OAU

結成15年目を迎えるOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)がニューアルバム『OAU』を完成させた。2005年にTOSHI-LOW、KOHKI、MAKOTO、RONZI、そしてMARTIN、KAKUEIの6人で結成されたOAUはアコースティックバンドとしてBRAHMANと並行して活動を続けてきた。2010年よりキャンプを通して音楽を楽しめるフェスティバル「New Acoustic Camp」を開催したり、昨今ではドラマ「きのう何食べた?」のオープニング・テーマや、映画「新聞記者」の主題歌を担当するなど幅広い層へ音楽を届ける活動をしている。音楽的にも活動的にもバンドの集大成ともいえる『OAU』を完成させたMARTINに、結成当時のこと、アルバムについて、話を訊いた。

 

Q.今年でOAUは15年目を迎える訳ですが、MARTINさんが最初にメンバーと出会ったのは?

MARTIN:もともと俺はテーマパークで演奏する仕事で日本に来たんだけど、最初はそこで知り合った仲間とバンドを組んでいて。それが後のJOHNSONS MOTORCARなんだけど、その頃は小さいパブでライブをしていて。その頃、子供が出来て、とにかくお金を稼がないといけないからアイリッシュバーでライブをしていたんだけど、それをAKEBOSHIが観にきてくれて「手伝って欲しい」って言われて彼のサポートをすることになったんだよね。それでAKEBOSHIとBRAHMANが対バンすることになって。恵比寿リキッドルームで。それが2004年かな。

 

Q.そこで初めてであったと。

MARTIN:そう。だけど俺はBRAHMANを知らなかったし、その日も全くライブは観れてなかったからどんなバンドなのかは知らなくて。それで楽屋でたまたま近くにいたTOSHI-LOWに「ライターある?」って声掛けたんだよ。煙草が吸いたかったから(笑)。

 

Q.なんて運命的な(笑)。

MARTIN:そしたら「ない」って言われて(笑)。そのとき楽屋の隅っこにかわいい女の人がいたからTOSHI-LOWに「あの子かわいいよね!誰だろう?」って言ったら「俺の嫁」って(笑)。その頃俺は21歳の空気が読めない奴だったから「凄いね!よかったじゃん!」とか言ったりして(笑)。その頃ちょうど俺はサポートじゃなくて自分のバンドをやりたいと思っていた時期だったから、TOSHI-LOWに「俺も曲作ってるから一緒にバンドやろうよ!BRAHMANってバイオリンいる?」って聞いたの。そしたら「絶対にいらない」って言われて(笑)。

 

Q.BRAHMANを知らなかったからこそ入れる言葉ですね(笑)。

MARTIN:何も怖くなかったからね(笑)。「なんかカリスマ性あるじゃん」とか言ったりして(笑)。それで俺がしつこかったから「今は忙しいから半年後、ツアーが終わったら話そう」って言われたの。それで半年後に本当に電話してBRAHMANのライブを観に行ったんだけど、新木場STUDIO COASTも知らなかったしBRAHMANがどんなバンドかも知らなかったから会場に着いて「なに、この人たち人気者なの?」って(笑)。それでTOSHI-LOWが「じゃあ事務所で話そう」って言ってくれたんだよね。彼は怖いイメージがあるけど心は優しいから。本当は「あっち行けよ」って思ってたはずだけど(笑)。

 

Q.事務所ではどんな話をしたのですか?

MARTIN:俺が作ったアコースティック、ジャズ、ファンクが入ったデモを持っていったんだけど、TOSHI-LOWがアコースティックの曲を気に入ってくれて。その中に「Believe」のデモもあったんだけど「これだったら面白いかも。何かやってみようか」って言われて、メンバーを探すことになったんだよ。TOSHI-LOWは顔も広いし、どんなメンバーが来るかと思ったら全員BRAHMANだったんだけど(笑)。あとはパーカッションが欲しかったから俺がテーマパークで一緒に働いていたKAKUEIを誘ってOAUが始まったんだよね。最初は「Believe」と「Dissonant Melody」と「Hold your head up high」を作り出したんだけど、それが良い感触だったの。KOHKIがアコーステックギターを弾くこともあまりなかっただろうし、MAKOTOもウッドベースだし、RONZIも優しく叩くのはあまりなかっただろうし、TOSHI-LOWもギターを持って綺麗な声で歌うのは新鮮だったし。それがみんな面白かったんだと思う。そのままリハを重ねて初ライブを下北沢440でやったんだよ。3曲15分のライブだったんだけど。そしたらまだ3曲しかないのにアルバムを出す話になって、ツアーが決まって、夏フェスにも出て…気付いたら2019年になってたよ(笑)。

 

Q.いきなり15年跳びましたけど(笑)、何かひとつタイミングが合わなければOAUは生まれていなかったのかもしれないですね。

MARTIN:はっきり言ってラックだよね。ラックを捕まえたと思うよ。あと俺がBRAHMANを知らなかったのも大きいんじゃない?だってGREEN DAYやOFFSPRINGだったら緊張して話し掛けないから(笑)。

 

Q.でもBRAHMANのメンバーとバンドを組むことがどういうことかは後に感じたのでは?

MARTIN:BRAHMANの活動があるからOAUが出来るけど、BRAHMANの活動があるからOAUが出来ないこともあるじゃん。それが若かった頃の俺は分からなくて。なんでもっとOAUをやらないのかってずっと思ってて、俺は今みたいに理解出来てなかったからストレスだった。BRAHMANのライブに行くとメンバーもお客さんも盛り上がってるし、OAUのライブではお客さんに変な目で見られたりもするからね。それが何年も続いた。だってBRAHMANのファンからしたらいきなり全然違うバンドを始めて、しかも知らない外国人が歌ってるんだから仕方ないよね。それはメンバーも色んなところから言われただろうし。だから俺はBRAHMANのメンバーがいつOAUを辞めるって言わないか不安だった時期もあったよ。喧嘩もよくしたしね。でも何かが変わった瞬間があって。それは2009年の『New Acoustic Tale』のツアーでTOSHI-LOWと大喧嘩をしたんだけど、ちゃんと謝ったの。色んな喧嘩をしたけど謝ったのは初めてで。俺達はそこでより深い関係性になれたんだと思うし、ちゃんとバンドになった気がしたんだよね。それまではいつ終わってもおかしくないBRAHMANのサイドプロジェクトみたいに感じてたところも正直あったから。

 

Q.New Acoustic Campが始まったのもその頃ですよね。

MARTIN:ヨーロッパやアメリカみたいに大きく動いているフォークのシーンって日本になかったし、ケルトとか、ジプシーとか、カントリーが日本には根付いてないと思ったから、そのカルチャーを日本でも作りたくて。やっぱりOAUって最初は難しかったの。ロックイベントにダイヴィングしに来ているお客さんの中にSimon & Garfunkelみたいなバンドが出てくるのってどう考えてもおかしいでしょ(笑)。でもそういうシーンが出来るまで待っているんじゃなくて自分達で作らなきゃ駄目だと思ったんだよね。俺が子供の頃に住んでいたフロリダにはFlorida Folk Festivalっていうフェスがあるんだけど、キャンプサイトがあって、フードがあって、ワークショップがあって、キャンプしながら演奏するんだよ。その話をTOSHI-LOWにしてたんだけど、そんなイメージから、最初は500人くらいのお客さんが集まってNew Acoustic Campが始まったんだよね。3回目から会場を変えてどんどん人数も増えて、今じゃ「家族連れフェス」ってメディアが取り上げてくれたりして。今年はNew Acoustic Campも10周年だから盛り上がるんじゃないかな。最近だとBRAHMANを知らないOAUのファンも来てくれてると思うしね。

 

Q.ドラマ「きのう何食べた?」や映画「新聞記者」を通してOAUの曲がまた新しい層にも届いていますよね。

MARTIN:やりたかったことはポップスなんだよね。勿論ルーツにはフォークがあるんだけど、今回のアルバムはポップスとして音楽が好きな人に届くように作りたいってテーマもあって。OAUは色んな曲を試してきたけど今回のアルバムが出来るまではコンセプトをはっきり表現し切れていない部分があったと思っているんだよね。例えばアイリッシュの曲をやろうと思ったらすごくアイリッシュに寄っていたし、そういう極端な部分があったと思っていて。だけど最近は全部じゃなくてワンポイントで入れて、ポップスにどういう味付けをするかっていう曲作りに変わってきたんだよ。やりたかったことが15年かかって分かってきた感覚かな。

Q.「Akatsuki」とかかなり濃いケルトの味付けですけど、それをポップスとして打ち出せるのはOAUならではですよね。

MARTIN:あれはケルトのフュージョンバラードなんだけど、BRAHMANの武道館のライブのクロージングテーマとして最初は作ったんだよ。それをOAUでアレンジしたんだけど、風景が見える曲になったと思うね。

 

Q.今作はアルバムを通して自分の人生を色んな角度から感じることが出来ると思いました。

MARTIN:このアルバムは「A Better Life」から始まるんだけど、あの曲はアルバムのセッティングをしてくれるような曲で。そこから1曲ずつ人生を感じることが出来ると思う。

 

Q.生きる喜びや家族や仲間への感謝を感じるんですよね。暖かい気持ちになれるというか。

MARTIN:今回のアルバムのテーマがまさに「A Better Life」なんだけど、音楽を聴いて落ち込んだり、難しい気持ちになりたくないなって。今回のアルバムはまさに人生みたいに全部が繋がっているんだよ。今まで色んなアルバムを作ってきたけど、「俺達はこれだ」ってはっきり言えるアルバムがやっと出来たと思う。だからタイトルも『OAU』なんだよね。これまでアイリッシュからポップスからポエトリー、プログレまで色々やってきたけど、そうやって自分探しをしながら辿り着いたのが今回のアルバムだと思うよ。

 

Q.当時はBRAHMANと違うことをしないといけないという意識もあった?

MARTIN:あったね。BRAHMANじゃないものを探してたんじゃないかな。そうやってOAUっていうものを探していく中で2014年に『FOLLOW THE DREAM』を出したときに「Making Time」とか「朝焼けの歌」のようなシンプルなものがお客さんに届いたことを実感して。そこにどんな味付けをするかで面白い音楽が出来るんじゃないかって思ったんだよ。

 

Q.その集大成が今作『OAU』だと。

MARTIN:そうだと思う。まさに集大成だね。

 

 

Q.音楽的に積み重ねてきたものと同じくらいメンバーが家族として時間を積み重ねてきたことが「帰り道」のMVから感じることが出来ました。あのMV、本当に素晴らしいですよね。

MARTIN:ありがとう。MVって、ビルの屋上で風にあたって演奏したりするでしょ。俺達もそういうのはやってきたけど、オリジナリティがないし、メンバーの素顔が分からないと思って。今はSNSもあってより素顔が見えやすい時代だと思うから、見てもらいたいのはそういう部分だと思ったんだよね。それでみんなで友達のお店に集まって最後はテーブルに集まって「いただきます」っていう、それこそ「きのう何食べた?」のオープニングみたいなMVにしたかったの。

 

Q.あのMVに映ってるみなさんの姿はパブリックイメージとしてあったBRAHMANのイメージとは違ったOAUとして積み重ねてきた素顔だなって。勿論両方持っていた素顔なんだと思うのですが、やはりこの数年でそこを出せるようになったことがOAUに直結している気がするんです。

MARTIN:BRAHMANのライブを観てるとさ、TOSHI-LOWは人の上に乗ってるし、MAKOTOは「おりゃあ!」って感じだし、RONZIも激しく叩いてるでしょ。あの姿も彼らの本当の姿なんだよね。でも「帰り道」のMVに映っている姿も彼らの本当の姿なんだよね。

 

Q.えっと、KOHKIさんは(笑)。

MARTIN:KOHKIはどっちも同じかな(笑)。

 

Q.あははは。

MARTIN:TOSHI-LOWだってさ、家の中で暴れてるわけじゃないからね(笑)。「帰り道」のMVみたいに優しい顔でコーヒーを作ったり子供と遊んだりしてるから。そうやって家族や友達に見せる表情をOAUで見せてもいいんじゃないかなって。だから逆にOAUで俺達を知ってくれる人はBRAHMANを観るとびっくりすると思うよ(笑)。「あの優しそうな顔でコーヒーを煎れていた人が人をなぎ倒して歌っている!」って(笑)。

 

Q.「鬼弁」で知った人も驚きますよね(笑)。

MARTIN:あれもTOSHI-LOWだからね。鬼みたいな表情でライブをして朝まで飲んで寝ないで帰って、愛情たっぷりの子供の弁当を作る。仕事も家族も遊びも全力でやるかっこいいお父さんだから、TOSHI-LOWは。

 

Q.今作を聴くとそれがよく伝わります。聴いていると自分も家族になった気がするんですよね。近く感じるというか。

MARTIN:嬉しいね。それだったら狙い通りだよ。

 

Q.自分の家族の話になってしまうんですけど、数年前に母親が亡くなって父親は今ひとり暮らしをしているんです。そんな父に「帰り道」のCDをプレゼントしたんですけど、父親から「久し振りに母さんのおかえりって声が聞こえた気がしたよ」って言われて。

MARTIN:その話は涙が出るね。ありがとう。「帰り道」を作って良かったよ。

 

Q.そうやって色んな人に家族を感じさせてくれるのがOAUなんです。

MARTIN:俺も日本に来て家族が出来て、メンバーに出会って家族になったから。そうやってOAUっていう大家族をこれからも作っていきたいね。

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タイトル:OAU
初回限定盤【CD+DVD】3800円(税別)TFCC-86688
通常盤【CD】3000円(税別)TFCC-86689
アナログ盤【LP】3500円TFJC-38038
2019年9月4日発売

01. A Better Life
02. こころの花
03. Midnight Sun
04. 帰り道
05. Banana Split
06. All I Need
07. Again
08. Traveler 
09. Akatsuki(冬が始まる日の暁に降り立つ霧の中に現れた光の輪)
10. Where have you gone
11. Americana
12. ~tuning~
13. I Love You

 

 

OAU Tour 2019「A Better Life」
9/28 (土) 石垣島 流れ星の丘 くうら〈ぬあしび~CAMPING EARTH 2019~〉
10/4(金)岡山 ルネスホール
10/6 (日) 広島 Live Juke
10/11 (金) 仙台 darwin
10/12 (土) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
10/19 (土) 福島 猪苗代野外音楽堂〈猪苗代野外音楽堂 –音仕舞い–〉
10/25 (金) 大阪 Shangri-La
10/27 (日) 福岡 Gate’s7
11/2 (土) 松山 WstudioRED
11/9 (土) 新潟 ジョイアミーア
11/15 (金) 名古屋 CLUB QUATTRO
11/17 (日) 京都 磔磔
11/21 (木) 水戸 LIGHT HOUSE
11/29 (金) 高崎 club FLEEZ
12/5 (木) 東京 国際フォーラム ホールC

OAU Hall Tour 2020「A Better Life」
2/3(月) 大阪 サンケイホールブリーゼ
2/5(水) 福岡 イムズホール
2/7(金) 名古屋 芸術創造センター
2/10(月) 仙台 トークネットホール仙台(仙台市民会館小ホール)
2/12(水) 東京 LIVE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
2/15(土) 新潟 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
https://oau-tc.com/