ツチヤチカら

2019年はツチヤチカらの年だった。音楽シーン、心の流行語大賞堂々1位は誰が何と言おうと「金玉」だし、ほぼ毎日SoundCloudにて公開された100曲アップロードを目標とした『Big Beat for 201x』の更新がとにかく楽しみだったし、1年で3枚のアルバム『ツチヤチカらのツチヤチカら』『モナリザ』『ピタゴラス』を完成させたことも僕らを楽しませてくれた。6eyesとしての活動とリンクしながらツチヤチカらとして打ち出すものの破壊力と音楽愛と好奇心に思いっきりワクワクさせてもらった1年間。どこのランキングにもノミネートされない、だけど聴いた人の心には確実に刻まれている金玉というパワーワード。アルバム3部作を完成させ、まもなく目標の100曲に達成する今、少しずつ何かが変わり始めたことを感じさせる『ピタゴラス』についてツチヤチカらを訪ねた。

 

Q.早くも3枚目のアルバムが完成したとのことですが、物凄いペースですね。もはやライフワークとなっているのではないですか?

ツチヤ:曲を作るのは日々のルーティーンですね。そもそもアルバムを作ろうと思って曲を作っていないので、毎日曲を作ってそれが溜ったからアルバムにしただけっていう。そしたら1年で3枚もアルバムを作っていました。でもちょっと飽きましたね。曲は相変わらず作っていますけど、ガレージバンドに飽きたから曲を最後まで完成させるモチベーションは低くなってます。3枚作ってひと段落って気持ちもあったり。昔から僕は勝手に自分の中で3部作で完結させる癖があるんですよ。4枚目は舵を切り替えないといけない気がしちゃう。そういう意味ではまだその舵の切り方を見つけられていないのかも。

 

Q.ということはアプローチの仕方が変わる可能性もあると。

ツチヤ:そうですね。ひと段落ついて変な欲が出てくるんです。そこを探りながらトラックだけは相変わらず滅茶苦茶作っています。

 

Q.今やツチヤさんの代名詞となった金玉シリーズも変わっていくかも?

ツチヤ:全然ありますね。でも金玉は自分の中で自然と出る言葉だったりすんですよ。HIP-HOPでいう「YO」とかロックで言う「OH YEAH」みたいな。

 

Q.ああ、「BABY」とか。

ツチヤ:そうそう。だからそこを変えるというよりは方法論が変わっていくのかもしれないですね。今まではストーリー仕立てだったのがもうちょっと抽象的にかっこよくやれたらなとは最近思っていますし。でも結局そうやって狙って作っても面白いものは出来ないから、そのときポンと出てきたものをこれからも歌っていくと思います。

Q.確かに3枚目のアルバム『ピタゴラス』では少しだけ金玉シリーズのストーリーものが影を潜めた印象もあります。がっつりストーリーものって「何でもくっつく金玉」くらいじゃないですか?

ツチヤ:結構ボツにしたんですよ。金玉が予備校に行く曲とかあったんだけど何か違うなと思って。僕、自分の曲を歌いながら自分でも笑っちゃうんですけど、2回目は割と冷静に聴くようにしていて。そこで笑えなかったらボツにしたり。

 

Q.「イタズラ金玉おやじ」の「揚げだて」という決め台詞は何回聴いても冷静じゃいられないくらい笑ってしまいますけどね。

ツチヤ:あれは自分で聴いても笑っちゃいます。でも最近は本当に結構ボツにしちゃうんですよ。

 

Q.なるほど。でも僕は、ツチヤさんの中に別人格がいるかのように金玉おやじが実在しているような気がしているんですけど。

ツチヤ:そのおやじがちょっと休ませてくれって言ってるから、おじさんじゃない語り手を探しているのかもしれないですね。そいつが出てくるのを俺も待ってるんですよ。

 

Q.疲れたおじさんの哀愁も金玉シリーズで聴きたいですけどね。

ツチヤ:そういう曲も実は作ったんです。自分の金玉が垂れ過ぎて、振り返ったら道が出来てたっていう。でもボツにしました。

 

Q.そうやってツチヤチカらが作り上げた金玉ロードを走る後続がそろそろ出てくる気もしているのですが。

ツチヤ:いいですね。「これが僕の金玉です」とか言って。

 

Q.でもまだまだ金玉おやじには元気でいて欲しいです。「3度目のはじまり」の「ワンツースリーフォー」のリズムの感じとかめちゃくちゃかっこいいですもん。

ツチヤ:あれ、かっこいいですか(笑)。おじさんが頑張って「ワンツースリーフォー」って言ってるんですけど、かっこよく聴こえたらもう末期ですよ(笑)。

 

Q.何処か達観してる感じに興奮しちゃうんですよね。あと今作はゲストも豪華ですけど、「金玉CITY JUNGLE」ではキンとチンということで鎮座ドープネスさんを迎えた極上の金玉ファンクが聴けますが。

ツチヤ:鎮座さんはやっぱり滅茶苦茶かっこいいですよね。ラフな感じでサラッとラップしとるけど、それが滅茶苦茶かっこいい。この曲、俺の声はいらないんじゃないかって思っちゃう。

 

Q.6eyesの「激しい爆発」でもツチヤさんは歌わず、SAGOSAIDをフィーチャーしていますよね。

ツチヤ:あれも俺の歌はいらないなって思ったんですよ。基本的に俺の声ってヴォーカルに向いてないんですよ。「激しい爆発」は女の人に歌ってもらいたかったから活動休止中のshe saidの佐合さんに歌ってもたうことにしたんです。佐合さんとは直接会ったことはなかったんですけど、DMで声を掛けさせてもらって。データのやり取りでレコーディングしました。1月12日に下北沢Threeのレコ発では一緒に歌ってもらうので今から凄く楽しみですね。

 

Q.2019年の夏の終わりを彩ったのは6eyesの「激しい爆発」、呂布カルマさんの「真っ青」、そしてツチヤさんの「金玉Autumn leafs」だなと。

ツチヤ:そこに「金玉Autumn leafs」が入っているのが嬉しい。「金玉Autumn leafs」は僕も好きですね。

Q.「光のシーズン」も良いですよね。

ツチヤ:「光のシーズン」は昔の郷ひろみに歌って欲しいですね。かっこいい動きのある昔の男性アイドルが歌ったら滅茶苦茶かっこいいと思います。

 

Q.この曲はかなり昔に公開されていましたが、その頃とはアレンジが変わっていますよね。ビートが強調されたような印象を受けました。

ツチヤ:前はスカスカだったけどTMネットワークを思いながらビートを強くしたら豪華な感じになりました。気に入ってますね。

 

Q.音的な面では「カッテミヤーカッテミヤー」も好きです。言葉が打楽器みたいだなと。

ツチヤ:「カッテミヤーカッテミヤー」は金玉シリーズの前に作った曲ですね。実はダンスホールレゲエを意識してるんですよ。鷹の目さん(JET CITY PEOPLE)には「え!?」って言われましたけど。ラガマフィンみたいなのをやってみたかったんです。

 

Q.「My First Big Beat」のケミカルブラザーズっぽさも意外で面白かったです。

ツチヤ:ケミカルブラザーズって僕はリアルタイムなんだけど、これまでまともに聴いたことがなかったんですよ。勝手なイメージでダサいと思っていて。でもアップルミュージックで何となく聴いてみたらかっこ良くて。それですぐ作ってみたんですよ。

 

Q.影響を受けたものを落とし込む場所があるのは制作する上で素晴らしいですよね。

ツチヤ:バンドだとそれが中々出来ないじゃないですか。物理的にも時間が掛かるし。でもガレージバンドだとすぐやれるし、すぐ公開出来る。それが面白くて始めたのが一連のシリーズなんですよね。

 

Q.ラップもそうですよね。今やバトルでも大人気のツチヤさんですがラップをしたことはあったのですか?

ツチヤ:全然ないです。今でもラップが出来てるとは思っていないけど、バトルとかやってみたら面白くて。でも僕のラップはHIP-HOPのそれとは全く別物だと思いますよ。バトルもラップはしてないですからね。ただ口が悪いだけ。でも「それラップじゃねえだろ」って言われても「だからなんだぁ?」って言えるから。そういえば2020年の最初のライブがラップバトルなんですよ(笑)。

Q.ツチヤさんのラップでかっこいいのは「おう?」とか「あん?」みたいな確認するような吐き出し方が最高だなと。「恐怖!金玉男」の「おう?」とか滅茶苦茶かっこいいですから。

ツチヤ:あれはハロウェインの歌ですね。

 

Q.そういう時事的なネタもすぐに金玉にしてしまうと。

ツチヤ:それが即席で作れる強みですよね。先を見越して作っていないので。思ったことを歌にしてすぐに公開出来るのは良い時代ですよ。昔だったらスタジオを抑えてレコーディングしてプレスして流通して、聴けるまで数カ月かかったのが、その日にもう公開出来るんですからね。ポール・マッカートニーも昔、作ってすぐにレコードにしたいって言ってたけどそういう時代が来たんだなって。

 

Q.音楽ってニュースペーパーの側面もあると思うんですよ。そのとき起きてることを歌にして、それが広まる。それはタイムラグがなければ」ないほど良いですからね。

ツチヤ:まさに。あとは曲が出来た高揚感を、出来たまま届けられるのはやっぱり魅力的ですよね。そのままの状態で聴いて貰えるんだから。その分、全然ウケなかったらダイレクトに落ち込みますけど。

 

Q.思った以上にウケなかった曲とかあります?

ツチヤ:滅茶苦茶あります。金玉以外は大体最初はウケないです。「光のシーズン」とか「パーティーのやり直し」とか全然ウケなかったですからね。勿論金玉シリーズも自分で作ったものなのでそれがウケるのは嬉しいんですけど。

 

Q.「出かける前に」は6eyesっぽいなと思ったのですが。

ツチヤ:そもそもサウンドクラウドで『Big Beat for 201x』を始めた頃は反響がある訳でもなかったし、バンドのデモを作ろうと思って書いた曲もあって。実際に6eyesで今やっている曲もありますからね。「パーティーのやり直し」とか実際バンドで演奏してるので。だからソロとバンドが全く別物ってわけではないんですよ。ソロで作ってバンドに還元出来るものは還元する感じですね。

 

Q.ツチヤさんがソロに見出している面白さって何だったりします?

ツチヤ:精神衛生上の調和ですね。毎年寒くなると鬱っぽくなるんですけど、去年の10月からソロで曲を作り始めてからは寒くなってもあの感じが全然ないんですよ。でも「ピタゴラス」が完成して1週間くらい曲を作ってなかったら鬱に入りかけたんです。だから曲を作り続けることで健康が保てるのかなって思っています。

 

Q.ある種、曲作りがセラピー的な効果があると。

ツチヤ:余計なこと考えないためにも。前はSNSで自分のことじゃなくても自分のことを書かれている気がして落ち込んでいたりしたんですけど今はもうなくなりましたからね。そういう点で音楽作りに没頭出来ているのは良いことだなと。

 

Q.3部作を作り終えて、もうすぐ当初の目標だった100曲にも到達すると思うのですが。

ツチヤ:何かをやり遂げたことがないから100曲作ることが目標ですけど、その後もきっと作り続けると思いますよ。金玉シリーズかどうかは分からないですけど。最近だとビートロックとか興味もあるし、そういうのもやってみたいです。あとは「激しい爆発」もだけど、誰かに歌ってもらうことに楽しさを見出しているので、そういう音楽も作っていきたいですね。今のところ誰からもオファーは来てないですけど(笑)。少年隊とか光GENJIみたいなアイドルをプロデュースしてみたいので、誰か紹介して下さい。

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3rd arbum 『ピタゴラス』
各配信サイトにて配信中

 

https://soundcloud.com/chikara-tsuchiya/sets/big