ゼリ→

1999年、シングル「おもちゃのピストル」でのメジャーデビューから20年。ボーカルであるYAFUMIの単独反抗としてゼリ→が期間限定復活を果たした。人気絶頂の02年、日比谷野外音楽堂でのライヴでYAFUMIがステージから落下し両足骨折し活動休止、そして04年には自主レーベル『VELVET SNOOZER』を立ち上げ完全復活するも08年にあの事件が起き、バンドは解散することに。その後LAID BACK OCEANとして活動を続けてきたYAFUMIが、メジャーデビューから20年の時を経て、単独プロジェクトとしてゼリ→を背負い、2020年の年末までの1年間期間限定でゼリ→としての活動を再開させたのだ。1人でゼリ→を再開させたことは大きな反響を生み、そこには賛同だけでなく否定的な意見もあったという。何故今ゼリ→なのか、何故YAFUMIが単独でゼリ→を背負うのか。それは実に11年振りとなった新作『+×』を聴けば伝わるはずだ。本来、インタビューすら野暮なのかもしれない。でも確かめずにいられなかった。単独反抗真っ只中のYAFUMIを訪ねた。

 

Q.まさかこんな日が来るなんて思っていなかったんですけど、いつ頃からゼリ→の話はしていたのですか?

YAFUMI:去年の夏頃に当時のスタッフと会う用事があって「解散から10年経ったけどゼリ→どうするの?」って言われて。最初は「もしやるとしたら音楽を辞めるときですかね」なんて言ってたんだけど「俺はお前が何かを諦めてからやるゼリ→なんか見たくないなぁ。やるんだったら一番ポテンシャルの高いときにやるのがいいんじゃないか」って言われて。それでコーヘイに聞いてみたんですよ。あいつとは1年に1回くらいメシ行ったりしていて。それで「俺がゼリ→をやるって言ったらコーヘイはやる?」って聞いたら即答で「やるでしょ!」って言ったんですよ。俺、それがすげえなって思って。あいつは10年間真面目に普通の仕事をしているんですけど、そこにも影響あるかもしれないじゃないですか。でも「やりたい」って即答するんですよ。そのときに「こいつ、まだ終わってないんだな」って思ったんです。勿論あいつは社会的に償わないといけないこともあるし忘れちゃいけないことも沢山あるんだけど、何も終わってないんだなって感じがして。それでゼリ→をやってみてもいいかなって思えたんです。それにゼリ→という看板を掲げて今の俺が何を歌うのかってことに自分でも興味があって。それで4人でもう一度ゼリ→を始めることにしたんです。

 

Q.では最初は4人で復活する予定だったのですか?

YAFUMI:そうなんですよ。でもある出来事が起きて4人でやれなくなってしまって。それで俺とカズキとユータローの3人でやるか、そもそもゼリ→をやらないか話し合ったんですけど、当時解散したときも3人じゃゼリ→じゃないって気持ちがあったから解散した訳だし、そこで俺が出した答えが、20周年を俺が1人でゼリ→としてやるってことだったんです。「恐らくこれが最後になるだろうけど、1人でやるわ」ってメンバーに伝えたら「それも俺達らしいかもしれないね」って言ってくれて。

 

Q.YAFUMIさんの決断も、それを受け入れたメンバーも凄い。本当に。

YAFUMI:結局俺達、結成したときと何も変わってないんですよ。だからこその落としどころだったのかもしれないですね。

Q.ゼリ→の復活がYAFUMIさんの単独プロジェクトであることに当時からのファンも、LAID BACK OCEANのファンも、色んな人が色んなことを考えたと思うんですよ。僕も最初は「どういうことだろう?」って思っていて。でも「STAY DREAM」のMVを観て腑に落ちたというか。

YAFUMI:本当は今回のことも事件のことも全部文章にして先に出そうと思っていたんですよ。だけどタイミング的に「STAY DREAM」のMVを先に発表したら、さっき言ってくれたみたいに、ちゃんと届いた気がして。逆に全てを説明するほうが嘘臭い気がしたんですよ。言い訳がましいというか。やっぱり音楽には言葉以上の力があるんだなって、改めて思いましたね。

Q.ゼリ→として久し振りにステージに立ってみて如何でした?

YAFUMI:袖からマイクまで歩く時の騒めきが凄くて。みんなの期待や不安が入り混じった凄いものを感じました。ゼリ→としてステージに立ってみて、バンドって何だろうって凄く考えたし、Hi-STANDARDの復活を観たり「ボヘミアンラプソディ」を観たこともあるし、あとROTTENGRAFFTYの20周年のライヴを観て、ゼリ→も同じ20周年だけど、じゃあ解散して1人でステージに立って何が20周年なんだろうとか。でも今回の復活は俺達4人で決めたことなんですよね。ステージに立っているのは俺だけだけど。そういう意味ではバンドなんじゃないかって。

 

Q.まさかの新譜のリリースにも驚きましたけど、これがもう滅茶苦茶パンクだし、滅茶苦茶ゼリ→だなと。

YAFUMI:4人だったら、ある意味何をやっても正解だし何をやってもゼリ→なんですよ。でも1人でやるとなるとそれは違って。新しいことをやるならゼリ→じゃなくていいし、だったらソロでやれよってなるじゃないですか。だからゼリ→という看板で新譜を作るなら、改めてパンクに向き合わないといけないと思ったんです。俺の音楽人生にとってのパンクとは何か。それを掲げて歌いたかったんですよね。自分の中でのゼリ→との距離とかパンクとの距離とか、それは凄く考えました。

Q.「世界と自分の本当の距離」からアルバムが始まることが全てを物語っているなと。最初の語りはYAFUMIさんがYAFUMIさん自身に問いかけているようで。「おまえ」というのは自分自身だろうし、その上で何を確かめにいくのかを明言する曲なんだろうなと。あと本当に全部言ってる。曲で全部言ってるんですよ。さっきの言葉はいらないって話じゃないけど、曲を聴けば全部分かるんですよ。じゃあ僕達はそのメッセージをどう受け止めるか。そこも考えさせられるなと。

YAFUMI:デビュー当時、20歳そこそこの対して社会経験もないような俺達のメッセージを盲目的に受け止ってくれる人たちが沢山いて、そこに対して疑問があったんですよ。「それでいいの?」みたいな。だから当時はそれが怖くてメッセージを打ち出せない時期もあって。だけど20年経って、俺はまだロックバンドのボーカルを続けていて、あの頃盲目的に信じてくれていた奴らに今もう一度投げかけたいんですよ。20年経って、あのとき盲目的に信じていたものが幻だったのか、本当に信じて良かったものなのか、確かめに来てもいいんじゃないかって。

 

Q.それこそ「名古屋くんだりの不良」が投げかけていたものが当時ああいう受け入れられ方をして一気にスターダムを駆け上った訳じゃないですか。そんな中であの事件が起きてバンドが解散して、それでも音楽を続けてきたYAFUMIさんが今、ゼリ→として何を歌うのか。それにみんなはどう応えるのか。その答えはブリッツにあったし、このアルバムにちゃんとあるんですよ。

YAFUMI:そう言って頂けると救われます。本当に。やっぱり最初は少し不安もあったんですよ。1人でやるって言ってみたものの、全然成立しない可能性もあるじゃないですか。「何これ?」みたいな。だからブリッツの日もお客さんが最初はちょっと戸惑っていて。探り探りみたいな。でもマイクトラブルがあってケーブルが切れちゃったんだけど、ゼリーの時よくマイクスタンドを床に叩きつけたりしてケーブルを切ってたなって(笑)。それくらいから空気が変わった気がしたんですよね。俺もお客さんも。ライブをしながらライブの中でどんどんゼリ→になっていくみたいな。

 

Q.あの日、ライブを観た人はYAFUMIさんが1人でゼリ→を背負ってステージに立った意味や意図を感じられたと思います。その瞬間まで半信半疑だったとしても。

YAFUMI:少ない情報の中でしか判断出来ないから仕方ないと思うんだけど、自分が信じてきたものをもっと信じてみろって俺は思っていて。だから「なんで1人でやるんだ」って怒っている人がいたのも知ってるし、そういう人にはSNSで反応したりもしたんだけど、本当に本当のとこで言ったらありがとうしかないんですよ、うん、ありがとうしかない。こんな俺のことをずっと見てくれてるんだから。でも俺はありがとうおじさんになるつもりはないので、その先を言うならば「お前が信じてたものって何なの」っていう。「お前が自分自身に聞けよ」ってことですよね。

 

Q.だから本当はこのインタビューも野暮なのかもしれない。だってさっき言ったように「SATY DREAM」を聴いたら全部分かるから。だからまだ「何故今ゼリ→?」って思ってる人は本当にアルバムを聴いて欲しい。「悪魔の証明」の中で「つじつまあわせに必死になるならゼリ→の名前は必要ない」という歌詞もありますけど、じゃあ何でゼリ→の名前を使っているんだってことの答えをリスナーに委ねているんですよね。ちゃんとお前自分で考えろよっていう。だからインタビューで全部話してもらうが野暮なんじゃないかって。これから始まるツアーでゼリ→を観る人や、このアルバムを聴いた人が自分の中で自分の答えを見つければいい話ですから。じゃあ何で今日、このインタビューをするかっていうと僕は僕で今の自分がやっていることでゼリ→を確かめたかったからなんです。

YAFUMI:嬉しいです。俺が今ゼリ→をやっている事実を、当時聴いてくれていた奴に出来るだけ多く届けたいからキャンペーンとかインタビューを受けたりしてるんだけど、それを見た人が「ゼリ→やってるよ!」って当時のダチに久しぶりに連絡してみるかっていうのもロックバンドの役割なのかなって、ここにきてやっと…やっとというか、ここにきたからこそ分かったんですよね。

Q.ちなみにゼリ→としての活動は期間限定とのことですが、その後のLAID BACK OCEANには影響はありそうですか?

YAFUMI:どうなんだろう。何かが変わる気はしますね。でもそれが何なのかは今はまだ分からないです。何かが変わる…変わるのかな。でも分からないからこそ面白いですよね。ゼリ→の再始動だって俺自身がどうなるか分かっていなかったし。しかもまさか1人でやるなんて思ってもなかった訳で。でも1人じゃなきゃ出来なかったこともあると思うんですよね。そこを紡いでいくのがYAFUMIという人間のやるべきことなのかなって。

 

Q.何か僕は復活のニュースを見て、ゼリ→という言葉やあのロゴが作戦名に見えたんですよ。今は主婦をしている人、家族を養うために仕事している人がゼリ→の名の下に久し振りに革ジャン着てライブハウスに集まる作戦名みたいだなって。あの日、きっと全国各地でぶち上っている人が沢山いて、YAFUMIさんは単独反抗って言ってるけど、全然単独反抗じゃなくて、群像劇というか、みんなでゼリ→を動かしてる気がするんですよね。その矢面に立っているのがYAFUMIさんっていう。だからもう僕らは楽しみだけなんですよ。

YAFUMI:あははは。そっか。それだったらゼリ→を動かして良かったです。どうしてもライブで深妙な面持ちでいる時間とかも出てきちゃうかもしれないけど、ずっとしかめっ面して歌ってきたボーカルじゃないので「そんな事うるせえよ」ってところをここから先のツアーで出せたらいいなって思っています。

 

Q.先の話ですが、この復活期間でゼリ→を完結させる予定ですか?

YAFUMI:俺の中では完結させるつもりでやっていますね。完全に。そうすることでやっと本当の意味で先に進める気がするんですよ。

 

Q.それはゼリ→をずっと好きだった人もそうかもしれないですね。ゼリ→がしっかり完結することでゼリ→を好きだった自分をやっと肯定出来るんじゃないかって。

YAFUMI:そう思ってもらえたら本当に嬉しい。ゼリ→というバンドは全然望まない形で終わってしまったから、時間はかかったけどしっかり終わらせたいと思っています。20年前に迷いながらメッセージを放っていた自分に対しても、20年後の今「頑張ったんじゃないか」って言ってやれる気持ちになれたからこそゼリ→を動かしたってのもあるし、「これ全部嘘じゃねえか」って思っていたら1人ではやれないから。だからそこは褒めてやってもいいのかなって

 

Q.「キミのヒビ」を聴いて、ゼリ→としての日々だったり、20年の日々だったり、LAID BACK OCEANとしての日々だったり、あの時出来てしまったヒビであったり、色んなことを考えたんですけど、その全部にその時のYAFUMIさんがいるから、そこに嘘がないから、今回のゼリ→があったんだろうなって。

YAFUMI:そこまで感じてもらえて本当にありがたいです。

 

Q.「キミのヒビ」には「モノクロの風を色づける」という歌詞もありましたけど、モノクロのままだったゼリ→の思い出に最後に綺麗な色を塗ってくれて、そういうケツの拭き方をしてくれたから、なんていうか、本当に嬉しいです。これはファン心理含めてですけど、本当に良かったです。

YAFUMI:まだ1年あるんでね。どういう物語になるかはまだら分からないですけど。

 

Q.1年やった結果、ゼリ→を続けたくなる可能性もありますからね

YAFUMI:そうそう。でもまぁそれはないと言っておきましょう。

 

Q.でもそのときに決めたことが全部正解だと思うし、これまで言ってきたことを全部ひっくり返したっていい訳で。そもそもゼリ→を1人でもう一度始めたこと自体がとんでもないことですから(笑)。でも死ななきゃ何でも出来るんですよね。

YAFUMI:そう。今回ゼリ→を動かせたのは誰も死んでないからなんですよね。今回のゼリ→の復活も4人で決めたので。それはみんなに伝えたい事実ですね。

Q.YAFUMIさんの単独反抗の出発点にあの4人がいたことが知れて本当に良かったです。やっぱりゼリ→はゼリ→でした。

YAFUMI:ありがとうございます。だから4人でやろうって話したあの時点で、実はもうゼリ→は完結しているんですよ。この1年はそれをみんなに届ける1年なのかなって思っています。

………………………………………………………………………………………………………………………………………….


ゼリ→
タイトル:+×
DDCZ-2245
1818円(+税)
2019年12月18発売

 

ゼリ→ 20th Anniversary Tour “+× (plus times)”
1/17(金) 愛知・名古屋ボトムライン
1/25(土) 大阪・umeda TRAD
2/02(日) 福岡・BEAT STATION
2/09(日) 東京・新宿BLAZE

https://jelly-web.com/