クアイフ

クアイフが『POP is YOURS』より1年半振りとなるミニアルバム『URAUE』をリリース。URAUEと書いて裏表。人間にも物事にも二面性があって、それはどちらかが本当とかではなく、表裏一体であることは生きてきた中で何度も何度も感じてきた。今回のアルバムでクアイフはその裏の部分をさらけ出している。負の感情や隠したい感情を包み隠さず歌うことは勇気がいることだと思う。弱さを誰かに見せることが出来る人は本当に強い人だと思う。そしてクアイフはその全てをこのアルバムに落とし込んだのだ。感情がドバドバに溢れ出た『URAUE』に辿り着いた経緯をメンバーに訊く。

 

Q.今作を聴いてまず感じたのは、深夜の森さんのインスタグラムのストーリーズがそのままアルバムになったなと。

森:あははは。本当ですね(笑)。でもこのアルバムが出来てからは深夜のあの感じ減ってませんか?(笑)。

 

Q.確かに最近は少し減ったかも(笑)。

森:それはきっとアルバムに落とし込めたからです(笑)。私、思っていることを隠せないタイプなんですよ。良い顔したり、お世辞を言ったりするのも苦手だし。だから今までは音楽に消化出来なかった感情がSNSに溢れ出ていたんだと思います。

 

Q.「POP is YOURS」はその名の通りクアイフのポップな面が打ち出された作品だったと思うのですが、「URAUE」はそれとはまた違う側面を感じるアルバムですよね。まさに裏表というか。勿論両方とも紛れもなくクアイフなんですけど。

森:まさにその通りですね。

内田:これから森が歌っていく上で全部をさらけ出すことが必要なことだと思ったんです。森は良い意味で裏表がない人間なので、そこを音楽でもしっかり表現したかった。だから今まで歌ってこなかったような感情も歌いたかったんです。それはメジャーで活動してきた中で気付いたことでもあるんですけど。

 

Q.メジャーデビューから約1年半経ちましたが振り返るとどうですか?

内田:インディーズ時代と比べて考えることは増えましたね。

森:内田はサラリーマン経験があるけど私は会社員になったことがないんですよ。だからメジャーに行って会社という組織に関わって初めて社会というものを知った感覚です。それで悩むことも増えたんですけど、会社で働いている人は普段こういう環境にいるのだなあと。言いたいことが言えなかったりとか、上司がどうとか。そうやって戦いながらみんな日々生きていて、それをライブハウスで発散しているのかなって。勿論私も悩みはこれまでもあったけど、メジャーに行ったことで初めて分かった気持ちがありました。

 

Q.でもその経験は大きいですよね。

森:視野が広がったと思います。例えばサラリーマンの人達って自分の意見も言えないまま悔しい気持ちを飲み込んでいるのかなとか、それは社会人だけじゃなくて学生でも色んなことを抱えて生きてるんだろうなとか、自分の環境が変わったことでそこをよく考えるようになったんです。

 

Q.森さんの心境の変化をメンバーは感じました?

三輪:感じるというか、森はなんでもすぐ口にするので感じる以前に強制的に知らされます(笑)。でも僕らも森と同じ気持ちなんですよ。やっぱり悔しい思いもしたし、関わる人が増えた分悩むことも考えることも増えたので。

 

Q.内田さんは歌詞を書く上で森さんの変化を意識したりしました?

内田:今までは自分の思想の中で書いてたけど、森の心境の変化を感じて、もっと森に寄せた歌詞を書いたほうがいいのか凄く悩みました。性別も違えば人も違うから、バンドのメンバーとは言っても考え方の違いも出てくる訳で。でもそこを意識し過ぎると表現が痩せていくと思ったので、森の気持ちを最優先するのか、自分の表現を押し通すのか、そのジレンマがありましたね。

 

Q.その結果、さらけ出すような歌詞になったと。

内田:本当のことしか歌いたくないという森の気持ちに寄り添っているので結果的に今作はさらけ出すような作品になりましたね。

 

Q.これまでの楽曲も紛れもなく本物の感情だと思うんですよ。だけど今作はまだ見せていなかったクアイフの感情も解放しているのかなと。

森:そうですね。大袈裟かもしれないけど、私は歌を歌っていく中で綺麗事とか全く言いたくなくて。だからこれまでの自分達の曲だって何も嘘はついていないしそのときの精いっぱいで作ってきたと思っています。でもまだ出していなかった自分達の顔もあって。そういう自分が本気で思っていることを隠してステージに立ちたくないなって思ったんです。それが今回のアルバムでやっと出せたんじゃないかなって。

内田:エンターテイメントとして作り込まれたアーティストに憧れるし凄いなって思うんですけど、僕らはそこじゃなくて、人間味があるものとして勝負したいなって思っていて。3人の人間性が出るような。

 

Q.歌詞で「まじで」とか出てくるのはそういうことですよね。

内田:そうそう。

森:いつも内田が書いた歌詞に私がああだこうだ言うんですけど「Parasite」の「まじで」というフレーズは最初からあったよね。

内田:森がいつも言ってる言葉ってなんだろうって考えたときに「まじで」ってめちゃくちゃ言うなって。それを歌詞にすることで説得力も増すと思ったんです。

三輪:そのうち「めちゃくそ」とか歌詞に入ってきそう(笑)。

内田:「めちゃくそ」もめちゃくちゃ言うよね(笑)。そう思うと、森が普段使ってる言葉って結構あるかも。

 

Q.リアリティという意味では「337km」もリアルですよね。この距離は東京と名古屋の距離ですか?

森:そうですね。私達はしょっちゅう東京と名古屋を行き来しているので。

 

Q.バンドを続けていく中で思っていることが溢れ出ているなと。

森:「こんなこと言ったらかっこ悪いかな」ってことも全部書いてますからね。リアルに私達のバンド活動についての葛藤を歌っているので。これまでだったら言いたくなかったことも全部歌詞にしています。

 

Q.バンドを続けることの難しさや葛藤も感じます。

森:これは私の個人的な意見なんですけど、解散や活動休止って、どれだけしんどくてもその選択は私の中でまじで全くなかったんです。諦めるとかまじでないなって。だけど今回のアルバムが出来るまでの過程で初めてバンドを辞める人の気持ちが分かったんです。分かっちゃったんです。そんな風に思ったり、ましてやSNSにそういう気持ちをかくことなんて絶対にしちゃ駄目だと思っていたのに。

 

Q.その意識が変わったのは?

森:例えば私の好きなバンドがいきなり解散を発表したとして、私はそのミュージシャンが悩んでいる過程も知りたいんです。海外のインタビューとかって割とまじで「メンタルやられてて」とか「今本当に辛くて」とか言ってるじゃないですか。ミュージシャンだって人間なので絶対に悩むし、それを表に出すことは悪いことじゃないなって。そう思えたから私も全部言っちゃおうと思ったんです。さらけ出すことがかっこ悪いと思う人もいるかもしれないけど、さらけ出さないと分かってもらえないこともあるので。

内田:LUNKHEADがブログで「恵比寿リキッドルームのワンマンのチケットが売れていない」という告白をしていて。そのブログが一気に広まってソールドアウトしたんですけど、そういう先輩の行動に勇気をもらって。そうやって戦ってる先輩がいるんだから僕らも戦ってる過程を表現として見せてもいいんじゃないかって。

Q.「いたいよ」は内田さんが好きだと公言しているTHE BLUE HEARTSの影響を歌詞の随所から感じました。

内田:あ、分かります?今までは自分のバックボーンやルーツを出し過ぎるのはクアイフにとって邪魔になるんじゃないかと思っていて。でも森のモードが変わって、僕も自由になれた部分があるんですよね。それで強く影響を受けたTHE BLUE HEARTSを落とし込んでみたらどうなるかなって。

 

Q.アウトプットの仕方は全然違うんですけどね。でもしっかりTHE BLUE HEARTSを感じました。そしてこの曲では森さんの歌にもルーツが色濃く反映されている気が。

森:清春さんですよね。

内田:お互いの好きなものが共存しているのは面白いよね。

 

Q.そしておそらくこれまでだったら遠慮なくぶっ叩いていたはずの三輪さんのドラムがしっかり曲を支えているのが素晴らしい。

三輪:前は自分のバックグラウンドをモロに出して「どや!」っていうドラムを叩いていたと思うんですけど、その出し引きが出来るようになったんだと思います。

 

Q.主張はあるけど曲の活かしどころをメンバー各々が意識しているのが伝わります。「Parasite」のベースとか。

内田:あの曲はこれまでやってこなかったシティポップ的なアレンジなんですけど、そのままやったら違うと思ったのでベースで景色を変えたかったんです。

 

Q.「ハッピーエンドの迎え方」もシティポップ感ありますよね。一見ハッピーなウェディングソングなんですけど、曲を聴いていくとエンディングは…。

森:普通に考えたらそのままハッピーエンドで終わるけど、まじでそうじゃないことがあるなって。世間一般的にいうゴールがハッピーとは限らないじゃないですか。恋愛もそうですけど、バンドも一緒で、この曲を書いている頃、仲の良いバンドが解散するって聞いたんですよ。でもそれは後ろ向きな選択じゃないんですよね。終わらせることが決してバッドエンドな訳じゃないなと。それで人生の選択について書いたんです。

 

Q.さよならから始まることがありますからね。

森:終わりは始まりですから。

 

Q.終わりを痛烈に感じさせる「桜通り」はクアイフ史上、最もシリアスな曲だと思いますが。

森:ここまで露骨に自殺をテーマにしたのは初めてですね。「いたいよ」もいじめがテーマになっているんですけど、そういうテーマを歌ってこなかったのは私が歌うことで誰かを傷つけるんじゃないかと思っていて。震災についてもそうですけど、今までは考え過ぎてしまって歌えなかったんです。怖かったんですよね。私なんかが歌っていいのかなって。でも今は自分達が感じることをしっかり歌っていきたいと思っていて。

 

Q.自分達で線を引いていたものを取っ払ったと。

森:そうですね。これは歌っちゃいけないんだっていう、その線引きをなくしました。

 

Q.じゃないと「クレオパトラ」のような曲は歌えないですよね。

森:あははは。クアイフがこういう曲を歌うのって今まで絶対になかったですからね。

内田:最初は美女に惑わされる男の歌だったんですよ。でも森にデモを聴かせたら「もっとぶっ込みたい」って(笑)。それでどんどんふざけていくうちに風俗の歌になってしまいました(笑)。

 

Q.「未知なるテクニック」とか「神業オーラル」とか…うるせえよっていう(笑)。

三輪:あははは。うるせえよ(笑)。

森:凄い勢いでそのワードが出てきましたからね(笑)。これをクアイフで歌うのが面白いなって(笑)。

 

Q.これは新しい扉をこじ開けましたね。でもメンバーの素が観れて嬉しいですよ。「自由大飛行」もめちゃくちゃ森彩乃ですしね。「大人ぶっちゃって何それ」とか。

三輪:あれはめっちゃ森(笑)。

森:全部言っちゃおうと思って(笑)。

 

Q.Van Halenっぽいイントロも面白いですね。

内田:お!さすが!

森:まさにVan Halenの「Jump」を意識しているんですよ。レーベルの方に「クアイフはせっかくキーボードがいるからああいう曲を作ればいいのに」って昔言われたことを思い出して。それであのイントロが生まれたんです。最後の歌詞が「自由に飛べそうかい?」なのは「Jump」とは関係ないんですけど(笑)。

 

Q.「自由大飛行」だから「Jump」なんだと思っていました。

森:そこは無意識でした。飛ぶって色んなニュアンスがあって、「桜通り」ではビルから飛び降りる「飛ぶ」ですけど、「自由大飛行」みたいに自由に飛べたら命を投げ出さないで済むかもなって。生きている世界が不自由だから飛び降りる気持ちも分かるし、でも生きることを選んだ上で自由に飛べたら死なないで済むのかなっていう。

 

Q.「Viva la Carnival」は人生を上手く飛ぶための背中を押す曲だなと。グランパスのオフィシャルサポートソングであることからサッカーを連想させますけど「飛び込んで 加速して 新たなステージへ」というメッセージはどんな人にも共通して響く言葉だなと。

森:私は色んなことを気にしちゃってこれまで突っ込んだテーマを歌えなかったんですけど、でもなんで音楽をやってるか考えたときに、自分が音楽に救われたように誰かを救う音楽を作りたいと思ったんです。その為には裏も表も全部歌わないとなって。そう思えたことで出来たのが『URAUE』というアルバムなんだと思います。

内田:僕達が強い意志を持ってやっていく覚悟と、ネジを外したユーモアと、そういう今のクアイフのモードが形になったアルバムだと思うので、これが出来たことでバンドは確実に新しいステージに行けると思っています。

 

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タイトル:URAUE
2019年8月28日発売
ESCL-5269
2315円(税込)

クアイフ「URAUE」release tour “ ITTAI ”ワンマンライブ
9/26(木)千種文化小劇場(ちくさ座)
9/27(金)千種文化小劇場(ちくさ座)

http://www.qaijff.com/