The Cheserasera

結成10周年を迎えたThe Cheseraseraの脂の乗り方が凄い。2009年の結成より走り続けてきた彼らがメジャーでの活動を経てインディーズレーベルdry blues labelを立ち上げたのが2017年。以降、『dry blues』『最後の恋 e.p.』『幻』とコンスタントに作品を作り続けながら全国各地でライブを重ねてきた彼ら。ひとつの転機になったのが「最後の恋」のMVに関する宍戸翼の心情を吐露したような生々しいツイートだろう。その言葉があっという間にSNS上で拡散され、その結果「最後の恋」が沢山のリスナーに届くこととなる。宍戸が「バンドが繋がった」と語るように同曲が彼らを押し上げたことにより更に音楽的な面で突き詰めた『幻』という作品も生まれることとなった。そんな彼らが2020年の幕開けと共に北関東3カ所を回るツアー「Various encounter 2020」を名古屋今池HUCK FINNの企画として開催する。その後、4月にはThe Cheserasera主催の東名阪3マンツアーの開催も発表されている。結成から10年が経った今、The Cheseraseraというバンドを突き動かすものとは。宍戸翼に話を訊いた。

 

Q.少し遡りますが『dry blues』のリリースのタイミングで自主レーベルを立ち上げたときのバンドのモードはどんな感じでした?

宍戸:かなり気合いは凄かったですね。正常な元気というよりは切迫したものもあるし、狂気じみているというか、「絶対にやってやるぞ」っていうのは僕の中ではあったし、メンバーも一緒に長くやってきたんで、そこは全員連動して思っていましたね。

 

Q.それはメジャー期に感じてたことだったり、バンドを長く続けてきた中で思ったことに対するカウンターだったりするんですか?

宍戸:メジャーで2年やって色んなことを教わったのでそこに対する「この野郎!」みたいなのはなくて、メジャーを辞めるからこそ絶対に結果を出したいという気持ちがあって。もっと自分らで出来ることがあるんじゃないかって。絶対にセールス落とさないぞっていう。

 

Q.その意気込み通りというか、「最後の恋」のMVがSNSで物凄い反響だったじゃないですか。結果を出すという意味ではいきなり第一関門突破したというか。

宍戸:そうですね。「最後の恋」がなかったら終わってたんじゃないかな。本当にギリギリでやっていたし、MVも撮れないかもしれないって話になって。「だったら自分で撮るわ」って全部自分でやったんですよ。そうやってモード的にカリカリしてたところでTwitterがバズったんですけど、反響が出て首の皮一枚っていうか。別に追い詰められていた訳ではないんですけど「ここでやれなきゃもうやれねぇぞ」って決めてた部分は凄くあったんですよね。そういう意味では「最後の恋」に救われました。

 

Q.あの宍戸さんの本音ツイートがバズったことでMVが広まって音楽そのものが評価さたことがThe Cheserasera自身を押し上げたと。

宍戸:良い音楽っていうだけでやっていけない世の中なんで(笑)。エッヂが成せた瞬間だったとは思いますね。

Q.尖りというか、そういった生々しさも露呈した上でリリースされた『幻』がどんな作品になるかと思ったら、尖りや熱量だけではない凄く音楽的な作品だったじゃないですか。超サイヤ人であることが普通になった超サイヤ人の強さみたいな。覚醒した状態をずっと保っている強さを『幻』から感じたんですよね。これが今のThe Cheseraseraの強さだなって。

宍戸:昔から強迫観念というか、劣等感が凄くあったんですよ。でも「最後の恋」でそれが少し許せたんじゃないですかね。メジャー期もヒット曲を作らないといけないとか、王道っぽいものを作らないといけないっていう強迫観念に追われていたんですけど、色んなものを削ぎ落した結果が結果として出たことでより強く許せたんだと思っています。だから「幻」は自由に作れたのかなって。

 

Q.そういう心情がバンドにもたらすものは大きいと思いですか?

宍戸:大きいですね。売れてるだとか、周りの人がどうだとか、そういったことがダイレクトにバンドの空気感に出るバンドだと思うので(笑)。だから滅茶苦茶生身でやれてるんじゃないですかね。全然演じれてないとも言えますけど(笑)。

 

Q.バンドの在り方や方向性をメンバー間で話し合ったりします?

宍戸:どういう音楽を作りたいか、バンドがどう在りたいか、ストレスなく話せるようになったのは「最後の恋」がちゃんと評価されてからかもしれないですね。

 

Q.それくらいの時期から明らかにステージでの表情も変わりましたよね。覚悟が全然違うというか。

宍戸:「最後の恋」前後で色んな話し合いもしたし、バズった瞬間に「とうとう戻れない瞬間を迎えたな」と思ったんですよね。ここでズッコケたりしたらもう本当に終わりだなって。そういう意味では背水の陣みたいなのがずっとあるのかも。

 

Q.ここで駄目だったらおしまいだという覚悟が逆説的にバンドの自信にも繋がっていってるように見えます。10年を振り返ると色んな時期があったと思うんですけど、かなり濃い時間を過ごしてきたんだろうなって。

宍戸:ひとりの人間が形成されるぐらいの濃さはありましたね。もうなくなってしまったんですけど、渋谷屋根裏っていう箱がホームで、そこに出てた頃はしょんべん臭い話をいっぱいしてたし、飲みまくって迷惑かけたり、叫びまくって喉を潰して勝手にキレてみたいな、かっこよく言えば衝動でやれていたんですけど、何も知らないままやっていたんですよ。その後、事務所の新人発掘の人に会って事務所に連れてきてもらって、そこからメジャーに割とすぐ上がって、それが終わって。屋根裏が潰れたあたりから本格的にバンド活動っぽくなってきたんですけど、音楽が好きっていう部分とビジネスみたいな部分が切っても切れないんですよね。音楽をやっていくためには。そういう意味ではこの10年で純粋さをなくしたなって思いますね。

 

Q.夢も現実も見てきたからこそですよね。

宍戸:俺自身かなりの欠陥人間なんですけど、そんな俺が作った音楽を良いって言ってもらえるんだからバンドは捨てたもんじゃないぞっていうのはずっと思っていて。企画をやってる人もだし、近くにいるバンドの奴とかもだし、なんか辞めそうな奴もいっぱいいるんですけど、「宍戸がやってるんだから俺ももうちょっと頑張ろうかな」って思って欲しいですね。

 

Q.ちなみに10年活動してきた中で辞めたいと思ったことはありますか?

宍戸:「最後の恋」がちゃんと響かなかったら辞めてたかも。MVの編集とかも毎日徹夜して、途中でiPhoneが重くなって消えたりして(笑)。「これが駄目だったら本当に無理だわ」って気持ちになってましたから。

 

Q.最近の話なんですね。

宍戸:メジャーを辞めたからこそ真価を問われると思ったんですよ。あの時期は色々と重なったので、さっきも言ったように「最後の恋」が本当にバンドを繋いでくれたと思っています。

 

Q.メジャーでの経験も、インディーレーベルを自分達で作り上げたことも、「最後の恋」がバズったことも、それ以降のライブでの表情も、全部が繋がった1本の道なんですよね。全部あったから今に繋がっている訳で。

宍戸:これまでの経験がひと繋ぎの何かになってないと、夢や人生を歌っても何の説得力もないと思ってるんですよ。今までの出来事をどう良かったことにするか、そんなことを考えて歌を作ったり。

 

Q.だからThe Cheseraseraの音楽を聴くと長いドキュメントを見ているような気になるんですよ。

宍戸:ああ、自分でもドキュメントだなって思います。それが売りになってきたというか(笑)。それはきっとバンドを長く続けてきたからこそ表現出来ることでもあると思うんですけど。

 

Q.2020年は4月に東名阪のツアーもあると思いますけど、その前に名古屋のHUCK FINNが企画する北関東ツアーもあります。これはどういう経緯で決まったのですか?

宍戸:元々は名古屋でのワンマンが終わった打ち上げで黒崎さん(HUCK FINN)と「北関東いいじゃん!行こうよ!」「いいっすね!」とか話していたらその場で今回行くことになった3つのライブハウスの店長に電話をし始めて。その場で決まったんですけど、水戸LIGHT HOUSEの稲葉さんにはドヤされました。「本当にやんのか?お前、次の日絶対電話してこいよ!」とか言われて。翌日、ビビッて電話しました。めっちゃ怖かった(笑)。

 

Q.そのノリで決まったツアーが実現するのがもう滅茶苦茶バンドマンですよね。

宍戸:あははは。だけどへなちょこな部分もあるし「疲れたよー」みたいなのもあるので、ノリで「やろうぜ!」って全部受けたらしんどいなってときもありますよ(笑)。もうちょっと芯太くやりたいですけどね(笑)。でもそうやってノリで決めちゃえることが一番面白かったりするし、そういうイベントが一番健全だと思っているので、ノリだけでやれたら一番いいかもなって思っています。それも語り草になるじゃないですか。そうやって自分がちゃんと語れることだけをやりたいんですよ。これはこうなんだよって言えることをやりたいので。

 

Q.そういうストーリーがまた新しい楽曲を生むだろうし、明日のThe Cheseraseraにまた繋がっていくと思うと、ひとつひとつの出来事に意味を感じますね。

宍戸:俺が作る歌も最近はフィクションも含まれてきましたけど、やっぱり実体験が絶対基になってるんで。だからいつか俺が幸せになったとしたらそのときに初めて書ける歌も多分あると思うし、そういう書き方をしてる以上、歌は出来続けるんだろうなって思っています。

 

Q.そうやって絞り出すように音楽を作ってきたと思うんですけど、『幻』ではそれだけではない部分も見えたと思っていて。そのバランス感覚を両方持っている今のThe Cheseraseraが次に作る音楽がどんなものなのか、楽しみにしていますね。

宍戸:いつもギリギリになってワッて作るんですよ。やっぱりタイムリーな気持ちでやりたいんです。「今俺はこれを歌ってるぜ」みたいなモードでやりたいんで。だからメンバーはいつもヒイヒイ言ってます(笑)。

 

Q.The Cheseraseraは常に作品を作り続けているし、きっとまた来年も新しい音源を届けてくれると思うんですけど、最近でいえば「最後の恋」があったからバンドが繋がったって言っていましたけど、そこにしがみつくんじゃなくて、きっとそれを超える曲を作っていくんだろうし、その今の先に進もうとするモードがバンドを突き動かしているんだろうなって。

宍戸:そういう状況を楽しんでるんですよね。頭の良いバンドとか売れてるバンドも周りには沢山いますけど、俺達のようなバンドが辞めないでやってこれた自信はありますからね。普通だったら辞めるレベルの出来事もいっぱいありましたから(笑)。それでもまだバンドを続けているってことは、きっとバンドが楽しいからなんだと思います。

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[HUCK FINN presents] -Various encounter 2020 北関東編-

2020年1月21日(火)千葉LOOK
2020年1月22日(水)水戸LIGHT HOUSE
2020年1月23日(木)埼玉HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1

 

The Cheserasera主催 東名阪3マンツアー

2020年4月04日(土)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
2020年4月05日(日)名古屋アポロベイス
2020年4月25日(土)下北沢GARDEN

http://thecheserasera.com/