出来たんだと思います。

 

2YOU:今のこの時期にこのアルバムを持ってWiennersがもう一度メジャーデビューすることって、新しい何かの始まりな気がするんです。毎日思っていることも変わっていくし、状況も毎日変わっていくけど、このアルバムを聴いていると、以前までの日本に戻るとか以前の音楽シーンに戻るとかっていうよりは、在り方や考え方も含めて、新しいことをやっていかなきゃいけない気がしたんです。仕事の仕方、生活の仕方、子育ての仕方、音楽の在り方、音楽との向き合い方っていうのを、昔に戻りたいとかじゃなくて、新しい自分になりたいと思わせてくれたのは、このアルバムが大きかったりするんですよね。

玉屋:俺も思っていることは本当に一緒で、この状況がまったく元通りになることって結構難しいと思っていて。今の状況をその場しのぎで回避するんじゃなくて、新しい価値観だったり新しい考え方を見つけていかないといけないなとすごく思うんです。そういう意味では今の状況を決して悲観的には思ってなくて。アルバムが発売されて、お客さんの耳にも届いているし、新しい何かをやれるチャンスでもあるし、そこまで落ち込むことはあまりないんじゃないかって。

 

2YOU:散々落ち込んで、「じゃあどうするの」って選択を迫られたときに「だったらもう変えてくしかないな」って思ったんです。そのときにWiennersが闘いの歌として鳴っているんですよ。「一緒に行くぜー!」みたいな。もう滅茶苦茶昔のことですけど、初めて玉屋さんにインタビューしたときに「新世界にいこう」って言っていたんですけど、「ああ、新世界はこれのことだったのか!」みたいな気がしていて。これまでWiennersの曲を聴くときって「自分の曲だ」とか「俺の気持ちだな」とかって殆どなかったんですよ。自分を照らし合わせるんじゃなくてWiennersが走ってるのを見てる感覚というか、それを見ていたいっていう感覚だったんです。でも今回は全部自分の曲のような感じがして。「これ俺の曲、これ俺の曲、これも俺の曲」みたいな。それは自分にとって、ちょっと新しいWiennersとの関係性というか距離感だったんですよね。

玉屋:そこが今までと一番変わった部分だと思いますね。今までのWiennersはストーリーテリングというか、自分語りがメインだったんですよ。でも今回は聴いてくれた人が自分に置き換えられる表現を意識したんです。それは別に気持ちを代弁するとかじゃなくて、今まで俺が思ってたことをどうやったらみんなが自分と照らし合わせてくれるかを考えたっていう。でも的を絞っちゃうと内容が薄くなってしまうから、感情の濃度をどれだけ濃いまま沢山のお客さんに共感してもらえるかを考えたし、そこにWiennersが足を踏み入れても伝わることがちょっとずつ分かってきたからこそ、これからどんな曲が出来るか自分でも楽しみだし、ここがWiennersのスタートだなっていう感じが自分の中ではあるんですよね。

 

2YOU:そう、そのスタートっていう意味でも、もう一度メジャーでって意味でも、このタイトルなんですよね。『CULT POP JAPAN』があったうえでの『BURST POP ISLAND』だと思うので、となると再スタートというか、今のメンバーになってもう一度メジャーで、新しい価値観を持ったWiennersでの1stアルバムが出来たのかなっていう。

玉屋:まさに。メンバーとも1stアルバム的な感覚で作りたいって話していたし、今のWiennersを端的に表現するアルバムを作りたかったんですよね。今まで新しいことへの挑戦を実験的にやってきたけど、今回は今の自分達のモードを見せたかった。Wiennersが今何をしたいのか、何をするべきなのか、どんなライブをしたいのかがどんどん絞られてきているので、目標が明確になった今だからこそのアルバムだと思います。

 

2YOU:バンドの変化の軌跡というか、進化の過程を全部背負って新しいWiennersになっていくのが見ていて本当に面白いんですよ。「プロローグ」で歌っているように、やってきたこと全部が繋がった上で新しいところに行くっていう。

玉屋:変化の中でも、車でずっと移動してたのに、電車に乗り換えるみたいなことはしてこなかったので、今までのことが全部積み重なって今があるんだなって。

 

2YOU:コロナの話ばかりするのもよくないですけど、昨日が今日に変わっただけで何かが変わることなんてないと思っていて。徐々になのかこの先100年200年なのか、どちらにしても地続きにあると思っていて。そういう意味ではWiennersがやってきたことも、どこかに変更線があるわけではなく地続きでやってきた中で、このタイミングでこの新しい価値観をぶち込んだアルバムを持ってきたっていうのが、時代感みたいなものと全部繋がっちゃって。だから自分にとってすごくタイムリーだしドンピシャなアルバムなんです。

玉屋:ああ、良かったっす。達成感も今までとは違う種類のものだったし、それがこうやって世に放たれて、色んな声をもらって、改めて「ああ良かった」「ちゃんと伝わった」と思ったし、キャンペーンもライブもなかったから発売するまで実感がなくて。でも出た瞬間みんなの声を聞いて「あ、出たわ」って一気に実感したというか。今まではやっぱライブでやって、反応をもらって実感してたんですけど、そうじゃない実感の仕方もすごくありましたね。

 

2YOU:こういう時だからこそ全部吹き飛ばせるパワーを持ったものを僕は欲していて、それは今、僕にとってはWiennersだったんですよ。本当に。今作はアルバム通して「ひとつになる」とか「絆」とか、そういう言葉が印象的で。それを今このタイミングで聴けたことにとにかく背中を押されました。今日はそれを伝えたかったです。

玉屋:ああ、よかったです。みんなで頑張ってるという気持ちだけでもひとつになれればと思うし、みんな立場は違うけど目的は一緒なんですよね。お店を開けなければいけない人がいたりとか、どうしても仕事に行かなきゃいけない人もいたりとか、家にずっとこもってる人もいたりとか、色んな立場の人がいますけど、みんなが望んでることは少なくともこのコロナが収束することだと思うんです。だからそれぞれ敵同士みたいにになっちゃうのは一番よくないし、俺達の目標は何なんだったかを考えたらひとつになれるのかなとか、考えたりしますね。

Wienners
タイトル:BURST POP ISLAND
2020年5月13日発売
初回生産限定盤【CD+Blu-ray】
COZP-1655~6 ¥3,900+税

通常盤【CD】
COCP-41134 ¥2,300+税

https://www.wienners.net/

interview by 柴山順次 edit assistant by栄谷悠紀