stiffslack

interview by 柴山順次
オルタナティブロック、エモ、ポストロック、パンク、ハードコア、エレクトロニカを中心に国内外のインディーズアーティストの音源やグッズを取り扱うレコードショップ、stiffslackが2020年に拡大移転し、レコードショップ、バー、ライブハウスが併設された新店舗へと生まれ変わる。2003年に名古屋・栄にてレコードショップとして店舗を構え、インディーレーベルとしても100タイトル以上リリースしてきたstiffslack。日本のみならず、海外からも熱烈な支持を受ける中、新たな試みとしてstiffslackがライブハウスを作るという。今回2YOUでは代表である新川氏にその真意を訊いた。

 

Q.新川さんの音楽の原体験はどのようなものだったのですか?

新川:親がレコードでTHE BEATLESとかを聴いていたのが原体験だと思うんだけど、自分から音楽に興味を持ったのは中学生くらいの頃だったと思う。BOØWYとかBARBEE BOYSとかTM NETWORKとか。その後、高校でTHE BLUE HEARTSやLAUGHIN’ NOSEを聴くようになっていって、性格的に掘り下げるタイプだったから、そこからTHE STAR CLUBとかKENZI & THE TRIPSとかTHE POGOに辿り着くみたいな。そうなると今度はSEX PISTOLSやBUZZCOOKSにいくでしょ。で、さらにEATERがいてDead Kennedysがいて、Dead Kennedysの後半でハードコアっぽくなるから、そこからDISCHARGE、G.B.H.と段々深みにはまっていくという。それが高校生活全般かな。

 

Q.情報はどこで仕入れていたのですか?

新川:当時、レコードレンタル屋が近所にあって。そこで色んなレコードを借りていました。パンクコーナーとかもあるお店で、普通にThe原爆オナニーズも置いてあって。そこでパンクのレコードを借りたりしながら、同時にMTVで流れているような音楽も聴いていました。MADONNAとかCulture Clubとか。あと、ベタにBOØWYとかTHE BLUE HEARTSのコピーバンドもやってたからJロックも聴いてたんだけど、そうやって色んな音楽を聴く中で、少しずつアンダーグラウンドなロックに傾倒していったような気がします。

 

Q.音楽を仕事にしようと思ったのはいつ頃ですか?

新川:20歳過ぎくらい。当時、タワーレコードに凄く行ってたから自分もこういう仕事に携われたらいいなって漠然と思うようになって。そんなときにたまたま運よく大須の円盤屋っていうレコード屋に潜り込めたのが全てのきっかけだと思います。円盤屋は邦楽のヴィジュアル系専門店と洋楽専門店と中古専門店があって、自分は22歳で洋楽専門店で働き始めたんだけど、当時はグランジ全盛期で働く前からお店に通っていて。PAVEMENTとかThe Jon Spencer Blues Explosionとか、その前のPussy Galoreとかは円盤屋で買っていました。タワレコでは買えない7インチが円盤屋には置いてあったからよく行ってましたね。

 

Q.円盤屋ではどのような仕事をしていたのですか?

新川:店長も先輩もいたから最初はひたすらコメントを書いていました。当時の自分はグランジやオルタナにのめり込んでいたから、そういうバンドのコメントを書いてお店に並べるのが日課で。しばらくして、先輩が辞めて自分がお店の舵を取ることになるんだけど、円盤屋はオールジャンル置いていたから、そこに対して自分がどうアプローチしたらいいか模索していたんだけど、段々自分の得意分野である90年代のオルタナをメインにお店を回すようになったり、その頃にはレーベルも始めたのでどんどんカラーが出来ていったと思っています。

Q.円盤屋が閉店してstiffslackを始めるまで結構早かったですよね。

新川:円盤屋に在籍しながらアメリカのレーベルの音源を流通させていたり、レーベルとしてのstiffslackも始めていたから、それも伏線にもなっていたと思う。そのタイミングで円盤屋が閉店したことで尻を叩かれたというか。当時、レーベルも円盤屋の中でやっていたんだけど、フィジカル音源の売り上げが右肩下がりになってきた時期で。レコード屋だけじゃなくて、何かやらないといけないと思って「レーベルをやらせてください」って社長に直談判したんですよ。海外のバンドをリリースしたかったからメールで海外とやりとりしていたんだけど、その中で最初に返事をくれたのがFile13で。それでNATIONAL SKYLINEをリリースしたのがレーベル第1弾。実はFurther Seems Foreverも候補にあったんだけどライセンス料が高くてやめたんですよ。あのピンクのジャケットの。

 

Q.うわ、「The Moon Is Down」ですか?

新川:そうそう(笑)。

 

Q.凄い話だ…。自分が初めてstiffslackに行ったときは円盤屋がシェイプアップしたお店だなと思いました。

新川:まさにそういう店を作ろうと思っていたし、自分がやりたいことだけを追求する店にしたくて。取り扱う音源の基準をたまに聞かれるんだけど、音源について自分でコメントが書けるかどうかが判断基準になっていて。それは今もそうなんだけど、自分の言葉でコメントが書けない作品は置いてないんですよ。自信を持ってうんちくを垂れることが出来る作品だけうちで取り扱うことにしています。昔も今も。

 

Q.コメントカードの熱量、物凄いですもんね。

新川:あれがレコード屋としてのアイデンティティだと思うし、他のお店と差別化を図るのに手っ取り早い手段だと思っていて。普通にレーベルのインフォメーションをコピペするのが好きじゃないし、そうやって自分が仕入れた音源のコメントを書くのがレコード屋の仕事だと思っているんですよ。

Q.stiffslackでコメントカードを読んで出会えたバンドが沢山ありますからね。

新川:それが一番嬉しい。でもちょっと文字数多いかなって思うときもあります(笑)。

 

Q.海外のバンドのライセンスリリースと店頭でコメントカードを書いてレコメンドすることって、少し似てるのかもしれないですよね。

新川:確かに。元々ある作品に自分のロゴを入れて解説を入れて販売するわけだから。

 

Q.海外のバンドのライセンスリリースと日本のバンドのリリースではそれぞれ違う面白さがありそうですよね。

新川:ライセンスは海を越えた大好きな作品に携われるというプロセスそのものが面白いなって。日本のバンドも色々リリースしてきたけど、オリジナルを出せることはやっぱり興奮しますね。日本のバンドのリリースはライブハウスで決まったり、absenteeで話す中で決まったり、これもドラマがあるんですよ。

Q.absenteeが出来たのはどういう経緯だったのですか?

新川:元々隣にあったトランス系のレコード屋兼バーが閉店して、しばらく物件が空いていて。その頃stiffslackもお店の在り方として少しくだけてきていて、レコードを買うだけじゃなくてお酒を持って僕と喋りにくる人もいたりして。それはそれで楽しかったんだけど、普通にレコードを買いに来てくれた人には迷惑だなって思ったりもして。狭い店だし。それで、コミュニケーションを深める為に隣でバーをすることになったのがabsenteeの始まりです。Climb The Mindが『ほぞ』をリリースしたのが2010年10月10日なんだけど、『ほぞ』の先行販売をabsenteeのオープンの日にしたから10年前の10月1日がオープン日ですね。absenteeで色んな交流があったから改めて改めて特別な場所だったんだなって最近よく考えています。単純に音源を買ってもらうことが売り上げに直結するんだけど、人が常にいて、そこで情報交換したり新しい何かが生まれたり、そういう場所がレコード屋と併設出来たのは凄く良かったですね。absenteeが出来てからstiffslackに来るのが増えたっていうお客さんもいたり。

 

Q.間口が広がった印象はありました。

新川:やっぱりレコードを買わないと来ちゃ駄目みたいに思っているお客さんは多いと思うけど、absenteeにお酒を飲みにきたり、遊びにきたり、そういう効果もabsenteeにはあったと思います。そういう子と話すと、やっぱりいきなりstiffslackに来るのはちょっと怖かったみたいだし。だから最近はめちゃくちゃ「いらっしゃいま!」って言ってます(笑)。

 

Q.レコード屋のドアを開くまでの壁って醍醐味でもあるんですけどね。あの緊張感とか。そこを乗り越えたら宝が待っているわけで。

新川:そうなんだよね。昔のレコード屋ってみんなそんなもんだったし、自分も意を決して行ってたから。レコード屋の店員と常連の会話を盗み聞きしながら同じレコードを買ってみたり(笑)。

Q.新川さんがレコード屋を運営するようになって意識するレコード屋ってありましたか?

新川:絶対的にANSWERですね。大須にあったVALENTINE RECORDSで働いていた中村くんが「俺の答えだ」って言ってANSWERを始めたのがめちゃくちゃかっこ良くて。実際に当時の名古屋ではANSWERが独占状態だったと思うし。中村くんとANSWERは憧れでしたね。レコードは見辛かったけど(笑)。でもそこも含めて最高でした。あとパンク、ハードコアに関する知識量は物凄いですよね。

 

Q.名古屋には各分野におけるスペシャリストが経営するレコード屋さんが多いですよね。ロック然りブラックミュージック然り。

新川:たまたまマニア思考な人がレコード屋をやっている人が多い街なのかも。偶然、名古屋という街にうちがあって、ANSWERがあって、FILE UNDERがあって、HIP-HOPやテクノやハウスのお店もあって、中古屋も色々あって。ZOOのカズーくんも元々は円盤屋出身だったり。そういう意味ではレコード屋カルチャーとしては整っている街だと思う。

Q.そんな名古屋で新しくライブハウスを作るわけですが、いつ頃から計画していたのですか?

新川:構想自体は10年以上前からしていました。そのワンクッションとしてabsenteeがあったので。でもabsenteeが思ったより居心地が良過ぎて、ライブハウスを作るまで時間がかかってしましました(笑)。実際にabsenteeが出来るまでに何件か物件も見に行ったりしてるんですよ。住居付きの雑居ビルとかで地下をライブハウスにしようかなとか。他にも鶴舞のJR中央線の高架下の話もありました。そんなこともありつつ、時間は経ったけど、今回色んなタイミングやきっかけもあってライブハウスを作ることが出来て本当に良かったです。色んな偶然が重なってやれることなので有難いです。

 

Q.ライブハウスをやりたいと思ったきっかけは?

新川:自分の好きなアーティストに自分のテリトリーの中でライブをやってもらう場所が作れたら、音源を売るのと一緒で、自分で紹介出来るんじゃないかって思ったのが一番の理由かも。だからレコード屋の延長なんですよ。あとは自分から発信したほうがより確信に触れることが出来るんじゃないかって。そこに可能性を感じてライブハウスをやりたくなりました。

 

Q.自分がレコメンドするバンドのレコードを売って、ライブも観てもらえたら、お店としては完璧ですよね。

新川:レコード屋もこの先どうなるか分からないけど、自分に出来ることはほぼほぼやったと思っていて。勿論これからも継続してやっていくんですけど、自分のやっていることにさらに付加価値をつけるのであればライブハウスしかないなと。例えば、ツアーのエージェントとか、コーディネーターとか、そういうことに興味もなくはないんだけど、やっぱりお店に立ってお客さんと接していたいし、そこに対してアーティストの現状も把握したい。あとは単純にずっと現場にいたい。それが一番です。

 

Q.新川さんは現場感がめちゃくちゃありますからね。ライブハウスで新川さんが最前列で号泣している姿を観る度に最高だなって思います。去年のSTARMARKETのときとか。

新川:あの日は凄かったね。ステージ脇でATATAの奈部川くんとか見ててどうしようかと思ったけど、もう無理でした(笑)。

 

Q.STARMARKETもですし、来日が発表されたSAVES THE DAYもなんですけど、stiffslackや円盤屋で教えてもらったバンドが本当に沢山いるので、その新川さんがライブハウスを始めることでまた新しいバンドに出会えると思うとワクワクします。

新川:それは僕も楽しみです。まだ出来上がってないから怖いですけど(笑)。

 

Q.どんなライブハウスにしたいですか?

新川:今までやってきたことを踏まえながら、もうちょっとお店のキャラクターの間口を広げてもいいかなって思っています。今のセレクトより品揃えも若干広げていこうと思ってるし、今は雑居ビルの4階だけど、次は路面店だから必然的に変わっていくんじゃないかなって。ライブハウスにも、何かしらのリンクがあったら色んなバンドに出てもらいたいしです。だからどんどんコンタクト取ってきて欲しい。「音源聴いて下さい」ってZIPファイルで送られてきても中々開かないけど、CD-Rを持ってお店に来てくれたらコミュニケーションも取れるし顔も覚えるので。そういう関係性を築いていけたら嬉しいですね。

 

Q.だからお店に立ち続けると。

新川:そうですね。最近は全然不愛想じゃないから安心して来て欲しい(笑)。逆に円盤屋の頃はめちゃくちゃ不愛想だったと思うし、そもそも接客というよりは自分の欲を満たす為にレコード屋にいたけど今はそれとは少し違うので。昔、御器所にDisk Heavenがあったときにレコードを買いに行って、レジの怖いパンクのお姉ちゃんに「SAMIAMどこですか?」って恐る恐る訊いたんだけど、食べていた弁当の箸で「あそこ」って言われたからね。そしたらそのレコードが平積みになっててその上に猫が寝てたから(笑)。それが「レコード屋ってこうなんだ」って思った瞬間でした。「いらっしゃいませ」って言ったら負けみたいな(笑)。でも個人レコード屋ってそうあるべきというか。だから路面店になって何かが変わってしまうことに若干の怖さはあるんですよ。なので、万が一ライブハウスが成功したら、雑居ビルの15階くらいの小さなワンルームにもう一店舗レコード屋を作るのも面白いかもしれないですね(笑)。その為にもライブハウスもレコード屋も頑張らないとなって思っています。

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